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私のお勧め本=「幽霊人命救助隊」

カウンセラー仲間から 「課題図書だから読んで」といただいた本でした。
あっという間に読んでしまう内容です。

決してふざけた内容ではなさそうな表紙の絵。でも漫画みたいな題名。
どんな内容なのか?と思いましたが、 多くを想像をせずに 読むことにしました。

(あらすじ)・・読みたくない方は飛ばして(感想)に進んでください。

どうやら 自殺で亡くなった人が天国に行くためには 現世で自殺しようとする人を49日間で100人助けなければならない、というルールがあるようです。主人公はそれぞれの抱えた悩みで自殺した4人の男女。
彼らは、この指令を受け 現世に戻らされます。
指令をするのは パラグライダーで降りてきた神様。

4人は天国に行くために 仕方なく人助けを始めます。オレンジのレスキュー隊の服を 着させられ、使い方もわからないアイテムが色々入ったリュックを渡されます。
幽霊なので、当然彼らの姿は 現世の人には見えません。(1人だけ彼らの姿を見つけた女子高生がいました!)
現世の者や人には何も触れることができないし、話もできない。幽霊なのにドアの通り抜けすらできないのです。
どうしても家の中に入りたいときには、近所の子供に ピンポンダッシュさせて ドアを開けさせるのです。

どうやって自殺者を探すのか、どうやって自殺を食い止めるのか、リュックの中のアイテムから 少しづつ使い方を学んでいきます。 
また4人の連携プレーは見事なものです。

こうして話していると コメディにしか思えませんが、内容は深刻そのものです。
自殺した彼らが救う命の描写は切実極まりなく、レスキュー隊の彼ら自身、自分の自殺の原因と全く同じだったり、、、 それなのに自分は死んでいて、 今 目の前の人を助けようとしている。。。 

レスキューする度に「自分はなんで死んでしまったんだろう」と 知りたくない後悔を 感じてしまうのです。


「死んではダメだ!」
   「家族が悲しむぞ!」
      「他の方法もあるよ!」
         「あなたが死んでも誰も得をしない計算なんだ!」

      など 死ぬ前に 自分にも誰かが言ってくれたらよかったのに、、、と。



途中 レスキュー隊のうちの一人 19歳の浪人生の父親が自殺をしようとしていることを察知します。
自分を自殺に追い詰めた父親が自殺しようとする理由がわかりませんでした。 
そこで、浪人生の死者は父親の体に入り、父親の思いを感じ取ります。 

父がどれだけ自分を愛し、大切に思い、職場の荒波に耐えてきたかを知ることになります。
父親だけではありません。自分が死んで 母や妹が生きる気力を失っていました。

「自分は なんで死んでしまったんだろう・・・」  心からの後悔。 

良く聞く言葉だけれど、このストーリーの中で この言葉を目にし、ずし~んと 心に重くのしかかりました。

浪人生の死者は 父の自殺を必死で食い止めます。そして残した家族3人の幸せを心から祈って 天国に行くのです。
もう 行くところは 天国しかないんですね。。。。 

いくら悔やんでも もとに戻れない。家族の元には帰れないんです。。

4人は当初不可能だと思っていた49日間で100人救う使命を きっちり果たしました。
神様は 約束どおり 彼ら4人を天国に連れて行こうとします。

ところが、彼らは このまま4人で まだまだ助かる命を助け続けたい、と申し出ます。

でも ダメなのです。 
これは私の解釈ですが、自ら命を捨てた罰なんじゃないかな。 

どんなに後悔しても リセットできないんだよ、と。

その気持ちに気付かせるために レスキュー隊に任命したのではないか。

まだ天国に行けない場所にいるとき、彼らは世を儚み、自分の運命を呪って、投げやりな言動がありました。
でも人を助ける間に 自分に起こったこと、不運な運命だったかもしれないけれど、自殺以外の選択肢を選ばなかったこと、本当に信頼できる仲間を作らなかったことを悔やむようになります。
その後悔を持ったまま 天国に行くのです。。 

   そしてまた生まれ変わる・・・ 救われた気分になります。 


最後に養老孟司さんの解説が面白いです。この本の面白さ、奥深さを荒々しく表現してくれてます。

(感想)
内容はかなり重たいものですが、漫画を読んでいるみたいに すいすい進むコメディ要素が強いので、暗くならずに読むことができます。
人はいつか死にますが、自分から命を絶つ必要はないんだろうな。 でも死ぬほどつらい事情を抱えることは人生の中でありえることかもしれません。 

ですが、「死ぬほどつらい」と「死にました」は 天と地との差があります。

死ぬほどつらい を経験しても 死ななくてもいいのです。 死ぬ以外の方法を探すことを考えられるようになればいいのです。なぜなら、冷静に考えると 死んで得すること、解決することが 意外と少ないのです。
一時的な苦痛から逃れるために 結局は残った人が 更に困る、大事な人を失って絶望的な悲しみを生む、そして自分自身も後悔する羽目になる、 この本を読んで そう感じることができました。

この本の中には 様々な「死ぬほどつらい」事情が出てきます。 それに対応する「死なない方法」もたくさん出てきました。
事情も解決方法も 人の数だけ種類がある。 やはりちゃんと話を聴くこと、その人の思いを聴くことで グッドアイデアが浮かぶことは言うまでもないと思います。


私自身の経験の話。
以前 スキー場のホテルでアルバイトをしているとき、同室の女の子の前腕に自傷行為の跡が無数に残っていました。
そのころは私もまだ心理の勉強などしたこともないころです。
異変を感じたのは、彼女は喜怒哀楽が激しすぎ、お酒の席でありえないほど酔っぱらう、情緒不安定で、すぐに泣くところでした。
仲良し女子グループといても楽しめず、男子たちにちやほやされないと 物凄く機嫌が悪くなる、夜中に部屋を歩き回る・・
毎朝 彼女が無事かどうか不安で私が眠れなくなりました。 結局、アルバイトの数週間の間、男子たちに彼女に ちやほやしてもらうようお願いし、一人にしないように 心がけ、その場は事なきを終えました。。。

彼女が落ち着いたときに聞いた話ですが、自傷行為をするときには「痛み」を感じないそうです。
頭がボーっとしていて 目の前に刃物があれば つい腕にそれを当ててしまう。 赤い血を見て ハッと気づくそうです。
だから、彼女は自宅に包丁やハサミを置かないと言っていました。 スパっと切れるものがあると・・・気づいた時にはもう遅いから、、と。

こんな風に自分の意思とは別のものに突き動かされることもあるんだな、、、ということを初めて知りました。

今 心理を学んで思うことは、まさしく これが うつ病ではないかと。  冷静な判断ができる思考能力を うつ病が覆い被って 何事も不幸に感じるような精神状態にさせているのかもしれない。
だから赤い血を見たり、ハッと自分に戻り 「後悔する」 ・・ 

    あとの祭りです。。。


今思うに、カウンセラーとしては こんな風にクライエントの中に入れたら 一番手っ取り早いのに!!と思うところです(笑)

さすがに同じことはできませんが、救助対象者の中に入って、彼らの考えを聴く、今の辛さを聴く、そこからどうしていくことが 救いになるのかを分析していく救助隊の彼らは、まさにカウンセラーと同じだと思いました。




小学校くらいから強制的に読まされた「課題図書」は数々ありますが、 本当の意味での「課題図書」は これが初めてだと思います。


ふっと頭に浮かんだと思う考えにより 自分の気持ちを和らげてくれることってありませんか?
子供のころに私もやりました「ピンポンダッシュ」!(ごめんなさい!)  自分の意志でやってると思ってること、考えていることは 意外と彼らのようなレスキュー隊の仕業なのかもしれません。
そんな声も しっかり受け止めて 皆さんの心の声に寄り添いたいな、と思いました。 


この本 ぜひ映画化してほしいです。映画になってもっと大勢の人に見てもらいたい。

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