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世界のロケット打上げ回数 in 2023 : 宇宙業界のグローバル競争の今がみえる数字

この記事は…

◆筆者:宇宙輸送(ロケット)のスタートアップで働いている人
◆対象:宇宙産業のトレンドを知りたい方
◆内容:世界各国の2023年のロケットの軌道上打上げ回数まとめと個人的所感
◆狙い:各国の宇宙開発の現状や全体感をデータで再確認すること

※宇宙ビジネスに関するnote記事を毎月投稿する「#まいつき宇宙ビジネス」シリーズ:2024年1月分

はじめに

あけましておめでとうございます。
新年を迎えたら気になりますよね、前年の統計(私だけ?)。

そこで今回は世界各国のロケット打上げ回数、中でも宇宙領域での活動に不可欠な、衛星を軌道投入する「軌道上打上げ」に絞ってみていきます。

打上げ回数 in 2023

・データの出展はこちら・Gunter's Space Page という情報サイトです
・軌道投入の打上げに限った数字のため、観測ロケット等それ以外の打上げは含みません
・Rocekt Labはいまやアメリカ企業というのが相応しいためニュージーランドの射場からの打上げもアメリカのカウントに入れてます

失敗も含む 軌道上打上げの回数を円グラフと表データで示します。

Source : Gunter's Space Page

また、データだけですが、”成功した打上げに限った”場合の表データも載せておきます。

Source : Gunter's Space Page

所感

数字まとめるだけだと味気ないので簡単に個人的な所感を書いていきます。(なお、失敗も含む前者のデータで語っていきますのでご留意ください)

初めて全体で200回を超えた

世界全体で200回を超えたのは初めて。
前年2022年から20%増えているので、堅調に増えており、この勢いはしばらく続くのは間違いなさそうです。

アメリカ、いや SpaceX 強し

打上げ数の前年からの増加を後押ししたのが、アメリカ。
世界全体で +37回 でしたが、アメリカだけで +29回。

その要因は(宇宙業界を少しでも追っかけている方ならもうおわかりと思いますが)ご存じ業界のトップランナー・SpaceX。
彼らの主力ロケット Falcon9の打上げが 2022年 61回 → 2023年 96回 と 1.5倍(+35回)に!
しかも今年(2024年)はさらに増やして、144回にすると目標を表明しています。(まさに独壇場…)

インドの存在増し

インドが着実に打上げ回数を増やして、欧州を抜き世界で4番目の位置につけました。月面着陸も昨年成功させて世界で4番目に達成した国となりましたし、宇宙開発のトップ集団(アメリカ・中国・ロシア)に続く勢いが、さまざまな領域で感じられます。

日本・欧州の苦境

対照的なのが打上げ回数を減らした欧州、そして数こそ前年から増やしましたが低迷している日本。
いずれも、サイズの異なる2種類の基幹ロケットが打上げ失敗をするという苦境に立たされており、それが反映された数字です。

ですが、2024年は 欧州なら Ariane 6の初フライト、日本なら H-3 の試験2号機の打上げがアナウンスされており、ともに2024年が流れを好転させる年になることを願っています。

北朝鮮が登場

参照した情報サイトの統計としては初めて北朝鮮がカウントされていました。
北朝鮮の打上げ時には、政府関係者の発言やメディアの報道では「事実上の弾道ミサイル」と表現をされることもありますが、技術は客観的に見るべきと思いますので、外交的思惑やそれを報じるメディアの目線とは別にファクトを見ていけるように個人的には気をつけたいです。

民間ロケットは…

最後に国別とは少し異なる目線で。
純粋な民間企業による商業打上げをみると、多い順番に (SpaceX)Falcon 9:96回、(Rocket Lab)Electron:9回、(Galactic Energy)Ceres-1:7回、その他 アメリカと中国の宇宙スタートアップのロケットが続きます。

民間だけでみてもアメリカ・中国の2強が先頭を走っておりますが、2024年はドイツのIsar Aerspace等 他の地域のスタートアップも軌道上打上げに挑戦する年になると思われますので、打上げ手段の多様化に期待しましょう。

今年(2024年)は?

上記の所感でも書いたことの振り返りですが、2024年にロケット界隈で起きそうなこととしては以下のようなことが考えられます。

  • 数的には Space X のさらなる独走が進む?

  • 欧州と日本の次期基幹ロケットの確立に期待

  • アメリカ中国以外の地域でも民間(スタートアップ)による軌道上打上げが出てくる

まとめ

以上、データをまとめて個人的な感想をつらつらと述べさせていただきました。

過去は過去。そして今年の予想もその通りにいくだけでは面白くないので、自分の想像を超えるサプライズな年になって欲しいです。
ロケット会社の一員としては色々と思うところはありますが、一個人としては2024年が宇宙へのアクセスがまた拡大する年になってくれると期待して、本年も宇宙関連ニュースを楽しみたいです!
いい年になりますように🚀

以上

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