第1話「窪の底から」『星霜輪廻~ラストモーメント』第二章:月面編
≫一≪
延命主義を至上とし、世界平和の願いをも包摂して進行していった世界連合。人の希望は逆説的に澱みを帯び、いつしか絶望へと転じる。世界の数多の社会体制は、同様に人々の喝采を浴びてこの世に生じ、やがて社会の歪みを増大させながら無為に生命を貪りつつ新しい希望へ置換される。その営みは、さながら新陳代謝を繰り返す多細胞生物のようであり、その行きつく先は成長か、退化か。
奇しくも一世紀と半分の時を遡ると、そこには教壇で弁舌を振るうヘルマンの姿があった。彼は水上葉月とアレクサンド