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聴くが全て【傾聴】


ビジネスの世界でコミュニケーションスキルはとても重要です。
コミュニケーションと聞くと伝えることに焦点を当てがちですが、むしろ大切なのは聴く力です。そこで、ビジネスにおける傾聴力の重要性にスポットを当てて解説していきます。


1.傾聴とは?



「傾聴」という言葉を辞書で引くと、「耳を傾けて熱心に話を聞くこと」とあります。
もともとはカウンセリングにおける技法で、相手の気持ちに寄り添って、注意深く共感的に「聴く」ことを意味します。

臨床心理学における「傾聴」は英語で「active listening(アクティブリスニング)」と言います。
「active listening(アクティブリスニング)」は「積極的傾聴」とも言われ、相手の話にしっかりと耳を傾けることで真意を引き出して理解することを指す言葉です。

傾聴力には、「積極的傾聴」「受動的傾聴」があります。
ただ聞いているだけという「受動的傾聴」だけでは、「傾聴力が高い」とは言えないのです。

・だいたい聞き手なので傾聴力はあります。
・話すよりも聞く方が好き(得意)なので傾聴力はあります。

これらは、傾聴力を頻度や指向で捉えている人が意味を取り違えやすい例です。
「発信力が低い」=「傾聴力が高い」という訳ではないので気を付けましょう。

2.「きく」には3パターンある


「きく」という行為は3つのパターンに分けられ、漢字で書くと違いがよくわかります。 3つの漢字とは、「聞く」と「訊く」と「聴く」の3つです。

「聞く」

一般的に広い意味で使われる言葉ですが、辞書では「音や声を耳に受ける。感じ取る。」とあるように、正確には「聞こえる」という方が近いニュアンスです。つまり、特に意識せずに音や言葉が自然に耳に入ってくる状態で、英語では「hear」に該当します。

「訊く」

辞書では「たずねて答えを求める。問う。」とあります。持っている疑問を明確にするための行為で、相手の話をどんどん深掘りして、答えに迫るために質問することです。もっと極端な言葉を使うと「尋問」や「詰問」という言葉が当てはまるかもしれません。

「聴く」

辞書に「心を落ち着け、注意して耳に入れる」とある通り、意識して耳を傾けることを指し、これが「傾聴」に該当します。音楽鑑賞の他、スピーチや講義を聴くという場合にも用いられます。英語で言うと「listen」です。

3.漢字が表す「聴く」の意味



「傾聴する」という行為を理解するには、漢字を見ると一目瞭然です。「聴」という漢字には、「耳」「目」「心」という3つの文字が組み合わさっています。つまり、「耳だけでなく、目と心を併用してきく」ということを示す言葉と理解するとよいでしょう。 具体的には次のようなポイントが含まれます。

1.耳できく 相手の言葉に耳を傾けて最後までしっかりと聴く
2.目できく 表情やしぐさ、声のトーンなど話している相手の様子に注意を払う
3.心できく 相手の言葉を理解して受け止め、相手の真意や感情に寄り添って共感する



4.信頼関係の構築



傾聴力は、相手と信頼関係を構築するために必要な能力です。ビジネスの場では、意思疎通を図る、論理的かつ端的に伝える、説得や交渉、折衝を行うと言ったコミュニケーションスキルが要求されます。これらのコミュニケーションスキルの根幹となるのは、相手の人となりや考えを理解する傾聴力です。相手の考えや気持ちを的確に読み取れるからこそ、良好な人間関係を構築することが可能なのです。

5.営業力や交渉力の向上



傾聴力が優れていると、相手との会話の中から顧客ニーズを引き出すことができるようになります。相手の考えに寄り添い共感して意見を探ることで、何を求めているのかを理解できます。
その結果、的を射た提案ができるようになるため、売り上げや業績アップにつなげることができるでしょう。

6.コミュニケーションの失敗を避ける



近年は職場における人材の多様性が増しています。価値観やバックグラウンドが異なるメンバーと共にプロジェクトを推進していく中で、コミュニケーションの失敗による問題や障害の発生が散見されます。勘違いや誤解から指示が伝わらずやるべきタスクが上手く実行されなかったり、相手の感情や思考が理解できず不信感が募ってしまったりと、様々な問題が発生しています。
このようなコミュニケーションの失敗を回避するには傾聴力の向上が有効です。傾聴力を高めることで、誤解や勘違いを解消し、相手の考えや指示内容をより的確に理解できるようになります。

7.人事や管理職にこそ傾聴が必要



社員の話を聴く機会が多い人事や管理職にこそ、より傾聴力が重要であると言えます。
若手や中堅層は、自分の意見が上司や経営側に届いている、受け止められていると感じられた場合にモチベーションが高まる傾向があります。部下の話を傾聴することは、信頼関係の構築と人材育成に大きく役立ちます。部下は自分の話をきちんと聞いてくれると感じることができれば、上司に対して信頼を置くようになります。

また、昨今は人事や管理職の仕事において、メンバーの持つ能力や創造性を発揮させる施策がより重要視されるようになってきています。具体的には、「コーチング」や「エンパワーメント」、「パフォーマンスマネジメント」といったスキルや考え方が挙げられます。これらの共通点として、相手の感情や思考を的確に理解し受け止める「傾聴」を行うプロセスが必ず存在します。

傾聴は人事や管理職にとって重要なベーシックスキルとなりつつあるのです。

8.具体的にどういうこと?



傾聴力のある人の特徴を詳しくみていきます。
意外とすぐに取り入れられることばかりです。1つずつ取り入れて、傾聴力を向上させていきましょう。

話を聞いているとき相手の目を見ている

傾聴力向上において基本中の基本、相手をきちんと見る!
「目は口ほどに物を言う」ということわざもあるくらいです。

ついぼーっと聞いていたり、他のことを考えていたりすると、相手から視線が外れがちに。
携帯なんて見ながら聞いているなんてことは相手にとって不快です。
きちんと目を見ることで、真剣さが伝わります。

真剣に聞いてくれていると、話し手は「話をどんどん進めたい!」「もっと深く話したい!」という気持ちになります。
相手の話をさえぎらない。これも、傾聴力を高める上でかなり重要ポイントです。
話したいことがあると、ついつい「話したい」だけになってしまっていることも。途中で何か言いたくなっても、相手が話し終えるまでは我慢しましょう。
話の腰を折ってはいけません。

相槌を打つ

きちんと聞いていても、自分の中だけで相槌を打っていませんか?傾聴力とは、ただ聞くだけでありません。
うなづいたり声を出したりして、きちんと相手に伝えることが重要です。
言葉になっていなくても、「へぇ」「えっ」「ほう」など些細な反応があると全然違います。

ここで、相槌の打ち方をいくつか紹介します。

・「ええ」と落ち着いてうなずく
ゆっくりうなずくことで、落ち着いた雰囲気になります。
落ち着くことは満足感につながります。

・「はい、はいっ」と共感しているようにうなずく
笑顔で行うことで、気さくな雰囲気も保てます。

・「そうなんですね!」「なるほど。それでそれで?」
話に興味津々であることが伝えられ、相手が気持ちよく話を進められます。
また、否定的な相槌ではなく肯定的な相槌になるように心がけましょう。

笑顔

コミュニケーションをとる上で、笑顔はとても大切ですね。
無表情で感情がなかったり機嫌の悪そうな表情をしていると、相手は話しづらいもの。
笑顔でいることで、相手が話しやすい環境が生まれ、話が弾みます。また、笑っていると自分自身も楽しくなってきます。

「フリ」をしない

傾聴力のある人は、”話を聞いているフリは”絶対にしません。
「つまらないなー」と思いながら適当に聞き流していたり相槌を打っていたり。
この”フリ”は意外と相手にバレているものです。気をつけましょう。

相手に興味を持っている

興味を持つと、自然と生き生きして見えるものです。
きちんと話に寄り添うあなたを見て、相手は「真剣に話を聞いてくれている」と感じます。これが傾聴力です。
相手に興味を持つことから、お互いに楽しい会話が生まれます。

心に余裕を持っている

傾聴力とは、ただ話を聞くテクニックというより、自分自身のあり方がとても大切です。イライラしていたり感情が高ぶっていると、相手の話に集中できません。心に余裕を持っていると、落ち着いて聞くことができます。

相手の話を聞くときだけでなく、生きる上で大切なことですね。


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