花田ハナダ

コメントに返信できなくてすみません。 とても感謝しています 詩とか短い話などを書いてい…

花田ハナダ

コメントに返信できなくてすみません。 とても感謝しています 詩とか短い話などを書いています

最近の記事

詩を馬鹿にしないで

詩を馬鹿にしないで 胸につまった言葉を ノートに吐き出して 私は幾度も救われたから 詩はくどいとか言わないで 言葉で桜を愛でるくせに 愛を歌うくせに 恋を盲信するくせに 詩を蔑ろにするなんて

    • 3月の春

      ぼちぼち、日は暮れる 菜の花が黄色い ホトケノザが群れて咲いて 鮮やかなピンク色 夕焼け、風は冷たくなってきた それでも、ゆるゆる日は暮れる 自転車を漕ぐ私の影が 枯れ草の上に伸びる 誰かの庭で 白木蓮が咲いている ぼやぼやと 西の空がオレンジ 何だかゆったりとした心地 3月の春が好き

      • 笑いたいだけの体

        ああ疲れた すごく疲れた 疲れた日には 底抜けに くだらない話を聞きたい 心も カラダも 脳みそも もうクタクタなのよ だから 猛烈に笑いたい ただ、ただ 笑い飛ばしたい どうでもよくて 明るくて くだらない話で笑いたい 疲れた体が求めている ただ笑いたい 疲れを笑い飛ばしたい

        • 顕微鏡を覗いたら

          今私の細胞を 顕微鏡で覗いたら 『疲』の文字が見えるでしょう 肩にも足にも心にも 疲労がずっしり溜まっている 「それなら私は『眠』だと思う」 宿題片手に娘が言う それそれ、それよ と、私は笑う 毎日は続く 疲れていても 眠くても だから 今夜は温かくして ゆっくり休もう 「風呂は追い焚きしておくね」 すでにパジャマの夫が言う 次は私が入る番 私は熱めが好きだから いつも通りのおしゃべりに 疲れは少しずつ溶けていく 次に私の細胞を 顕微鏡で覗いたら 「疲」の中にき

        詩を馬鹿にしないで

          月とスタートライン

          毎日が 何だか上手くいかない 帰り道はいつも負け犬 全て投げ出して 諦めてしまおうか 腐りはじめた私に 北風が吹き付ける 横っ面に追い打ちだ 睨んだ東の空には 月が浮かんでいる 今日の残した青が沈む もう駄目だって 思った時 それは スタートのサインだと 始まりのサインだと 誰かが言っていた こんな時に思い出した言葉が 妙に涙を誘ってくる 西の空は 絢爛豪華な夕焼けだ 私は振り返らない 青い澱の溜まった東へと 一新に進む  私は負け犬 もう駄目だの先へ行こう

          月とスタートライン

          冬至の日の母(詩)

          自転車で風を切る 冬の空気で耳が痛い 今日は冬至だ 仕事が終わったら 柚子を買って帰ろう 黄色のまんまるを 湯船に浮かべたら 濃紺の冬の夜に 明るく灯るだろう 子どもたちが 健やかであるようにと 冬が穏やかに過ぎていくことを 今夜は祈ろうと思う

          冬至の日の母(詩)

          星が降ればいいのに(詩)

          星が降ればいいのに そして世界を救えばいいのに この一瞬だけ奇跡が起きて この一瞬だけ優しくなって この一瞬だけ 世界が救われればいいのに それで何かが変わればいいのに 優しい方に変わればいいのに 私もついでに救ってってよ ぽんと肩を叩くみたいにね

          星が降ればいいのに(詩)

          秋だなぁと思う幸せ(詩)

          勝手口から夜空を見上げる 青白い月がいる 綺麗だなと、思う 秋だなぁと、思う 明るいね、と夫が言う 明日は満月だよ、と娘が言う 視線の先に同じものがある幸せは 他愛のない日常に浮かんで 私を優しく照らしている

          秋だなぁと思う幸せ(詩)

          報告。11月のこと(詩)

          秋が終わりを迎える季節が あんなにも怖かったのに 今年は不思議と穏やかです だんだん日は短くなり 空はすぐに暮れていくことが 毎年心細かったのに 今年は不思議と 心が凪いでいます 庭のアスパラガスの葉が 黄色く枯れて その黄色に強く心惹かれて 残された芝の先が 赤く変わっていることに 胸が騒いで 振り返れば 草も木も冬を受け入れて 色とりどりに染まっているのだと ようやく気づいたわけです 冬目前のこの季節は 穏やかな陽射しの下で 穏やかだな気持ちでいたいです アスパラガ

          報告。11月のこと(詩)

          仕事帰り、曇り空(詩)

          仕事を終えて 見上げる夜空は  ぼやぼやと曇っていた この空に爪を立てて 引っ掻いたら どんな跡がつくのだろうか 爪痕の筋の隙間から 濃紺の夜空が覗いて 星が見えたりするのだろうか 疲れた体は しっとりと冷たい風の中に沈んでいく 早く帰ろう 子どもたちと夕飯を食べよう 今日上手くいかなかったことは 一度忘れてしまおう 地べたの私は足を速め 冬の初めの空気を切り裂いていく

          仕事帰り、曇り空(詩)

          シンドイ(詩)

          ちょっと黙っててほしいんだよね 用があるのはわかるけど でも、確実に急用じゃない 悪気はないってわかっているけど ちょっと待っててほしいんだよね ご飯食べてないのよ ご飯食べたくないのに 食べないといけないのよ とりあえず 今は何も言わないでほしいんだよね 今ね、 不健康なものしか 受けつけないところを 貧血で医者にヤバいって言われているから 無理して体に良い食材を押し込んでんのよ 朝昼夕の食事なんて取りたくないの 全部おやつでいいの 飲み物は 極濃いインスタントコー

          シンドイ(詩)

          仕返し(微ホラー掌編)

           アパートの階段を小走りで進むと、全身から汗が吹き出す。今夜も当然のように熱帯夜だろう。  ようやくたどり着いた305号室のドアの前に立ち、呼び鈴を押すと、私を呼びつけた友人が蒼白い顔で出てくる。 「ごめんね」  扉の向こうから冷房で冷やされた空気が流れ出て、息を整える汗まみれの体に涼しい。 「どうしたの?」  私はできれだけ冷静に訊ねた。時刻はもうすぐ22時を迎える。 ーーどうしても来てほしい  彼女から連絡を受けたのは仕事終わりのことだった。「どうしても」なん

          仕返し(微ホラー掌編)

          父のクッキー(短編)

           ズル休み二日目の夜。  父は仕事から帰るとクッキーを作り始めた。私と母はちょうど夕食を終え、片付け終えた食卓でのんびりくつろいでいるところだった。 「なにか始まったねぇ」  母は暢気にお茶を啜っている。 「お父さん、夕飯食べなくていいの?」 「今日はいい」  父は静かに答えた。 (2日も学校を休んだから怒っているのかもしれない)  そう頭に過ると、責められている気がして苛立ちとモヤモヤが胸にこみ上げる。私は黙ってその場から逃げ出すことにした。 ★  父が私

          父のクッキー(短編)

          朝焼けの空を見て考える(詩)

          五時半、東の空に朝焼けが滲んでいる オレンジ色の澱みたい  シャツをまくり上げ まだ星の残る空に腕を突っ込んで ゆっくり撹拌してみたい きっと青が優勢で オレンジ色はやがて消える 指の先 荒れた手の甲 柔らかな二の腕まで 朝焼けのオレンジに染まればいい そんな事を考える 私は朝が好きだから せっかくの朝だから ちょっと現実逃避している 吸い込んだ空気は冬の匂い ゴミ捨て場までのほんの数分のこと

          朝焼けの空を見て考える(詩)

          ハッピーバースデー(短編小説)

           歳の分だけロウソクを立て、ケーキと向かい合い、火を吹き消す瞬間を心待ちにいたのはいつまでだろう。  歳を重ねた結果なのか、年齢の数のロウソクを用意する気にもならないし、もっともその数のロウソクを立てることが滑稽になり、ケーキの顔を台無しにする行為になり、自然と卒業したことなわけで。 「お誕生日おめでとうございます」  私の歳の数だけのロウソクを握りしめた鈴木は満面の笑みだけれど、私はただ怪訝な表情を浮かべることしかできやしない。  仕事終わり、後輩鈴木の家に突然連れ

          ハッピーバースデー(短編小説)

          空を飛びたかった

          小さい頃 空が飛びたかった 空を見ては 飛ぶことを考えていた 本気で箒にまたがって 風を待った 小さい頃 空を飛びたかった 風になって 体ひとつでどこまでも 頭の中では自由に飛べた できる限りの空想をした 逃げ出したかった この世界から わけもわからず ただ 逃げ出したかった 小さい頃

          空を飛びたかった