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MR検査と閉所恐怖症

こんにちは。
診療放射線技師のだーはらです。

今回は閉所恐怖症のお話です。
MR検査において、避けては通れないのが閉所恐怖症です。
実は、MR検査を担当する診療放射線技師や臨床検査技師の中にも、閉所恐怖症はかなりいます。
MR検査を担当しているのに、自分は検査を受けることが出来ない技師もいます。
今回は、私が今までMR検査を担当してきた中で、閉所恐怖症の患者さんに対して診療放射線技師としてどのような工夫をしてきたか、また患者さんから要望を受けた方法をいくつか紹介していきたいと思います。
閉所恐怖症の方、恐怖症とまではいかないけど狭いところが苦手な方、初めて検査を受ける予定がある方など、参考にしていただけると幸いです。

検査担当者としての工夫

閉所恐怖症の人が感じる恐怖とは?

閉所恐怖症にも程度があり、装置を見ただけで無理と判断する人、中に入る途中で無理と感じる人、中に入って検査を始めてみてやっぱり無理という人など人それぞれとなっています。
一番の理由は狭さゆえの圧迫感です。近年の装置は内部が昔に比べて広くなったとはいえ、頭部検査ではヘッドコイルというさらに狭い部品に頭を入れるため、圧迫感が強くなります。
さらに、動かないように頭部を固定するため、固定されていることでさらに圧迫感が増します。
"動きに弱い検査" "検査中は動かないように"という説明を受け、"動いてはいけない"という思いが強くなると、さらに検査に対する恐怖を増幅してしまいます。
"狭さに対する恐怖" "動いてはいけないという不安"の2点が大きな問題となっています。

狭さに対する恐怖を緩和する工夫

患者さんが狭さを感じるのはどのタイミングでしょうか?
一番は装置に入るタインミングです。
MR検査では、撮影する部位が装置の中心になるように寝台を移動するため、装置に入る際に一番狭さを実感します。
そのため、中に入る前に目を閉じる事で、目の前にある壁による圧迫感を緩和し、狭さを緩和する事が出来ます。ハンカチや手拭い、アイマスクなどで目の周りを覆うのも効果的です。
また、骨盤から足側の検査に関しては、足元からMR装置に入るため、あまり圧迫感を感じずに検査を受けることが出来ます。
頭部や頚椎は無理ですが、足元から入れる部位であれば、進入方向を逆にするだけで圧迫感を緩和する事ができます。

動いてはいけないという不安を緩和する工夫

MR検査を受ける時、繰り返し"動かないように"と念を押されると思います。
では動かないために大切な事は何でしょうか?
答えは"脱力"です。
"動かないように"という指示は正しいのですが、患者さんは体を動かさないために身体を緊張させ、無駄な力が入ります。これでは、同じ姿勢を保つトレーニングの様に、いつか限界が来て動いてしまいます。
つまり"動いてはいけない"という思いが不安と緊張を生み、結果的に動いてしまうという悪循環になってしまいます。
"動かないように注意する"のではなく、"力を抜いて楽な姿勢をとる"が動かないための最適解といえます。
極端に言えば「力を抜いて楽にしててください。寝てしまっても構いませんが、寝返りは打たないでくださいね」くらいでも大丈夫なことが多いです。
また、検査の体位に痛みがあれば必ず体に力が入ります。
痛みが少なく、楽な体位を取れるように工夫するのが、検査担当者の努めであり、不安を和らげる一番の方法だと私は考えています。

まず5分間頑張ってみる

私が検査を担当していて、閉所恐怖症の患者さんに有効だったのは、『まず5分間頑張ってみましょう』という声かけです。
私の経験則ですが、恐怖感はMR装置に入るときから徐々に高まり、最初の検査音が鳴り始めたころにピークを迎え、だんだんと落ち着いてくると考えています。
閉所恐怖症を訴える患者さんのほとんどは、装置に入ってから最初の検査音が鳴り始める前・もしくは鳴り始めた直後に検査中断を訴えることが多いです。
そこで『まず5分間頑張ってみましょう』と声をかけて検査を開始し、5分経ったところでもう一度声掛けをして検査続行可能か確認する。そうすると最後まで検査可能なことが多いです。
もちろん、検査終了まで残り時間を定期的に伝えることも重要になります。
“この恐怖に後どれくらい耐えなければならないのか“という情報はとても重要で、最初に5分間を耐えることができればそれが成功体験となり、成功体験が自信と安心感を生み、最後まで検査を続けることができるのです。

強い味方“耳栓“

MR装置は、メーカーによってヘッドフォンがあって音楽が流せたり映像を視聴したりできるものがありますが、残念ながら全ての装置に搭載されているわけではありません。
閉所恐怖症の患者さんを検査するときに意外と役に立つのが“耳栓“です。
恐怖で目を閉じると、視覚以外の感覚が研ぎ澄まされるため、自然と聴覚が敏感になります。また、MR装置独特の大きな音も恐怖心を煽る場合があり、耳栓をすることで音を低減し、恐怖心を緩和してくれる場合が多いです。
耳栓をつけて検査するかは医療機関によって異なり、中には有料の医療機関もあるため、いつも使っている耳栓がある方は持参されることをお勧めします。
スマホとイヤホンを持ち込んで、好きな音楽を聴きながら検査を受けたいという要望がよくありますが、電子機器をMR検査室に持ち込むと故障や火傷などの事故につながるため、絶対に持ち込まないようにお願いします。

実際にあった患者さんからの要望

MR検査に従事するスタッフは、患者さんが検査を無事に終えるためにそれぞれ多くの工夫を行なっています。
患者さんの中にも、恐怖を乗り越えるために様々な工夫を考えて提案される方がいらっしゃいます。
その中から、いくつか紹介したいと思います。

目線の先に絵や写真を貼る

MR装置に入ると、ほとんどの検査ではそこから位置が動くことはありません。
そこで、自分の目線の先に、好きな風景や人物の写真・ポスターなどを貼って気を紛らわしたいという提案が何度かありました。
実際に検査の際にご持参いただいて、位置を調整して貼ったことがあります。
あまり面白いものを貼ると検査中に笑ってしまうので避けた方がいいかもしれませんが、気を紛らわすにはいい方法だと思います。

CDを持参してヘッドフォンから好きな音楽を流す

ヘッドフォンから音楽を流せるMR装置限定の話ではありますが、CDなどの音源から好きな音楽を流してもらいたいという要望がありました。
検査中にヘッドフォンから流れる音楽はクラシックやヒーリングミュージックが多く、こだわって揃えている医療機関は少ないと思います。
事前に医療機関に相談の上で、可能であればリラックス効果が高い方法だと思います。
ちなみにヘッドフォンから流れる音量はある程度調節できますので、音量に関する要望は検査の際に伝えていただければ大丈夫です。

ぬいぐるみを持参する

寝るときに相棒のぬいぐるみがいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ぬいぐるみを抱いていると、自然と落ち着くものです。
検査の内容にもよりますが、金属のついてないぬいぐるみであれば、持って入ることは可能な場合が多いです。検査前にご相談ください。

このほかにもいろんな要望を経験していますが、その中でも要望が比較的多いものを紹介しました。
MR検査を最後までやり遂げるために、“こうしたら検査を乗り越えられそう“という要望があれば、一度相談してみてください。
ちなみに、スマホを持ち込んで視聴しながらの検査は事故に繋がる為どの施設でもNGです。

最後に

今回は、閉所恐怖症の患者さんがMR検査を受けるときに、どのような工夫をして検査を乗り越えるかについて紹介しました。
“自分は狭いところは苦手だから…“という理由で検査を拒否される患者さんは少なくありません。
検査を担当する診療放射線技師や臨床検査技師は、それぞれの工夫で対応致しますので、ぜひ勇気を出して一度検査にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
検査を必要とする患者さんが安心して検査を受けられるよう、私も試行錯誤を繰り返しながら対応していきたいと考えています。

本日も最後まで読んで頂きありがとうございました。
質問などがあれば、お気軽にコメントしてください。

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