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あなた(椀)はどこにいるのだろう

鮮やかな赤絵が彩る美しい椀。魚に蟹に海老が泳いで、麒麟が側面にいる。何焼きなのかは、対した知識のない自分には分からない。明の椀なのだろうか、古伊万里の類なのだろうか。ともかく、これは、いつかどこかにあった美しい椀を絵に写したものだ。なんとなく惹かれて、薄い単行本くらいの値段で買ったものである。
しわしわである。紙がね。下絵なのか折り目もあるし。

椀図

作者は相変わらずわからない。落款はあるから、誰か絵師が描きつけたものだろう。わざわざ絵に写したのだから、相当な椀だったのだろう。かなりひびが入っているけれど、丁寧に直しているのが描かれている。

「鎹継ぎ(かすがいつぎ)」「鎹止め(かすがいどめ)」がしてある

「鎹止め」という技法。割れたりヒビが入ったりしている陶磁器の面と面とをぴったり突き合わせにして、両者の間にちょうどホチキスの針のような小さな金属の鎹を割れた線に直角に打って繋ぎ止めてあるのだ。重要文化財に指定されている龍泉窯青磁茶碗の銘「馬蝗袢」などがあり、室町将軍足利義政の時代に明で鎹止めされたものとか。
丁寧な直し、絵として描くのだからともかく貴重で大切だと思われていた椀なのだろう。持ち主は伝来品として由来も知っていたのだろう。それなら、今でもどこかに大切にされているかもしれない。博物館に収蔵されていたりするかもしれない。別に必死に探してはいないのだけれど、いつかこの写し絵の本物に出会えないかなと、ひそかな楽しみにしている。
もしこのお椀に心当たりのある方がいたら教えて。

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