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【短編小説】鉄塔の町:鼻血で平手打ち

 僕はその女性、彼女が口にくわえていたラッキーストライクがどこかへ飛んで行くのを見送りながら、『なぜこんな事をしたのだろう?』と他人事のように不思議に思った。僕は鼻血を垂らしながら彼女の頬を平手で張っていた。
 それでもその瞬間に分かったこと‥‥もしかしたら思い出したこと‥‥がある。これが僕の気質ということだ。


 『お久しぶり』と声をかけてきた彼女は、僕の記憶の手がかりになるのは間違いないだろうが、彼女のぐうパンと僕の平手打ちという出会い‥‥いや再会で、さてさてこれから僕はどうなるのだろう?と暢気に考えている自分が少し面白い。お気楽‥‥これも僕の気質?記憶のない自分のこの状況を楽しんでさえいるんじゃないか?


 彼女は再びベンチに座りスラッとした足を優雅に組んで、煙草に火を点けている。そして再びラッキーストライクの香り。その香りに誘われるように僕は彼女の前に歩み出て片膝をつく。
 さあ、彼女に何と言って声をかけようか‥‥。僕は彼女の目を見て
 「これから‥‥どうする?」
 このシチュエーションで、どんな脈絡でこんな言葉が出てきたのか、自分に驚く。
 彼女はくわえ煙草で膝に頬杖をついて
 「考えてるところ」
 「少し歩かないか、鉄塔まで」
 と僕は言った。
 


 

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