十五皐月

平穏な日々が好き。でもときどきビックリしたい。

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  • 【極超短編小説】鉄の塔の町

    鉄塔の立つ町。この町は『東』『西』『南』『北』の4つの町からできています。鉄塔は4つの町のちょうど真ん中に立っています。この町で暮らす人々のお話をまとめました。

  • 【短編連載】精と血

    不定期の更新となりますが、よろしければ寄ってってください。

  • 【短編小説】鉄塔の町:

    「鉄の塔の町」が舞台。記憶を失った青年を中心に物語が進んでいきます。

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改めてページのご紹介 2023.10.30

 改名って、なんか大袈裟ですけど  『さつきじゅうご』から『十五皐月』に改名しました。このほど。  「どうして改名?」ということですが、noteを始めるときに、やっつけで決めちゃったんですね。『さつきじゅうご』という名前は。  で、ちゃんと考えてみようと最近になって思い立ちまして、今回の改名に至ったわけです。  いろいろと考えました。ああでもない、こうでもないと。漢字、カタカナ、ひらがな、アルファベット、キリル文字(嘘)等々。  でもずっと使ってると愛着が湧いてまして。『さつ

    • 【極超短編小説】裏:輝きの中へ君は行く。そして僕は夢を見る③

       気がつくと、僕は彼女のすぐ目の前に立っていた。話しかけるでもなく、ただ彼女を見ていた。いや呆けたように、息を呑んで見惚れていた。  「もう、ここ飽きちゃった。わたし、もう行くわ」  「僕も一緒に行っていいかな?」  彼女が言い終わると同時に僕は即座に訪ねた。ただ彼女と一緒にいたかった。  「どうぞ、お好きに」  彼女は手に持ったグラスを近くのテーブルに置くと、出口に向かって身を翻す。ピンと伸びた背筋、体の動きに遅れてなびく青いドレス、ハイヒールの踵から真っすぐ伸びる緊張した

      • 【極超短編小説】裏:輝きの中へ君は行く。そして僕は夢を見る②

         藍色に近いてらてらした濃い青色のドレスは、背中と胸が大きく切れ込んで、行儀の良い上品なパーティードレスとは言えなかった。彼女はひときわ目を引いた。というより周りからは浮いていた。  どんな目的で誰が主催したのかさえ、そこに集まったほとんどの者たちが知らないような、そんなコンパで僕は彼女と出会った。洒落た店を貸し切った会場には人が溢れ、それなりに盛り上がっていたように思う。  その当時、僕は大学生でコンパや飲み会、イベントなんかにやたらと顔を出していた。もちろん声を掛けら

        • 【極超短編小説】裏:輝きの中へ君は行く。そして僕は夢を見る①

           深夜、彼女からの着信。  「今……鉄塔の下……これから北の峠に……」  彼女は風の中だった。好きでたまらなかったその声は、風切音とモザイクになっていて、今の僕には聞きづらい。  「それを言うために電話を?」  僕の言葉にはどんな感情が乗っていたのか?彼女は何を感じただろう?  「そうよね……そうだったわね……」  風の中に溶けてしまった彼女の思いは、僕には分からない。  「そうだよ、僕たちはもう別れたんだから」  そんなつもりはなかったけれど、諭すように事実を繰り繰り返して

        • 固定された記事

        改めてページのご紹介 2023.10.30

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        • 【極超短編小説】鉄の塔の町
          104本
        • 【短編連載】精と血
          5本
        • 【短編小説】鉄塔の町:
          24本

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          風邪 花粉症 同時に… で辛すぎ… 治ったら投稿します… 予定ですけど

          風邪 花粉症 同時に… で辛すぎ… 治ったら投稿します… 予定ですけど

          【極超短編小説】裏:バレリーナとライター

           ヘビースモーカーのオレは、ズボンの左ポケットにハイライトとオイルライターをいつも入れていた。しかし彼女の部屋に配達する日は、タバコは朝起きてから1本も吸わなかった。それに前日はニンニクの入ったものも食べなかった。他にも朝は必ずヒゲを念入りに剃ったし、爪もきちんと切って、爪の間に黒い汚れがないかも確かめた。配達のときに着ているユニフォームも前日に自分でアイロンをかけた。そして彼女の部屋に配達する日は、不思議と町の鉄塔がより高く見えた。 「いつもありがとうございます。すみませ

          【極超短編小説】裏:バレリーナとライター

          【極超短編小説】裏:序幕

          「『しばらくの間、お休みします』だって……」  ドア1枚を隔てて、外から若い女の寂しそうな声が聞こえた。どこかで聞いた声。  僕はその声を聞いて、ドアから離れて奥にいればよかったと思った。  昨夜、ベッドで毛布をかぶり、右半身を下にして横になり眠りについた。朝日から逃げる僕の前に、夜を纏った鉄塔が屹立する夢を見た。  夜中、少し汗ばんでぼんやりと目が覚めると、彼女が目の前に僕を見つめて横になっていた。彼女は僕の名前を呼び、涙を流した。その涙の意味は、あまりに多すぎて、僕はま

          【極超短編小説】裏:序幕

          【極超短編小説】裏:ガラスと短冊

           気づいてほしいと言っているようなキラキラした光。  見上げると、高層ビルのガラスに太陽の光が反射していた。その光は私の深いところにある、かさぶたに触れる感じがした。  「おっ、やっと来たな」  と言った声に、私は視線をビルのガラスから隣の夫へ向けた。その夫の表情と声には優しさと慈愛が満ちている。  私たちの娘が公園を横切ってこちらへ駆けてくる。春をまだ出し惜しみしたような日差しとは違って、娘はこぼれるように溢れでる若さにはまったく無頓着だ。私はその若さに純粋な羨ましさととも

          【極超短編小説】裏:ガラスと短冊

          【極超短編小説】裏:どこかの夜に

           「負けました。なんて絶対に言わない」  彼女は僕のベッドの中で言った。  僕はひんやりとした窓ガラスに頬を当てて、中空の夜空で明滅する鉄塔のオレンジ色のライトをぼんやり眺めていた。  そして押し殺したような彼女のすすり泣き。  僕はカーテンを引いてベッドに近づく。  「なーんてね」  と彼女は振り向いておどけるように言った。その口元はカーテンの隙間から射し込んだ夜の明かりに照らされていた。  「おやすみ」  と言って彼女は壁に向き直った。  僕が寝ているうちに、彼女は行っ

          【極超短編小説】裏:どこかの夜に

          【極超短編小説】裏:来世は

           岬の突端に立ち、彼方に望む夕日。  夕焼けは黄、オレンジ、ピンク、紫へと刻々と移ろい、その美しさに息を呑む。  子どもの頃、町の鉄塔を見上げていてふと思い立った。自転車で行けるところまで行ってみようと。そしてひたすらにペダルを漕いだ。気づけばこの岬にたどり着いていた。その時、初めて訪れたここで、あの夕日を見たのだ。  今、ここで眺める夕日は数十年前のあの時の夕日そのものだ。  学校を卒業して社会に出て、結婚し子どもを持った。機会があればこの岬を訪れて夕日を眺めた。1人の時

          【極超短編小説】裏:来世は

          今年も不肖十五皐月の拙文を読んで頂き、有難うございました。 来年からはもっと真面目にやらなきゃなあ〜、と少しだけ思ってます(笑)。 2024年、皆様に良い年でありますように。

          今年も不肖十五皐月の拙文を読んで頂き、有難うございました。 来年からはもっと真面目にやらなきゃなあ〜、と少しだけ思ってます(笑)。 2024年、皆様に良い年でありますように。

          【極超短編小説】裏:一つになる

            深夜、静寂。オレンジ色に点滅する鉄塔の明かり。僕と彼女は並んで歩く。  爪が触れる。僕の右手の爪。彼女の左手の爪と。   指が触れる。僕の右手の指。彼女の左手の指と。   甲が触れる。僕の右手の甲。彼女の左手の甲と。  僕の右手の、爪が触れ、指が触れ、甲が触れる。   彼女の左手の、爪に触れ、指に触れ、甲に触れる。  僕の右手の爪と彼女の左手の爪が触れ、次に僕の左手の指と彼女の右手の指が触れ、そして僕の左手の甲と彼女の左手の甲が触れる。  鉄塔の真下。夜空を見上げる

          【極超短編小説】裏:一つになる

          【極超短編小説】裏:変わらない

           いつからだろう?生きることに理由はない、生きているから何をするか、そう思ってきた。でも、過去に戻れるならばという夢想を隠している自分もいた。  その日、仕事が終わって会社を後にし、フラッと繁華街の方へ足を運んだ。週末だったし、妻と小学生の息子と娘は、妻の実家へ泊まりに行っていて、一人きりの家に帰るのも少し寂しい気がしたからだ。  仕事はまあまあ順調、家族もまあまあ円満。滅入ってしまうような深刻な悩みも今のところない。ぼんやりと歩きながら、今の自分の境遇を振り返る。そしてふ

          【極超短編小説】裏:変わらない

          もうちょっとで起きれそうです。

          もうちょっとで起きれそうです。

          またサボりグセが出ました。おやすみなさい。

          またサボりグセが出ました。おやすみなさい。

          【短編小説】鉄塔の町:霊がいっぱい

           栗原さんの後に続いてカフェに入った。入った瞬間、僕は目の前の光景に驚いて棒立ちになった。店の中は幽霊で溢れていた。  もちろん、そいつらが幽霊かあるいは他のものかは、今まで幽霊を見た記憶がないので分からないが、幽霊に違いないと思った。それ以外に何と言えるだろう。  半透明で人の形をした暗い影は、店にいる客の体やパーテーション、テーブルを気にする様子もなくすり抜けていく。  幽霊を見れば、普通は恐怖を感じると思う。しかし店内は立錐の余地のないほど幽霊だらけで、こんなに多くの幽

          【短編小説】鉄塔の町:霊がいっぱい