【極超短編小説】裏:輝きの中へ君は行く。そして僕は夢を見る③
気がつくと、僕は彼女のすぐ目の前に立っていた。話しかけるでもなく、ただ彼女を見ていた。いや呆けたように、息を呑んで見惚れていた。
「もう、ここ飽きちゃった。わたし、もう行くわ」
「僕も一緒に行っていいかな?」
彼女が言い終わると同時に僕は即座に訪ねた。ただ彼女と一緒にいたかった。
「どうぞ、お好きに」
彼女は手に持ったグラスを近くのテーブルに置くと、出口に向かって身を翻す。ピンと伸びた背筋、体の動きに遅れてなびく青いドレス、ハイヒールの踵から真っすぐ伸びる緊張したふくらはぎ。そして横顔から僕に向けられた視線は、ついて来いと言っていた。
今にして思うと、この時から僕たちの別れは決まっていたのかもしれない。
(つづく)
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