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化学肥料を撒くことで、土が硬くなってミミズが死んで土も死ぬだって?

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Hey! What's up people~!? 鎌田です。

個人的には自然栽培ってネーミングセンスないなって思います。これを「ほったらかし農法」だなんて勘違いして周囲に迷惑を掛ける存在もいて誤解される原因にもなっていると思います。

化成肥料や農薬を使う技術を慣行農法といいますが、その根底は空中窒素から窒素肥料を作る技術である「ハーバー・ボッシュ法」が支えているわけです。

この技術の誕生こそが今の社会を作り上げているので良くない部分ももちろんあるでしょうけど、感謝しなければならないと思いますね。日本では化学肥料は「悪」というレッテルが貼られて、化学肥料が敬遠されがちです。

この化学肥料もネーミングセンスないですよね。突っ込みどころしかない名称だと思いませんか。

そしてそこに痛快に突っ込みを入れたのが新聞小説の「複合汚染」だったように思います。

ビジネス本って批判的な視点で読み進めることもできたりしますけど、小説の持つ力って怖いですよね。朝日新聞の小説欄に、有吉佐和子さんが書かれた「複合汚染」が連載されだしたのは1974年でした。

その後この小説は、単行本や文庫本としても出版され、日本の社会と農業に大きな影響を与えました。この本には、農薬とともに化学肥料への批判が随所に出てきます。しかし、それらの化学肥料への批判は、そのほとんどが著者の思い込みであって科学的エビデンスに乏しいんですよ。

自然栽培している、あるいは推進している奴が有吉大先生に何を言うてるねん!って私が突っ込み受けそうですけど、批判的な考えの上に健全な議論や考察が深まりますし、文句を恐れず主張させていただきますと、たとえば「化学肥料を撒くことで、土がガチガチに硬くなってミミズが死んで土も死ぬ」とか言ってますけど、施設栽培とかで根菜してはる人は分かると思いますけど、ミミズがおったらモグラでますやん。

モグラの被害は畑にトンネルを作りよることで植物の根を傷めますし、根の下に空間を作って乾燥することで作物が枯れてしまいます。枯れたらそっから病気が広がったりとかね。

あとは河川の堤防とか水田の畦にトンネルを掘りよることによって堤防を決壊させたりと、まぁろくでもないわけですよ。他にもトンネルがネズミの通路となって畑地にまできよるから、獣害対策ができずに農作物への被害が発生することもあります。

ほかにも有吉先生は「化学肥料で育てた稲の種籾(たねもみ)は発芽が悪い」とか言うてはりますけど、日本で最大の山田錦出荷量を記録していた稲の専門家として言わせていただくと、んなわけあるかい!ってなもんで、そりゃ化成肥料のバランスが悪いんでしょうな。と言いたくなります。

しかし商業的に見ると苗半作とか言われる中で発芽揃える必要もあるから、これは仕方がないと思うんですよね。

ただ、化成肥料に頼らない方が根張りもいいですし、そもそも鉄コーティング栽培が一番いいと思います。一応の断りを入れておくとクボタの回し者ちゃいまっせ!

「複合汚染」は小説として素晴らしい本だと思う一方で、「化学肥料を使ったリンゴは堆肥で育てたリンゴより味が悪い」などの記述には絶句しかないですね。ストーリーとしてはその通りだと思うものの、なんで土に余計なもの与えることありきで味の良し悪しを決めるのかなと。

確かにキトサンとか与えるとホンマ、カニっぽい味になるんですよ笑
ただ、トマトに海産物の風味が欲しいんですかと。

ただし「化学肥料で育てた野菜が持っているビタミンは堆肥で育てた野菜の半分もない」などについては半分正解だと考えています。うちでは栄養比較分析とかもやってましたけど、確かに今の野菜の栄養含有量は昭和の野菜と比べるとめっちゃ少ないのは事実です。

でもこれは肥料のせいでもなんでもなくて、痩せた土地とか、栄養が偏った土地の野菜の話なんですよ。総合的な栄養含有量でいえば、化成肥料使うなら土壌分析してやって適切な施肥設計すれば栄養満点の野菜ができます。でもそうなると狙ってくる虫とか獣が増えるし対策も増えるっちゅうことになるわけですね。

ただ、これは編集者目線で考察すると有吉氏は、「複合汚染」の執筆のために300冊以上の本を読んで、数十人の専門家などと面談したと書籍のあとがきに書いておられます。

しかし、それらの取材の中で、出版に当たり都合の良かった部分だけをつまみ食いしているように見受けられちゃうんですよねぇ。

さらには窒素肥料について硝酸カリと結び付けて、その化学的危険性をこっそりと示唆していたりなど、化学肥料を危険視する方向に読者をミスリードしようという商業的な意図が感じられますね。

この辺りから、化学肥料を悪いものと決めつけて有機質肥料のみを尊重するようになる流れが産まれました。

最近になって、土壌肥料学の立場から、かつての「複合汚染」が主張する間違いに異論を唱える論文が多数出てきました。まだまだ思い込みとか誤解を解くには、長い時間と大変なエネルギーが必要なのかなと思います。

自然栽培の本質を語る上でまず化学肥料と有機質肥料について、それぞれの長所と短所も挙げておきたいと思います。化学肥料の長所は、少しの量で大きな増収効果が期待できることにあります。

そして有機質肥料の長所は、肥料としての効果以外に、土壌を物理的に軟らかくしたりとか緩衝機能、つまりバッファを設けてくれる作用があります。しかしながら、どちらの肥料も過剰に施用すれば、問題を引き起こすんですね。農学的には私がいつも言っている過剰の欠乏ってやつです。

化学肥料を施肥すると、土壌の酸性化とか環境汚染の問題が生じます。一方で有機質肥料のみで農産物の高い収量を得ようとすると、結構な量の施用が必要となってくるので、これまた環境汚染につながってしまうんですね。

このようなことから、現在では化学肥料と有機質肥料を適度に組み合わせて施用することが、作物生産にも環境保全にも効果的とされていますが、そもそも肥料を与える。

つまり有機的な栄養分を与える事で環境に影響を与えるんであれば肥料なしに育てることについての可能性を模索するべきやと思うんですよ。

To be continue…

それではまたお会いしましょう!

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