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自分の夢の理想像を発見し、愛さずにはいられない永遠の少女を見出す

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Hey! What's up people~!? 鎌田です。それでは編集者目線で気になった本をあなたにご紹介させていただきたいと思います。

今回はこちら、世界一つよい少女の物語「長くつ下のピッピ」です。自由ほんぽうに生きるピッピに、子どもは自分の夢の理想像を発見し、大人は愛さずにはいられない野育ちの永遠な少女を見出します。

ところで「大人になる」とは、どういうことなんでしょうか。どのタイミングで大人になるんでしょうか。子どもの多くはウソをつきます。

たとえば「今日はなわとびをやって、一人で何回も二重飛を飛んだよ」と、明らかなつくり話を嬉々として語る小学生の娘が可愛くてたまりません。

私もきっと、子どもの頃はつくり話をしまくっていたと思います。「ウソつきはドロボウのはじまりだよ!」という決まり文句があるのは、裏を返せば子どもがどれだけ「ウソ」「つくり話」を好むかということの証でしょう。

私の親は、ウソをついた私をあまり相手にすることはありませんでした。
ウソだろうが真実だろうか、結果がすべてだったので着実に努力するしかありませんでした。

だから、のべつまくなしにつくり話をしても、ピッピはそれを何とも思っていないところは衝撃でした。

9歳の「世界一つよい女の子」ピッピは、幼い頃母を失い、船長をしている父親は嵐で行方不明になったため、独りぼっちです。

彼女は学校にも行かず、誰に叱られることもなく、ごくのびのびと暮らしています。

一方、隣の家に住むトミーとアンニカは、典型的な「良い子」です。

2人はピッピがウソの話をしたことをすぐに見破り、最初はとがめます。ですが、ピッピが「ウソをついた」ことを素直に認め、自分にはそういう癖があるのだ、と表明すると、それ以降、彼女のつくり話を穏やかに受けとめます。

ウソの他にも、ピッピは、大人が「してはいけないよ」と言いそうなことを、かたっぱしからやらかします。床や壁に絵を描きますし、大人の話に割って入ってぶち壊しますし、遊びの勢いで服を汚し、愉快に皿を割り、勉強は一切好みません。

それをとがめる大人も出てきますが、ピッピは大人たちに対し、実に「大人の対応」をします。

「あなた方の話を聞いてはあげるけど、従いはしませんよ」という態度を冷静に、明確に示し続けるのです。

これは子どもたちのための読み物でありながら、アストリッド・リンドグレーンの持つ、子どもへの暴力反対、反戦の思い、様々な考えが反映されている作品だと思います。

誰よりも強く、そして大金持ちのピッピです。ピッピがもしも望みさへすれば、世界を手にする事ができるでしょう。

でもピッピはそうしませんし、むしろ子どもたちに気前よく親切なんですよ。

力を持ち富を持つものは、優しくなければならない。一見破天荒なピッピの物語ですが、シンプルながらとても大事なテーマが描かれていますね。

北欧の豊かな自然を感じ、思い浮かべながら読むのも楽しいと思います。

子どもの頃の私は、ピッピのやることをドキドキしながら追っていた記憶があります。

今でも、ピッピのお話を読むと、ハラハラします。

「そんなことをしたら、大人 に叱られるよ!」と緊張してしまうのです。なのに、ピッピの物語を繰り返し読んだのは、そこに密かな「許し」を得ていたからなのかもしれません。

児童文学には「大人が許さないことを許す」機能があります。

それがたとえ「ウソ」 のように、万人が悪と認定しそうなことであっても、ある角度から見つめれば別な意味を持ちはじめます。

実際、大人になると「大人が言っていたことは、全部が全部正しいわけではない」とわかります。

大人の方も半信半疑で、「これはだめ、あれはだめ」と言いまくっているわけです。リンドグレーンは、そのことをこっそり、子どもに「告げ口」してくれます。

大人の言うことを真に受けて、自分を責め、あるいは萎縮している子どもたちに「大人の言うことを、信じすぎてはいけないよ!」と、逃げ道を教えてくれているのです。

それは大人にとっても、心安らぐ真実な逃げ道です。9歳の女の子であるはずのピッピですが、大人になって読み返してみると、彼女がとてつもなく「大人」であることに改めて気づかされます。

「大人になるとはどういうことか?」という命題には、様々な答えが考えられますが、ピッピの生き方はその1つの強力な解答です。

「人からどう見られるか」を超えて、自由に自分と他人を喜ばせる生き方。
リンドグレーンは「世界一つよい女の子」を通して、「本物の大人」の姿を見せてくれたのだと思います。

それではまたお会いしましょう!

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