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派遣社員ですが、どないしよ、やっちまった・・・

63歳で定年退職をした会社に入社する前の15年間、私は派遣社員として働いていた。それまで7年間働いていた大企業からの転職だった。ということで前回は、少々(とても?)自慢系のエピソードを投稿した。

ところが、今、目の前にいるある方から、「鼻につくなぁ、この手の話!」というご意見をいただいたので、急遽、「やっちまった編」を投稿することにした。


■ぶつかってもうた・・・

製造から建設まで手掛ける大手総合企業に派遣されているときの話である。

電気設計を担当していた新空港内の貨物ターミナルの設備も完成し、試運転の段階になったある日、派遣先本社から電気系の部長が現場の慰労を兼ねて見学に訪れた。

私は担当設備である大型貨物の自動搬送設備の試運転の最中だった。ちょうど部長がこられたので、私は自信満々に
「ほぼ完成です。あとは微調整レベルですよ。ハハハハ」
と余裕の高笑いをした。

設備はちょうど、積み付けエリアで大型貨物の模擬部材を積み込んで、計量エリアまで搬送を開始したところだった。

本来であれば、計量エリアの手前1mほどで減速して定位置に停止するはずなのだが、停まりそうにない。私の顔は、高笑いが貼り付いたままの、恐怖の表情に変わっていた。

直後に、「ガッシャーン!!」という音と共に設備の非常警報音が鳴り響いた。呆気に取られたままの私の目は点となり、
「ぶつかってもうた・・・」
と、うわごとようにつぶいていた。

幸い、衝突直前に非常停止装置が働き、ぶつかりはしたものの設備に大きな損傷はなかったが、その夜の慰労会での酒の不味かったことは言うまでもない。

■自動運転でけへんやんけ!!

同じく大手総合企業で手がけたプロジェクトに、製鉄所のコイル搬送台車の建設工事があった。

当初、私はこのプロジェクトの担当ではなかったのだが、一部の搬送エリアの制御が納期に間に合わないということで、急遽対応の依頼があった。数日でプログラムを作成して、現地に入らないと試運転に間に合わない。その会社で初めて徹夜をして、なんとかプログラムを形にして現地に入れた。

そして、プログラムを手直し、手直しして、なんとか手動での試運転を終えることができた。

しかしほっとしたのも束の間、持病の十二指腸潰瘍が再発してしまった。下血して、病院で内視鏡検査をうけると胃の中は血まみれだった。これ以上の現地での業務はできないということで、一度帰宅して、全快してから再度現地入りすることになった。

その間は、急遽他の派遣会社から要員が補充された。「すでに手動運転は完成しているので、あとはそれぞれの手動ブロックを順番通りにするだけで自動運転はできるはずです。」と言い残して、私は現場を離れたのだった。

その後、現場に復帰してから聞いた話では、自動運転はそう簡単ではなかったそうだ。そもそもの自動運転指令の受信プロトコルに誤りがあり、運転指令の受信部分から始まり、運転仕様に至るまで大幅な改造が必要だったと、後任の担当者からは散々愚痴られた。

彼は、散々文句を言った後に、
「自動運転でけへんやんけ!!」
(関西弁だったか否かは不確かだが)
と言い残して、現場を離れたのだった。

■容量足らんかもしれへん!

こちらは、老舗計測器メーカでの話である。

すでに納品している設備の仕様を変更することになり、その打ち合わせのために、関東まで出張することになった。同行したのは、計測器メーカの担当主任と私、そして営業担当、さらにシステムを担当するソフトウェア会社の社員二人だったと記憶している。

早朝の新幹線で移動し、終日打ち合わせを行い、終電に近い在来線に間に合うように帰ってくるというハードスケジュールだった。

打ち合わせで私は設備の仕様変更にともなうソフトウェア仕様書の変更点を意気揚々と説明し、お客さまにも十分に満足していただいた。帰りの新幹線で飲んだビールの味はこの上なく美味しかった。

そして、全員が疲れた表情で在来線に乗ってそれぞれの駅に向かっていた最中に、私はとんでもないことに気づいてしまったのだ。

「容量が足らんかもしれへん!」

現在使っている制御装置のメモリー容量はギリギリで、検討した追加仕様変更はできないかもしれないのである。

私の言葉にそこにいた全員が、「えっ?!」と私の顔を見た。そして、「何を今更ゆうとんねん!!」という表情が私の前に並んだ。

結局、メモリーは増設することができてことなきを得たのだが、電車の中での関係者のあの顔は今でも忘れられない。

■何を勝手なことしてんねん!!

大手製造企業での生産ラインの効率化プロジェクトを開始するにあたり、まずは機械に装填されている現状のプログラムをダウンロードする必要があった。プログラムのダウンロードだけなら、機械を止める必要はないので、機械の運転の有無に関係なく順番に回って作業を進めていた。

ある機械での作業を行うために、制御盤の扉を開けたその瞬間、

「何を勝手なことしてんねん!!」

というオペレータの声が工場に響き渡った。そして、私が開けた制御盤が制御していた、彼が運転する機械は動力を失い力無く惰性で回転していたのだ。

そうなのである。この機械の制御盤は、誤って第三者が解放することを防止するために解放すると電源が切れてしまう仕組みになっていたのだ。

機械を加工途中で停止すると、製品の表面に傷がはいってしまう。そして最悪の場合は、スクラップになってしまうのである。

私は慌てて、制御盤の扉を閉めて、「すいません、すいません」と謝りながら、逃げるようにその場を離れたので、今回の製品がどうなったかは知らない。ちなみに、その製品の価格は数百万円ほどだったと思う。

■ということで

以上、「やっちまった編」でした。
前回は偉そうなことを書いたものの、こんな失敗もたくさんあっての、成功話だったことを書き添えておきます。悪しからず。(笑)

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