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最強の日

高校入学して、すぐに仲良くなった友達がいる。ノブというやつ。
単に席が近かったから話すようになったのが、きっかけだが、陽気で、ちょい不良の部分を持ち、裏表がなさそうで、友達になりたいタイプだと思い、ノブの懐にささっと入り、すぐに打ち解け仲良くなった。
不良のどういう悪さをしていたかは、時効だと思うけど、ここはミッフィーちゃんにしておこう。一つだけ、そんなに悪いことじゃないかも知れんけど、イオンとか、イトーヨーカドーとか、屋上に大きな看板があるような所で、ノブが「看板のテッペンまで登ろうぜ」と言い出し、登らされた。
自分は2mくらいで骨組みに頭を強打(血が出たかと思った!)し、断念したが、ノブは10mくらいの頂上まで登っていた。そういう悪ふざけもあった。
 
高校一年時は、部活に入らず、毎日のようにノブと帰り、ペチャクチャダラダラと話していた。
 そんなある日、富山の婦中町にファボーレという大きな商業施設が出来た。そのうち行きたいなぁと思いつつ、中間か期末テストの後、午後授業がないので、ノブに今からチャリで行かんけ?と持ちかけると二つ返事で行くことに。
今、高校からファボーレの距離を調べてみると26kmある。なかなかの距離や。
 
当時、俺はまだ携帯を持っていなかったので、ゴールまでは何となくの感覚で向かった。途中で何か看板あるだろうと楽観しながら。
夕方、なんとか到着し、軽く食事をして帰ることに。

日も落ち、真っ暗の中、だやい(富山弁、ダルいの意味)と言い合いながらチャリで帰った。
その帰りの間も学校のこととか恋バナとかくだらないことを喋っていて、途中、トンネルにさしかかった所でノブが、叫ぼうぜと言い、オリャー!とかシャー!とか意味不明なことを二人して叫びながら立ち漕ぎして走った。

その時、心の底から楽しくて、何にでもなれる!今の俺って最強だな、って感じたことを覚えている。皆もそんな最強の時間、瞬間、があるのではないだろうか。
 
あれから何年も経ち、中年の年になってくと、日々、凹むことばかりで、自分なんかと卑下することが多くなった。そんなときにふと、このプチチャリ旅が我を鼓舞してくれる。
あの自転車での帰り道の最強の自分にまた出逢うために、色褪せない思い出を反芻していた。

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