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気になるあの人に脳内テロされる

あの人


すらっと細身の男性と階段ですれ違う
シンプルな服装にシワ一つないシャツを身に纏ったあの人

これが初めて彼を認識した瞬間だった


建築オタクな彼
建築のこととなればなんでも話し出す
優秀な成績を収めている反面、
Youtubeやアイドルが好きな意外性を持ち合わせている


私はそんなに建築の知識や語れるものは持っていない
「建築が好き」ただそれだけだった
だから話しかけるのには、少し気が引けた


気になるあの人と喋ってみたい

そう思い続けてどのぐらい経ったのだろうか


土曜日


週末にバイトが入っている人が多いため、休日に研究室にいる人はいない
私は、朝から一人作業を淡々とこなしていた

キィ、パタン

扉が閉まる音が聞こえた
「誰かきた。先輩かな?」などと考えていると


気になるあの人だった


最初は気にせず作業をしていたが、

待って
研究室に二人だけ?もしかして話しかけるチャンス?

私の緊急の脳内会議が始まる

「何をきっかけに話す?」
「話題は?」
「そもそも今日本当に話しかけるの?」
「急に話しかけると警戒される?」

うーん

「割り箸をもらうことを口実に話しかけるのは?」
控えめに脳内の戦略家が呟いた

「それだ!」

名案を思いつき、行動に移すことにした

実行

時刻はランチタイムの12:00

作業もひと段落し、落ち着いた頃

ここからが勝負
彼はコピー機の方に向かった

彼が印刷をしている際に、作戦を確認した

①デスクを片付けた時に引き出しの確認を行う
 割り箸がないという様子を表す
②冷蔵庫に自分のご飯を取りに行く
③そのまま彼のところまで行ってお箸をもらう
④そのまま彼の作品について話しかける
⑤後は成り行きで話す
任務完了


彼が印刷された紙を取ろうと動き出したとき
私の作戦は動き出した

終わったタスクの付箋をゴミ箱に入れ、
ペンやパソコンを所定の位置に整える

ついでにという感じで引き出しを覗き、
何かを探している動作をする

冷蔵庫から自分のご飯を取り出すところまで成功した

準備は整った
話しかけようと思った矢先、

キィ、パタン
彼は研究室から出て行ってしまった
どうやら印刷物を持ってどこかに向かったらしい

よし、戻ってきた時に話しかけよう!
と一度、席に戻ることにした


20分後、、、

全然戻ってこないじゃん!!!

結局そのまま彼は戻ってくることはなく、
私のお腹も限界を迎え

泣く泣く私は自分のデスクの引き出しから割り箸を取り出した

次のチャンスまで

昼食を食べ終えた私は、すぐに作業に戻ることに
私が「疲れた〜」と伸びをした時には、窓から見える景色はかなり暗くなっていた

その日、彼は戻ってくることはなく終えた

私はいつになったら彼に話しかけることができるのだろうか

もしかして、私が話しかけにくそうな雰囲気しているのかな
愛嬌はそれなりに習得してきたと思ったが、まだまだのようだ

彼が現れるだびに
私は短時間だけ脳内をテロされるのだろう


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