箕曲在弘(MINOO Arihiro)

専門は人類学。NPO法人APLA理事。『東南アジアで学ぶ文化人類学』(共編著)『新大久…

箕曲在弘(MINOO Arihiro)

専門は人類学。NPO法人APLA理事。『東南アジアで学ぶ文化人類学』(共編著)『新大久保に生きる人びとの生活史』(編著)『人類学者たちのフィールド教育』(共編著)『フェアトレードの人類学』(単著)。自戒を込めて; わたしのものさしで問うのではなく、わたしのものさしを問うのです。

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理想の文化人類学の概説書とは何だろうか?(後半)——「ディスカッション授業実践ガイドブック」の配布について

私にとっての理想の概説書(入門書・教科書)であることの条件の2点目は、「使える」かどうかである。多くの文化人類学の教科書は、それ自体、読み物としての魅力がある。しかし、それらを授業で使用するとき、どこか物足りなさを感じてしまう。そもそも「読んで、理解して、終わり」ということであれば授業はいらない。しかし、じっさい教科書は授業で使用することが前提となるため、授業のなかでどう使うのかを念頭において教科書を作成しなければならない。 このとき重要になるのが、よく各章の最後に「おまけ

    • 理想の文化人類学の概説書とは何だろうか?(前半)

      文化人類学の概説書は、近年数多く出版されている。今回『東南アジアで学ぶ文化人類学』(以下、本書)を作成することになり、これらの概説書(入門書・教科書)を読み比べ、理想の概説書とはどういうものかを考えてきた。 私にとってその答えは、2点に集約できる。 1点目は、自分にとって身近ではない文化圏に生きる人びとの生活について知ることを通して、自分が抱いていた常識を覆す視点を身につけられる教科書である。 以前、私は人類学におけるフィールドとは、人類学者の佐藤知久の言葉を引き「〈な

      • 東南アジアの多様性から私たちは何を学べるのか?

        まずは本書『東南アジアで学ぶ文化人類学』の序章の扉に掲載した上のイラストを見てほしい。これは東南アジアのさまざまな地域の文字で「こんにちは」という挨拶に相当する語を並べている。 このイラストに記されているのは必ずしも国家をもつ集団の言語ばかりではない。ビルマ語やタイ語、ラオ語(ラオス)、クメール語(カンボジア)、インドネシア語、タガログ語(フィリピン)、テトゥン語(東ティモール)といった国家のなかで公用語とされている言葉ばかりでなく、シャン語やカレン語、ウォリオ語、バリ語と

      理想の文化人類学の概説書とは何だろうか?(後半)——「ディスカッション授業実践ガイドブック」の配布について