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ゴリゴリの国際科高校生 777字 シロクマ文芸部

布団から出ると、制服に着替える。台所でごはんとお味噌汁を食べる。
公園の入り口ですずと待ち合わせる。
「おはよ。今日、古文の小テストって知ってた、莉津りつ?」
「Oops! 完全アウトだ、これ」と私はfeeling downになる。
「いとをかし、しか知らんつーの」
ホントホント、とあいづちを打ちながら彼女と並んで歩く。

チリンチリンと音がしたかと思うと、びゅんと自転車が真横を通り越していった。
「Watch out! あっぶな。だれあいつ」
私はくすくす笑う。
「なに?」
「こうして通学するの夢だったなあって」
川沿いの道は風が強いけれど、空気が澄んでいて空が広い。

***

教室には机と椅子がきっちりと並び、廊下にはチリひとつない。
我が意を得たり、とばかりに鈴は目をきらりとさせた。
「頭のカタそうな教師に?」
「窓際の席から校庭ながめて?」
「体育館で部活やってっし、まじウケるんですけどー」
「スラダンだあ」

「桜の季節が楽しみすぎて、ハゲそう」と、アニメの定番シーンを語る鈴。
彼女によると、新学期にひょんなことが起きる確率100%なんだそうだ。

「屋上でおべんとも、エモイよねえ」と鈴。
私はスマホのフォルダを彼女に見せる。
「弁当と料理の写真しかないんだが?」
「おかーさん、大喜び。おかげで毎日ごちそうですよ」
私たちは声をそろえて笑う。

鈴には、とっておきの小噺こばなしがあるという。
「昨日の放課後、体育館裏に呼び出されてさ。知らん男子に」
「え?まさかの?」
「まさかの財布渡された。My落とし物」
私と鈴は、感動に打ち震える。
「Japanですな…」

***

実家に帰るのかと、春休みの予定を聞いた。
「Miamiは暑いから飽きた。こっちでこたつとみかんを堪能するわ」
「大正解」
私は太鼓判を押した。

Liz&Susanは、半年前に初来日したばかりの語学堪能な留学生である。

(おわり)


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