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コミュニティづくりは「何のための場所か?」を考え抜くことがカギ #5 勝てるデザイン

元・任天堂のデザイナーで、現在はオンラインコミュニティ「前田デザイン室」代表として活躍中の前田高志さん。そんな前田さんの著書『勝てるデザイン』は、「Illustrator時短術」「おすすめフォント3選」などデザイナー必見のテクニックはもちろん、「ダサいデザインはなぜ生まれるのか」「プレゼンはラブレター」など、デザインを武器にしたいビジネスパーソンにも役立つ内容。そうそうたる著名人からも称賛の声が届いた本書より、一部を抜粋してご紹介します。

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「前田デザイン室」の考え方

孤独だった僕も、今では350人を超えるコミュニティを作ることができました。しかしコミュニティ作りも言ってしまえばデザインですから、当然僕はいつもの通り、「何のための場所か?」を考え抜きました。

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一番大きな幹に据えたのが「仕事とは違う、真逆のデザインをする場所」でした。下記はそれを補足する「前田デザイン室」の考え方です。

(1) クリエイターストレスを発散する場所

仕事には、クライアントから依頼を受け、それを汲み取った上で提案していいものを作る、ミッションをクリアするような楽しさがあります。ただ、ものづくりの楽しさはもっと他にもあるはずです。

僕は任天堂に勤めていた時、仕事以外にやりたいアイデアをしょっちゅう思いついていました。でも、休みの日に作ってみようと思っても、疲れなどを理由に、やらない。その積み重ねが小さなストレスで、僕はこれを「クリエイターストレス」と呼んでいました

このクリエイターストレスが発散できている! と心から感じたのがオンラインコミュニティ箕輪編集室に入った時です。怠け者の僕が、本業の仕事をやりつつ、生き生きとデザインすることができました。

クリエイティブチームでコミュニケーションを重ねながらのものづくりが、こんなに楽しいとは。だから、自分が作るコミュニティは、箕輪編集室のように仕事ではないものを作る場所と決めたのです。

(2) 作るものは仕事と「一切」関係ない場所

ただ箕輪編集室を真似たところで、箕輪さんと僕では影響力に雲泥の差がありますから、もっと踏み込んで考えました。そこで、僕のコミュニティ「前田デザイン室」は、作るものは「一切」仕事には関係ないものにすると決めました。

僕の会社から依頼するデザインもありません。これがとても良かった点で、ここを徹底したからこそ、前田デザイン室ではオリジナリティが飛び抜けて高いものができてくるのだと思っています。

本書でも何度かお話しした雑誌『マエボン』はその典型です。こんなふざけた雑誌は、普通の出版社では、まず企画段階で通らないでしょう。でも前田デザイン室は仕事とは関係のないクリエイティブな場所だからこそ、商業主義とは離れたことを実現できるのです。

やりたいことを好きなだけやる

(3) 純粋にものづくりを楽しむ場所

僕がやりたかったのは、何も考えずに真っ白な紙にただ色を塗っただけでも楽しかった幼い頃のような、純粋なものづくりの楽しさを求める場所作りでした。クリエイティブとは、本来ただただ純粋に作りたいものを作ることだと。それを感じられる場所にしたかったのです。

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(4) 報酬は発生しない場所

報酬の面も徹底しました。「前田デザイン室」では、本人のスタンス次第で、やろうと思えば仕事と同様、いやそれ以上にものづくりをする機会が得られます。だから人によっては仕事と同じくらいの労力を投じてくれるでしょう。

でもこれは仕事ではないから、報酬は発生させません。やりたい人が、やりたいことを、やりたい分だけやる。だから楽しいのです。自分ごとにしやすいし、好きな人が好きでやっている分、熱量が集まります。出来上がるプロダクトを見ればそれは一目瞭然。手を抜いているところなんて一切ありません。

それに何より、報酬が発生してしまえば、僕はクオリティを求めてしまうでしょう。そうなると、心の拠り所になりません。よくコミュニティは、家庭と会社以外の第三の居場所、サードプレイスと言われますが、それが崩れてしまいます。

ただ、精力的に活動している人にはNASUの仕事を紹介することも多いし、何よりコミュニティでの活動ぶりがきっかけで企業から仕事が来たり、僕の会社に入った方も3人もいます。

(5) 売り上げや利益が必ず見える場所

報酬設計の工夫はもう一つあります。それは明瞭会計にすることです。メンバーに報酬は支払わずとも、僕たちは本を作ったり、パンツを作ったりして制作物を市場に流通させているから、売り上げが発生します。

ただこれも先に述べた理由で金銭的な還元をするとサードプレイスとして機能しなくなるため、活動を通して得た利益は前田デザイン室が次にものづくりするための活動資金、それから目標として掲げているミラノサローネへの出展費用にさせてもらっています。

そして、売り上げた金額は、いつどのプロジェクトでどれくらいの売り上げがあったのか、経費はいくらかかったのかをメンバーなら誰でも見ることができる場所に公開しています。必ず公平に見えるところで行うことを徹底しているのです。

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勝てるデザイン

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