見出し画像

2030年までに、グローバル人材になっておいた方が良い理由

日本の大手企業の中核人材の多くは、業界を問わず、日本社会においては有能であるが、グローバル社会においては大幅にパフォーマンが低くなる課題を抱えている。

もう少しわかりやすく言うと、日本人ビジネスパーソンで、多国籍チームの一員として高いパフォーマンスを発揮できる人は稀である。

例えば、丸の内や品川に勤める日本人ビジネスパーソンに、シンガポールやロンドンでの多国籍チームの一員となって活躍できますか?と、問うたら、私の予想では90%以上の人がNoと答えるはずだ。

デジタル化の進展が個のグローバル化を促進する


「どうせそんな状況にならないから関係ないよね」とほとんどの人は楽天的に考えてリスキリング(次世代の働き方に向けて新しいスキルを身につける)をしないで生きている。
業界・業種や会社によって異なるが、2030年くらいまでは本当に「そんな状況が身近な出来事にはならない」かもしれない。

しかし、最近デジタル化、特にICT技術が発達し、ZoomやTeamsを使って、コミュニケーションがボーダレスになってしまった。様々なことが予想を超えるスピードで動き始めている。
私の場合、月のうち40%くらいはオンラインで講師をしたり、海外にいるビジネスパートナーとZoomを使ってミーティングをしたりする。大手企業でオンラインワークショップを開催すると、時差を調整して海外から受講する人も増えてきている。
コロナの起きる前には、こんなことが普通になるとは全く想像していなかった。


新型コロナが収束すれば、オンラインの割合は少しずつ減って対面でのコミュニケーションが増えていく可能性が高い。それでも、「仕事はどこにいてもできるというパンドラの箱」を開けてしまった以上、その割合が50%を切る可能性は非常に低いのではないか。

2030年までに、グローバル人材になっておいた方が良い理由


前置きが長くなってしまったが、タイトルの「2030年までに、グローバル人材になっておいた方が良い理由」について話を進めたい。

2030年には、ITなど高度専門職は72万人不足するという予測がある(三菱総合研究所)。
私がIT企業の人事部長であれば、その不足した人材をどうカバーするかと言うと、できるだけコストの安い新興国の優秀なIT人材にオンライン上で仕事をしてもらうことを考える
もっとも2030年の時点で、日本人と新興国の優秀な人材の給与格差が現在ほどなくなっている事は間違いないので、コスト削減という意味ではそれほど期待できないかもしれない。

ITの仕事はサーバー上で行うわけなので、通常は個人作業が多く頻繁なコミニケーションは必要がない。ただ、誰かがチームをマネジメントしなければならないのは、オンラインでもオフラインでも同じである。

すなわち現在、大手企業において、50人の日本人ITエンジニアをオフライン(現場)でマネジメントしている課長は、今後多国籍のチーム(例えば日本人60%、インド人20%、ベトナム人15%、その他インドネシア人、バングラデシュ人など)のマネジメントをオンラインで行う必要が出てくるのである。
先日、あるクライアントからこんな相談があった。「最近オンラインの面談やミーティングでスケジュールがいっぱいになっているのを見ると逃げ出したくなるという社員が増えている」。
この状況に加えて、その相手が多国籍になるのであるから、ほとんどの日本人にとっては、言語的な課題と文化的な差異も含めたマネジメントは大きな負担だ。

もちろん管理職だけではなく、チームメンバーも、チームが多国籍になれば、チーム間のコミュニケーションも当然多国籍になる。

すなわち管理職も一般職も、この状況に適応できるようにリスキリングしなければ、組織の中で自分が機能しなくなる日は確実に近づいている。
リスキリングは、英語力だけの話ではない。価値観の違う多国籍のチームリーダーシップやマネジメントできるためのスキルやマインドセットのことである。

IT人材だけではない。人事、財務、マーケティング、設計、技術、ウェブデザインなどホワイトカラーの仕事は、基本的に80%リモートワークでも生産性が変わらない可能性が高い。

工場で働く人たちは、基本的に現場にいないとできない種類もあるが、今後はロボットや3Dプリンターが人間の仕事をやってくれるようになる。技術指導も、高精度カメラを使ってオンラインであれば、いちいち現地に行かなくても十分に対応できてしまう。

このような時代になってくると、「どこでも誰とでも働ける人材」が求められてくる。「本音では丸の内や品川で日本人とだけ働きたい人材」は、気づかないうちに、「時代のニーズに合わないパフォーマンスの低い低賃金人材」となってしまう可能性が高い。

職能給から職務給へ「新しい資本主義」

岸田政権の看板政策である、「新しい資本主義」の新しいメッセージが先日発表された。

「勤続年数に応じて賃金が上がる職能給から職務給への移行を進める。そのために国として5年で1兆円の人材育成投資をする」とのことだ。

例えば、多国籍チームのマネジメントは職務である。日本人のチームを長年日本式のマネジメントで遂行してきた管理職が、多国籍チームのマネジメントが職務となった場合、当然リスキリングが求められる。

どの時点で、自分がそのサプライチェーンの中に入ることになるのかは人によって異なる。2ヶ月後かもしれないし、5年後かもしれない。しかし、このブログの読者が、もし40代より若い場合は、人生は確実に100年になっているはずだ。すなわち、年金生活が20年とすると、40歳の人はあと40年間キャリアが続く。

高齢化と人口減が続く日本においては、実働人材の枯渇は避けられない課題である。
日本の企業においては、まだまだ男性中心の社会であり、阿吽の呼吸で仕事ができる日本人コミュニティーで人生はうまく回ってきている。しかし、今後も続くと予想される少子化の中で、この日本独自の男性中心・優位構造は今後も続くのだろうか?

日本においては、多国籍チームをリードしたり、マネジメントできる人材が枯渇している事はすでに述べた。そんな中、例えば米国のトップスクールに奨学金で留学し、博士/修士号を持ったベトナム人の女性が、あなたの同僚や上司になる可能性はますます高まっている。海外赴任をせずとも、このような可能性があることをきちんと想定の範囲内に入れて、今から準備しておく必要がある。

「強いもの賢いもの」が生き残るのではなく、「変化に適応できたものが生き残る」(ダーウィンの法則)


国際部勤務や海外赴任者だけがグローバル人材だった時代は徐々に終わりを迎え、「どこでも (国内でも海外でも、自宅でもオフィスでも)、誰とでも(日本人でも外国人でも、価値観/性別/世代を問わず) 働ける人材」が、これからの時代のグローバル人材像なのである。

この変化に適応してリスキリングを行うことが、先の見えにくい時代において、キャリアの持続可能性を高めるのだ。

次回は、「どんなリスキリングをする必要があるのか」について詳しく書かせていただく。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?