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信じれば叶う。本当の本当に信じれば、の話。

先日、ご近所さんから興味深い話を聞いた。

このご近所さん、名前はデイビスというのだが、彼の娘さんと、うちの娘が学校で同じクラスなので、スクールバスまでの送迎や学校行事などで頻繁に顔を合わせる。デイビスには、娘さんのほかに息子さんもいて、2人とも平均より身長が高いそしてデイビス自身、とても背が高い。聞くと、190センチあるらしい。

我が家の子どもたちは2人とも小柄なので、そのうちグンと背が伸びてくれたらいいんだけど、という話をしていたときに、デイビスがこんなことを教えてくれた。


デイビスの息子さんは、いま4歳。プリスクールに通っているが、クラスではぶっちぎりで背が高いらしい。実際、5歳児どころか、6歳児の中に混ざっても、まったく違和感のないサイズである。だが、生まれた時からずっと大きかったわけではなく、数年前まではむしろ小さい方だったという。

「そのころ、コイツに『おまえは将来190センチを越えるまで背が伸びるんだ、今日からグングン伸びていくんだ』と毎日言い続けたんだよ。そうしたら、そのころから本当に背がグングン伸び始めたんだ。」

・・・そんなことある?そこに因果関係あるのん?ていうか、アナタがめっちゃ背高いから、子どもも大きくなったっていうこととちゃうの?と心の中では思いながらも、続きがありそうだったので、相槌を打ちながらその先を待った。

「なんで子どもにそんなことを言い続けたかというと、僕自身が子どもの頃に同じ体験をしたからなんだ。スーパーマンの身長って190センチなんだけど、僕の父親が、「おまえは将来スーパーマンと同じくらい背が高くなる」って言ったのを僕は真に受けて、190センチになるってずっと信じてたんだ。そうしたら、本当に190センチになったんだよ。」

デイビスは、いつもより興奮気味にそこまで一気に喋って、本当だよ、と最後の一押しの言葉をにっかりとした笑顔とともに付け加えた。

・・・もう一度言うけど、そんなことある?事の因果関係はにわかには信じがたかったけれど、デイビスの言葉の熱量に圧倒されながら、どうやらその経験自体は本当らしいと思った。デイビスの親御さんの身長を聞こうかと思ったが、せっかくの彼の熱弁を台無しにしてしまう気がしてやめた。


我が家の子どもたちは、2人とも小柄だ。特に小1の息子は、クラスでいつも身長の低い方から1番、2番を争っている。生まれた時点では大きめの赤ちゃんだったのに、その後、あっという間に小柄エリアに突入していった。

息子は一人目の子どもで、一般に良いと言われていることを極力実践しながら育てた。粉ミルクよりも母乳の方がいいらしいということで、1歳過ぎに卒乳するまでミルクは母乳だけ。一方、生後1か月から粉ミルクと母乳の混合で育てた娘は、平均的な大きさになっている。

もしかして息子のときは母乳が足りていなかったのかもしれない。後になってふと浮かんだ考えが頭から離れなくなった。そうと決定づける確かなものはなにもないのに、ほとんどそうだと信じて、後悔に似た気持ちを抱き続けてきた。

でも、よく夫と話すのだが、わたし自身も、小学中学年くらいまでは体が小さかった。背の順に並ぶと20人中4番目とか5番目。中学に上がる前後から成長のスピードがあがり、160センチを少し越える程度まで伸びた。夫も同様で、高校に入るまでは小柄だったが、その後ぐんと伸びた。いまは180センチ弱(アメリカでは小柄な方だけど)。夫側の家族は、義理の父も甥も、男性陣は義兄を除いてみな遅咲きのパターンだったという。

だから、息子もきっと、高校生くらいになれば、思い出したようにグンと背が伸びて、背が高いとまではいかなくても、平均から大きく外れない程度には高くなる、ただ大きくなるタイミングが遅いだけ。家族内の統計的傾向を頼りに、「大丈夫」と信じることにしている。親がいくら悩んだり心配しても、なんの力にもならないのである。

一応ことわっておくと、背が高いのが良くて、低いのが良くないという価値観を言っているのではない。ただ、周りと比べて極端に小さい息子の成長が、ちょっと心配なのである。

だが、デイビスの話を聞いて、夫には思い当たることがあった。甥のことである。小さいときから小柄で、ほとんどの期間、2歳下の妹に身長を追い越されていた。よく姉と弟に間違えられていたという。そのときも、一族の統計的傾向を持ち出して、「高校生になれば、家族の誰よりも背が高くなる」とみんなで言い続けたらしい。そして、実際、高校に入ってから彼の身長は一気に伸び、いまや180センチを越え、予言どおり家族の中で一番背が高くなった。

人間の脳に刷り込まれたシナリオは、本当の本当に本人が信じていたら、もしかしたら体の中でそのとおりにしようとする力が働くのかも。

科学というより、精神論的な臭いのする仮説である。これだけを聞いたら、一瞥して受け流してしまいたい胡散臭さがある。

でも、いま目の前には、3つの例が並んでいる。デイビスとデイビスの息子さん、そして甥。どれも、たまたま周りが語りかけたとおりになっただけのことかもしれない。最初からDNAで結果が決まっていて、信じるも信じないも関係なかったのかもしれない。でも、もしかしたら、関係があったのかもしれない。

わたしと夫は、その日から息子に語りかけ始めた。

君はいまからどんどん背が高くなって、クラスで一番背が高くなる。

それから毎晩寝る前に、この一言を真顔で息子に語りかけ、息子の手を掴んで持ち上げたり、足を引っ張ったりしている。モノは試しでやってみようという軽い気持ちではない。そんな半信半疑ではなくて、本当にそうなると信じ込むのだ。この儀式のようなルーティンを通じて、息子に、そしてそれをやっているわたしと夫自身に、呪文とまじないをかけている。

そうしていま1か月が過ぎた。この1か月で、息子の身長は1.5センチ伸びた。これは、息子が去年1年間で伸びた分の3分の1にあたる。明らかに成長スピードが増している。これはただの偶然だろうか?

信じれば叶うというのは、あながち嘘ではないのかもしれない。本当の本当に信じたら、脳から指令が出て、信じ込んでいるシナリオを実現しようとする力が働くのかもしれない。

この先どうなるのか、乞うご期待。

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