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じいちゃんとKONG

どうも。

KONGです。

KONGにはお爺ちゃんがいました。

とても厳しい人で、小さい頃には遊びで新聞紙をクルクル丸めて剣を作って

「やぁー!」

と、斬りかかったもんなら、超細くクルクル巻きにした強度が高い剣で、顔面をフルスイングしてくるようなじいちゃん。

痛くて隠れて泣いていたら、

「泣くぐらいなら初めからやるな。」

と、言い放つぐらいの人だった。

何度泣かされたかは分からないが、KONGはじいちゃんが嫌いじゃなかった。

職人気質な人で、

「安いモンを沢山買うんじゃのぉて、良いモンを一つ買え」

と、良く言っており、KONGが東京に出るお祝いとして、スネアドラムを買う為に10万円をくれた。

当時は東京に出る為にお金を貯めており、高価な楽器とは無縁だったKONGは、よく入り浸っていた楽器屋さんでも眺める事しか出来なかったスネアドラム達を買える事に心を躍らせていた。

『あれにしようか?これにしようか?』

一度は、金額を抑えて貯金しようとズルい事も考えたが、それはじいちゃんの気持ちに反するから辞めた。

今となっては『高ければ良い』ってもんじゃないと思っているが、当時のKONGは機材の知識もなく、家にインターネットもなかったので、小さい楽器屋の情報が全て。

そんな楽器屋で、驚くような金額で並べられている機材達に手が届く事が、非常に嬉しかった。

『スネアを買いたい』『金額は10万円まで』と店長に伝えて、数台しか展示されてないスネアを叩きながら

『色はこっちがいいなぁ…』

『音はコッチの方が何かガツンとくるしなぁ…』

と、普段自分の使っている安い機材から比べたらどちらも良い音に聴こえてしまう。

『音』で選ぶか『見た目』で選ぶか。

滅多にできる買い物ではないので、より慎重に、顎に手を当て、首を傾げるKONG。

そんな時、
パチパチとパソコンで何かを調べていた店長から吉報が届く。

「この音がいいなら、このメーカーに特注でカラーオーダー出来るみたいだよ!予算からは1万円ぐらいオーバーするけど!」

と言われ、どうせ高額払うなら、プラス料金で自分の納得したがスネアが手に入る方がいい!

しかも特注で作られる事にKONGは大喜び!

支払い後、納期が4〜6ヶ月と言われ、速攻家の貯金袋からじいちゃんの10万円と自分の貯金袋からもお金を出して、支払いを済ませ、その日から4〜6ヶ月待つ事にした。


6ヶ月後。

待てども、待てども連絡は来ない。

楽器屋さんに連絡しても

「ごめんねぇ。

こっちからも、どうなってんだと聞いているけど、連絡こなくて…。」

からのキャンセルは出来ないと、言われ。

待つしか選択肢はなくなっていた。

そして、その2ヶ月にようやく届いた。

だが、思っていた色とは全然違い『これじゃない感』があったのは事実。

待つ事により嬉しさや感動よりも安堵のほうが大きかった。


それから1年後。

東京に上京し専門学校の各楽器の公開試験的なオーディションが開かれた。

課題曲は全員一緒で、自分のパート以外は学校外からきたプレーヤーと混ざっての演奏。

それを見て審査員が評価をする。

それぞれ、愛用している機材を持ち、参加者は控室で自分の出番を待つ。

その時、地元民で少しお金持ちの同期が

『機材は拘らないと!俺たちはコレで生きていくんだぜ?』

的な事を言っており、KONGのスネアを見た瞬間こう言った。

「あ!コレ知ってる!」

当時でもそこまで有名ではなかったKONGの機材を知っており流石の一言。

「これ、5万ぐらいで買えるヤツだろ?」

何を言っている?
流石にコレは知らないのか?
と、思いながら

「ん?
違うで?その上のモデルでカラーもオーダーしたけぇ10万ぐらい。」

と、言ったら

KONGのスネアの内側の品番のシールに指を当て

「はははは!上位モデルの品番と違うぞ?」

と、初めて自分のスネアの品番を見て、コレクターなのか、カバンに入っていたカタログと照らし合わされる。

オーディションで緊張もあったが、それ以上に、じいちゃんから買ってもらった大切な機材が、実は安いモデルだった事。

予定より長く待たされて、ようやく届いた機材は自分の欲しかった物ではなかった事。

じいちゃんのお金で買ってもらった物が、自分の知識不足で中途半端なものだった事に気が付かず、浮かれていた惨めさ。

じいちゃんへの申し訳なさ。

当時の楽器屋への怒り。

悲しみ。

色んな感情で泣きそうになった時に、KONGの出番が来た。

『もう無理だ…。』


開き直り、課題曲のリズムや完成度は無視して、オシャレだった曲を好き勝手に叩いた。

少し笑う人もいた。

こうしてKONGの出番は終わり、数十分後には全員の演奏が終わっていた。

全参加者が集まる中、各審査員がコメントをしている。

「ドラムは合格者いません。」

と、進行をしている人が言った。

もう、どうでもよかった。

早く帰りたかった。

しかし、

司会者ではなく、ドラムの審査をしてくれた人がマイクをとり、続けてこう言った。

『個人的に、特別審査員賞を出したい子がいる』

と、KONGが指を刺された。

何かの間違いだろ?

……。

それから数年後、KONGはこの審査員の人に師事する事となる。

じいちゃん。

色々あったけど、この機材は今も大切に使っています。

ありがとう。

それでは!

また!!

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