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神龍(シェンロン)

どうも。

KONGです。

新年1発目は、小学生時代のお正月エピソード。

その年の冬休み、岡山にある親の実家へと帰る事になったKONG少年。

この里帰りは、当時小学2年生だったKONG少年が
普段住んでいる広島から岡山へ、1人で新幹線に乗って行くという“大冒険”でもあった。

遡ること数日前。

「学校が休みでする事ないなら、裕一郎だけ早く来ればいいんじゃないか?
こっちでオモチャ買っていっぱい遊べばいい。」


おじいちゃんと電話で話していた母から、たまたま近くに居合わせたKONGにそう伝言を受け、
思わず母親と電話を代わる。

「オモチャ買ってくれるの!?俺“ゲーム”が欲しい!
行く行く!ねえ、本当にオモチャ買ってくれるの?」

しつこいぐらい聞いていたのを覚えている。

おじいちゃんは優しく

「あぁ。いいよぉ。」


と、言ってくれた。

ただ、その時KONGが言った“ゲーム”とは、ゲームソフトではない。

何を隠そう“スーパーファミコン本体”の事だった。

当然だが高い。

安易にお願いしようものなら

「ん?なんじゃそれ?なんぼぐらいするんなら?

・・・25,000円?!ダメだダメだ!」


と言われ断られてしまうのが想像できたので、“ゲーム”とボカした表現で約束を取り付けた。

小学生なりの知恵だった。


何度も親に「欲しい」とお願いしていたが、これまで買ってもらえなかったスーパーファミコン。


「まわりの皆んなは持ってる」

「他所は他所!ウチはウチ!」


日本全国の家で、この会話が繰り広げられたであろう、スーパーファミコン。

「欲しい物を買っていいよ!」と言われ、商品名を伝えても
「それは無理だなぁ」と断られ続けて来たスーパーファミコン。

そんなスーパーファミコンを買ってもらえるかもしれない"約束”に、ウキウキしながら、岡山への里帰り当日を待つ事になった。


冬休みに入り、予定通り1人で新幹線で帰ったKONG少年。

改札で手を振るおじいちゃんと合流する。

車に乗り

「どうせおもちゃを買うなら早いほうがいい!」

と、そのままオモチャ屋さんに向かう夢のような展開となった!

真っ先にゲームコーナーに行く。

ショーケースの中には、スーパーファミコン本体がある!

KONG少年が見つめていると、おじいちゃんが口を開く。

「好きな物を選べばいい。」

しかし・・・。

いざスーパーファミコンを目の前にすると『ゲーム』とボカしていた事が急に不安になってしまった少年KONG。

つい、

「・・・好きな物買っていいって何処まで?」

と、余計なことを聞いてしまう。

「そりゃぁ、あまり高すぎるのは買えんぞ?」


固まってしまった、KONG少年。

買えないモノもあるんだ…。

スーパーファミコンが欲しい。

でも値段を気にしてしまう。

おじいちゃんに

『こいつこんな高いもん、言いやがって…。』

なんて思われるのが嫌なのだ。

『欲しい物買っていい』と言われて断られる悲しさを味わいたくない。

悩んだ挙句、KONGがショーケースの中から選んだ物は

・・・『スーパーファミコンのソフト』だった。

本体を持ってないのにソフトを買う謎の行動。

『でも、いつかは出来るかもしれない』

小さい夢への第一歩のようで、嬉しかったのも事実だった。

こうして、遊べないソフトを握りしめて家に着く。

買ってもらったソフトをおじいちゃんと眺めていると

「コレはどーやって遊ぶんなら?」


不思議そうに聞いてくるが、説明が出来ない。

小学生ながら誤魔化して、他の遊びをする。

しかし、買ってもらったソフトが気になり、暇があれば炬燵でゴロゴロしながら、何度も出来ないソフトの説明書を見て頭の中で妄想する。

友達の家で見たシーンが説明書に載っていたので、何度も自分がやっている姿を想像したり。

下手くそでおぼつかない操作を誰にも見られずに出来るなんて、どれだけ楽しいだろうか、と想像したり。


翌日も説明書を見ながらゴロゴロ。

その姿を見かねたおじいちゃんが

「コレはじーちゃんと出来るんか?」


と話かけてくるが、


「・・・おじいちゃんには難しいから出来ないよ」

と、そっけない返答をしてしまう。


「本当にこれが欲しかったんか?」


ギクリとする質問だったが、


「うん。」


と答える。

なんてつまんないヤツなんだろう。

せっかく来たのに、オモチャを買ってもらったら元気がなくなり、薄っぺらい説明書を何度もゴロゴロしながら読んでいる。

せっかくの楽しい年末に変な隠し事で、いまいちテンションも上がらず

『最初から正直に欲しい物を言って砕け散った方がよかった。』

『ラジコンとか買ってもらえばよかったなぁ』

『おじいちゃん、ごめんなさい。』

こうしてモヤモヤしながら、アッと言う間に日々は過ぎ、やがてKONGの家族が遅れて岡山へやってくる日が来るのだった。 



ファミリーが到着するまで、一足先にお正月の準備を始めるKONG。

お餅をついたり、野菜を外で洗ったり、いつも通り慌ただしい年末の実家の風景になっていた。

KONGファミリーが車で到着し、いつも通りてんやわんやと時間が過ぎて迎えた夜。

お酒が入ったおじいちゃんが

「おい。将棋を指すぞ。買ったら欲しい物買ってやる。」

痛い思いをした言葉『欲しい物買ってやる』

しかも、おじいちゃんにはこれまで一度も勝ったことはなく、案の定劣勢・・・。

・・・今回も勝てる気がしない。

『ガハハ』と得意げな、おじいちゃん。

そんな戦局中に、おじいちゃんの背後から父親が口パクとジェスチャーでKONGにサインを送ってきた。

『角を2つ進ませろ』…

その後もジェスチャー通りに進ませると見事、おじいちゃんを撃破!

卑怯ではあったが、こうして二度目の『欲しい物が買ってもらえる』状況になったKONG少年。

姉と話をしながらウダウダと欲しい物を考えていた。

すると、家の前に車が一台止まり、中から叔母が現れた。

「ハロー!!!」


何とも陽気な登場と同時に

「コレ、早いけどお年玉!!」


(ドン!!!)

・・・なんと。

数日間KONGを苦しめた『スーパーファミコン』

まるで神龍(シェンロン)のように現れた叔母さん。

あまりの感激と衝撃にアワアワしていると

「じいちゃんにお礼を言いなさい。」


当時は意味がわからず

「じいちゃんありがとう!」


とすぐに伝えたが、
大人になってから改めて思い出すと、この一連は偶然とかではなく元気がなかった孫の為に、
陰で家に電話をしてくれたりして、おじいちゃんが用意してくれた物だったのだ。

本物の神龍がいたら、おじいちゃんにしっかりお礼を伝えたいですね。

今年は辰年。

一つでも多くの願いを叶えるように頑張ります。

それでは!

また!

今年もよろしく。

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