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視点を変え、新しい考えを取り入れるとき

つい先日、お隣のおばさんと話していたら「あなた、この本読んだことある?あまり本が好きじゃないわたしもスラスラ読めたわよ。それに、なるほど、と思うことがたくさん書いてあるわよ」と、一冊の本を貸してくれました。

ちょうどNYでわたしが通っていた大学と、同じ大学に行っていた日本人女性のジャーナリストが書いた本でした。大学は大きかったし、学部が違っていたし、お会いしたことはないですが、たまたま同じ大学でした。

確かに、読みやすくて、上手な文章で、スラスラ読めましたが、驚きました。同じ街に住んで、同じ時代にいたのに、NYに対する意識や見解が全然違っていたからです。

彼女は、同時多発テロ事件の時に、NYで撃墜されたツインタワーのすぐ近くで働いていて、間近に、タワーの崩壊と悲惨な状況を目撃、そして体験したそうです。

そして、テロの後、彼女の周りの人たちは、不安と恐怖に打ち震え、護身のために拳銃を購入し、単身女性だった彼女にも、

危ないから、銃を購入しなさい

と、勧めたそうです。まるで、NY中の人たちが、銃を手にしたような印象の書き方でした。

けれど、わたしの周りの人たちで、銃を持っている人は、一人もいません。もちろん、テロ後にも購入していないですし、わたしにも誰も勧めていません。それどころか中東諸国に報復戦争を仕掛けるのは良くない、と、みんな戦争と暴力に反対でした。

公共バスに乗っていても、見知らぬ人に「戦争はダメよね。復讐したらもっと酷いことになる。辛くても、悲しくても、アフガニスタンを攻めちゃ、だめ。辛い思いをしたわたしたちこそが、ちゃんと反対しないとね。」と、話しかけられたりしていました。

消防士だった音楽仲間の従兄弟は、テロ当時、ツインタワーの消防と人命救助のために建物の中に入って亡くなりましたが、その仲間も、泣きながら、報復だけはやめた方がいい、同じ不幸を繰り返すことになる、と言っていました。

そのため、わたしはてっきり、NY市民は、あの戦争に反対の人が多いのだと思っていました。

けれど、この作者の周りの人たちはどんどん銃を所有し、自分たちも戦闘姿勢に入っていたのです。驚きました。そんな人たちがNY市内にいたんだな、と。

確かに、NYは住みにくくなりました。それまでは、NY市の警察官しか街の見回りをしていなかったですが、9.11以降は、軍人や州の警察官が、駅や街角に立つようになりました。本にも書いているように、星条旗があちこちに掲げられるようになりました。そして、有色人種、特に中東系の人、イスラム系の人たちが、なんの理由もなく道を歩いているだけで投獄されたりするようになり、物々しい雰囲気になりました。

けれど、わたしの周りの人々の意識は相変わらず平和主義で、戦争反対で、相変わらず知性と芸術性を求める日々でした。もちろん、政治的論議は日常生活で行なっていましたが、それは9.11以前からやっていたことです。それに、NYって、本当に事件の多いところで、9.11はかなり特別な事件でしたが、事件慣れ、ハプニング慣れしているニューヨーク人たちは、状況に順応しながら、それでも淡々と過ごして来ました。

それに、9.11以降の一時期は激しくはなりましたが、人種が違うだけで殺されたり、投獄されたり、って、前からあったのです。アメリカの人種問題は昔からあり、ある意味、それが逆にテロ事件を招いた、という一面もあると思います。800もの言語が話されている多人種の街、多様性の街、NY市は、国も国際情勢も単純ではないことを、日常生活の中でひしひしと感じさせられる街です。

ただ、ツインタワーのあったところには、長い間、行きませんでした。わたしの友人たちも同じです。誰彼と知っている人が亡くなっていたし、ツインタワーはよく行ったところでもあり、テロ事件はわたしたちにとっては、ニュースではなく、現実だったからです。10年以上行かなかった人たちばかりです。ちなみにわたしは15年行かなかったですが、周りの友達は、もっと行かなかった人もいます。

けれど、誰も銃を買おうとはしなかったし、心を痛めていたからこそ、同じ思いを相手にさせたくない、と、報復戦争にも反対でした。

身近な被害といえば・・NYに日本人の友人はごく僅かしかいないのですが、一人、お兄さんのようにしてもらっている日本人男性がいて、その人の名前がオサムでした。アメリカ政府が必死になって殺そうとしていた、オサマ・ビン・ラーディンの、ファーストネームの、オサマに似ているので、あちこちで、え?オサマ??って、名前を言うたびに聞き返されて苦笑いする、というのが、まぁ、わたしの周りで一番の被害だった、というくらいでした。

確かに、イスラム系の友人たちの置かれた状況には、胸を痛めましたが、それは、ビンラーディンやテロが怖かったのではなく、どんどんイスラム系の人たちを投獄するアメリカ政府と、報復を叫んでいたアメリカ人が怖かったのです。

わたしはよく、根っからのニューヨーカーと呼ばれるのですが、実際に、NYは故郷のようなところです。そんなわたしにとってのNYと全く違うNYの顔を、別の人の視点から書かれた本で見せられ、一瞬たじろぎました。

発売後すぐに再版を重ねて80万部も売れたというその本が、どう考えても事実ではないNYの情報と印象を、日本の人たちに与えることに抵抗も感じました。

「いや、わたしの周りの人たちは、一人も拳銃なんて買わなかったし、買うことを推めなかったし、み〜んな戦争に反対だったんだけど・・」と、言いたくなり、本を貸してくれたおばさんにも報告し、周りの人にも言い、まぁ、ここにも書いているのですが(笑)

でも、もしかして、わたしが平和を求めるNY知識階層のバブルの中にいたのかしら?わたしに見えていなかっただけ?って疑問に思い、実際のNYの銃の所有者の数を知りたくなり、調べました。

『正確な数はわからないが、東海岸は、銃の所有率が全米の中で最も低く、特に、リベラル派、民主党派、非白人の女性は最も銃の所有率が低い』という統計が出ていました(Gallup)。NYは東海岸にあり、全般にリベラル派であり民主党の強いところです。

しかも、テロのあった2001年に急に銃の所有率がアメリカで上がったというわけでもありませんでした。全米で、前年の2000年に比べて1%ずつ2003年まで上がっていますが、2004年にまた下がっています。(Statista)

CBSニュースの統計では、NYは、銃の所有率が、ハワイやロードアイランドなど平和で美しいところに続き、51州の中で下から5番目だと出ています。所有率の高い州の1/3~1/2の率です。

こうして見ると、この銃の話しについては、わたしの感覚の方が正しかった、ということになります。

第一に、銃って危ないのです。撃つ人も怪我しやすいですし、銃を持っている人の方が殺されやすい、という統計もあります。事件の多いNYでは、そういう基本知識を持っている人が多いと思います。ちなみに、わたしは10代の頃から知っていました。

彼女の個人的な経験では、確かに周りの人たちが銃を買い、彼女にも勧めたのだろうと思いますが、わたし自身の経験からも統計からも、当時のNYの人たちの多くが銃を購入したとは考えにくく、特に女性に銃の所有を勧めた人は、ほとんどいなかったのが現実だと思います。ジャーナリストとしては、個人的体験だけでなく、そういう事実は書いて欲しかった、と思います。そうしないと、他の記述も、疑ってしまいます。何を基準に、何を元に、このことを書いているのか・・思い続けながら、疑問に思いながら読むことになってしまいました。

ただ、この本は、全体として、海外の情報が入って来にくい日本の情勢の中で、海外の情勢と日本の情勢を比較してさまざまな問題提起と提案をしている点において、多くの人にとって示唆的な本だったと思いますし、わたし自身も賛同する点もありました。

そして、この本を読んで改めて思ったのは、一つは、みんな持って生まれた星が違うように、同じ場所に同じ時期に暮らして、しかも同じ学校に行っていても、人によって全く違う現実を生きている。二つは、人の意見や情報は、たとえそれが本であろうと、誰が書いたものであろうと、確かめた方が良い。特に、出典元のわからない情報は確かめると良い。そして最後に、経験に基づく勘と判断力は大切だ。だから、できるだけさまざまな経験をした方が良い。

この3つです。

テクノロジーが発達し、ほとんど情報飽和状態であると同時に、権力者たちによる情報制限やAIによる操作も多い世界に住んでいる私たちです。この3つを意識することは、現代生活者にとって最低限の基本だと改めて思い知らされました。

来週には、ひらめきと、煌めききらめきと、鋭い知性と、ユニークな新しいビジョンと、イノベーション力を表す星が現れます。今もすでに影響が出ています。この星の位置は、次回は約400年ほど先まで起こりません。しかも、2020年のグレートコンジャンクションの位置とほぼ重なっているので、これまでの3年ちょっとの間に経験したこと、考えて来たことを振り返って計画を調整したり、新しく視点を変えてみたり、新しい考え方を取り入れたり、3年前に描いたビジョンを確認したり、はたまた全く新しいビジョンを描くのに最適の時です。

それにしても、きゃ〜、400年先の日本と地上と人類・・どうなっているかしら。今、わたしたちの描くビジョンや行動が、そのときを作ってゆくんだなぁ、と思うとドキドキですね。

ちなみに、この星の位置に最後に近かったのは、ちょうど、アメリカでは独立戦争があり、イギリスでは工業革命(Industrial Revolution 日本ではなぜか産業革命と呼ばれている)が起こっていて、みずがめ座にふさわしい革命と独立の機運の時でした。

そして今、アメリカは死と再生の星の元にドタバタしています。自分たちが大英帝国と闘って独立して民主主義の国を(知る限り)人類史上初めて作ったのに、なんと自身が世界の帝国になり他国から搾取したり戦争を仕掛け続けているという皮肉(よくあるある、だけど)。そして、イギリスで起こった工業革命以来、日本を含む各国が工業化と大量生産化の後を追い、地上の二酸化炭素量が増え続け気候変動も起こっている・・と言う因果が生まれています。星の繋がり、って、ホント、あるものですよねぇ。

わたしたちがこの嵐と混沌と革命の時代に、何を決断し、何を行うかが人類を大きく左右する・・未来の種を蒔くときを生きているのです。しかも、この話しをすると長くなるのでここではしませんが、人類は前人未到の新しい世界を作ることが求められています。

このひらめきと革命の星、自分の視点や考え方を改めてみて変える、の動きで大切なのは、まず、相手の話しを聞く、という姿勢です。

相手の意見や話しに賛同するかしないかよりは、相手の話しをちゃんと聞いて、その中に自分の意見や話しも見出し、新しいアイディアや、これまで見えていなかったものが見えてくるようになるのが、この星の位置です。

わたしも彼女の本を読んで、賛同できるところもできないところも含めてヒントになり、いろいろなアイディアが浮かんできています。途中で何度か投げ出しそうになりましたが、最後まで読んで良かった、と思っています。この星、忍耐も、時には苦しみも、実は必要な星なのです。

そして最後にもう一度、しつこいようですが・・みなさん、NY市は確かに大都市だし、犯罪も少なくないですし、わたし自身も怖い経験をしたことがあります。けれど、みんながこぞって銃を持っているような街では、決してありません。

少なくとも、わたしの現実では・・(笑)

ということで、また次回!

・・・・・

文・写真 by さっか

バナー写真:同時多発テロで破壊されたワールドトレードセンター後に作られた、ワールドトレードセンター駅と、背後に見える新しいOne World Center。2016年にテロ以降15年ぶりに現地を訪れ、何枚か写真を撮り、そばを離れた。友人たちは、行きたくない、と、その時も来なかった。以来、再び行っていない。

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関連サイト:
アメリカ同時多発事件 WikiPedia

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