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【詩】希望

雨の庭に薬草と花が育ち、手入れをする
草の葉をお湯で煮出してお茶ができる
裸足はだしで歩き回る朝──

希望はどこにあるのか?
希望は未来にはない
まだ見ぬ時間ときの中に
薔薇ばら色の光が満ちて
現実をリセットすることはない
また思いもらない出来事が
今ある問題を溶かして
ハッピーエンドが訪れるわけでもない

希望はどこにあるのか?
「今ここ」に集中して活動し
過去と未来を忘れることが大事なのか
ほんとうに?

希望のまたの名は歴史
希望とは過去の悲しみだ
ひとに歴史あり
誰にでも苦しかった思い出がある
土地にも歴史がある
戦いと商売と奉仕に明け暮れた人々
名前のない日々
郷土、国、海……

歴史に学ぶということは
先人よりうまくやることでも
もっと進歩した文明に進むことでも
私たちが失敗しないことでもない
ただ歴史という物語を、自分のうちに受け入れることだ
自分の歴史も他者の歴史もみんな受け入れること

希望とは、過去を背負いながら前へ踏み出す一歩だ
それが未来を作る
老人が子どもたちに物語をするのはそのためだ
老人は過去を背負っている、子どもたちは未来へ向かっている
上の世代は過去の罪禍ざいかを押しつけるつもりはない
といって歴史の重荷をなかったことにもできない
なにもかも清算して、まっさらな時間を用意することは
人間にはできない
だから、物語を手渡す

その間で、大人たちははたらく
かくのあるこの世界で
森林が燃え続けるこの地球で
格差の広がるこの社会で
考えること、話すこと、動くこと
そこに希望がある

危機の時代は歴史がかえりみられないときだ
私たちは物語を探している

私はうたおう
ともに行こう
歴史をつむごう

そして、一日の仕事を終えて眠りに


* 昔から、地域や家庭のなかで歴史や民話、歌や物語は語りがれてきました。主に老人や女性たちによって子どもたちに受け渡されてきたのです。


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