見出し画像

散文:自動販売機2024/01/26

 自動販売機がある。
 僕はコインを投入し、アサガオというボタンを押した。風邪薬のようなカプセルがスっと落ちてきた。拾い上げて水無しで服用する。ゴクリ。言葉と想念が頭の中を濁流のように駆け巡る。

アサガオの夕日に洗われた僧帽筋は松林でフクロウになった。ロッカールームのペルシャ猫は嵐とともに去りぬ。メロディの裏庭に常にそびえ立つミトコンドリアを眺めながら真綿のようなフィラメントで暖をとり、うずくまっている心電図にバトンを渡した。

 おおお。こういうやつか。その流れに身を任せる覚悟をした。

ミートパイが降り注ぐ丘へ。木彫りの小鳥を100マイル先の今日に投げ、敗者復活戦に敗北したミドリガメがまた勇気の一歩を踏み出す。パン。銀ギツネの毛なみ。ハミガキ粉の時雨。喝采。完全な複合機が作動した時、茶道が雪崩を起こした。飴玉の芳醇な香りが包み込む。それは当然の帰結で、梵我はソリチュードを奏でる。容姿の醜い美人。原理主義者がまたデモ行進していらっしゃる。デフレの象徴が皇居に集結し、巻末カラーで焼き上げた。ミルフィーユ? ミルフィーユなの? 松ぼっくりを踏み砕き、十勝の変形は2勝2敗。雨に濡れた空き地の春本。どこかの喧騒は自縄自縛。大陸棚にはオニヤンマ。ターバンを踏みつける勇気の外側に今、毛虫の鮮やかさを添える。

 目を固く閉じた。流れはまだ止まらない。

マヤ文明が滅んだから現代文明がのさばるのであった。身体を丸めて岩になりきる岩ごっこ。ゆとりの余白で蒸し上げるのはふっくらとした暖かい取り交わし。あなたの青雲の志を。
「渡る人」は歩みを止めない。空を見上げる。その方向を指差して、何かをつぶやいた。「渡る人」は巨大化し、街を踏み潰した。「渡る人」の足跡には森と湖が生まれた。「渡る人」は歩みを止めない。幻想がいびきをかく以上は。

 言葉の流れが止まった。終わったのだろうか。よし。次はヒマワリのボタンを押すことにしよう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?