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【人間を越えた先に】日経新聞ピックアップ#10 24/3/6

〈テクノ新世 理想を求めて3〉「人類に10億年分の健康を」:日本経済新聞

今日は、今週連載の「テクノ新世」から人間の寿命と生命倫理について考えたい。
驚いたことに普段の生活習慣を改めるだけでお金をかけなくても肉体年齢を若返らせることができるらしい。適度な運動と瞑想、節制した食事を行うだけで老化の進行を抑えられる。またゲノム編集技術や投薬治療などのテクノロジーによって老化に抗う研究も進められている。

人間の寿命は120歳程度が限界とされているがお金を注ぎ込んだ人だけが長寿を叶えられる技術が確立すれば、一部の富裕層だけが生存の権利を得ることになり、これは生命倫理の崩壊を意味する。生命倫理には絶対的な原則があり、生存の権利をたとえ自らに対しても奪うことは許されない。長寿を叶えたい意志が伏せられることはあってはならないのだ。生命倫理が人間たる所以ならば、長寿を叶える技術は一般的な医療福祉のように人々に平等に付与されるべきだろう。

ただ新たな生命倫理が勃興する可能性も十分にある。人は産まれた瞬間から刻々と死にかけていく。生まれながら死んでいるなら生の権利は死の権利と表裏一体、等しく尊重されるべきではという価値観である。生死を各人の意志や思想、道徳的判断のもとに、各人の責任で選択できる世の中も否定できない。

人類は近い未来に生命倫理を問うことになる。果てには人体を手放した人類は生命体と言えるのか、残酷な問いが立ちはだかるだろう。

e-karas

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