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不満と不安

 静かに忍び来る“年齢を重ねる”事実に“不満”を遥かに超えた“不安”がセットでついてくる。

生活

 郵便受けに自動車学校からの案内が届き、「何の事…?」と、美樹が話すと、私は「後期高齢者の“自動車免許更新"をする年齢になったか…」と言うと、「そうね、そんな年齢に…」と美樹は言いながら、2人で10km程離れたショッピングモールへ買い物に出て、帰り際に母親の薬を薬局へ取り行った。
薬局で「安芸 春樹さん、薬を取りに来るのは大変でしょう。 郵送とかも出来ますよ! 郵送代は頂く事になりますが…。 」受取をする時に受付の若い彼女が言ってくれたが、「大丈夫ですよ!」と言い薬局をでた。
 なんてことない日常の会話のはずだった。

免許更新

 自動車免許の更新に技能判定を自動車学校でしなければならない。
運転歴が長く“そんなもの”と思っていたが、必要に迫られ自動車学校へ行くと、子供と同じ年齢くらいの佐賀教官が助手席に座り「コースを回れば終わりです、それじゃS字カーブから…」と、なんなく通り教官が「クランクやって下さい。」
 これ程度と思ったが“脱輪”し、その後一時停止で停止線をオーバーした。
 講習が終わると何人かが書類の入った封筒を渡されなかった、私もその1人に入っていた。
 “運転免許更新”されない!!

 自分が運転している時は気にしてなかったが“車社会で構築された街”に
生活する“不満”が…!


ドライブ

 

 私と妻の美樹は、足の不自由な96歳の老母を介護する毎日の生活は自動車の免許更新出来ない事で一変した。
 美樹は視力低下で私より先に運転免許を返納していたので、生活の移動手段は私の自動車免許だったが…。

 自動車の中で私と美樹は母親の介護の“ガス抜きや相談”を、ショッピングモールまでの短い時間だけども出来て今迄来れたのかもしれない。
 生活費もバスなどの交通費や薬の郵送費等細かいものが加算され、ガス抜きや相談も…。


子供 


 「おふくろ元気にしてる?、おやじは相変わらず元気にしてるか?」と、福岡県に住む息子の陽翔からの電話が美樹の携帯に…、息子も50歳を過ぎ孫の隆晴は大学3年になる程成長している。

 雪深い青森から遠く離れ、成長した息子の人生の妨げになりたくはないと思いながら、1秒毎に衰えていく自分の身体を憂いでる。


現実に目にしてる光景

 75歳以上のカテゴリーの私と美樹はお互いの“心と身体”を支えながら老母を支えて暮す。
 夫婦2人の介護のガス抜きが出来ない“無料バス”に乗り、バスの窓からたまに見える自動車は“高齢者運転マーク”が付いている。
 大出企業が撤退し“名前が変更された”ショッピングモール”へ行く。
 店員も同じ世代の同じ世代だけのショッピングモール!!

 “不満を遥かに凌駕する不安”を抱え今日を生きる。


平成生まれの息子の近未来


 母親が100歳の天寿を全うし、亡くなった。
 看取った私と美樹の年齢は80歳よ声が聞こえていた。

 
 1人息子の陽翔へ

「迷惑なら捨ててくれ…!」と書いたが消した…。
「元気にしてるか?、お父さんとお母さんは元気にしてる。」と書き直してラインで送る…。 
 
…………………… 終わり……………………

 

 
 




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