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映画ドラえもん 『のび太の地球交響曲』感想と、ドラえもんとの付き合いについて

2024年の新作のドラえもんの映画を観てきました

ファンタジック!

ドラえもんの映画を映画館で鑑賞するのは、小学生の時以来です、本当に30年ぶりくらい
音楽をテーマにしたストーリーだと昨年の今頃に有識者さんからの情報で知っていたので、鑑賞するにあたり以下のタスクチェックをしようと決めてました

・公害レベルの騒音であるジャイアンの歌としずかちゃんのバイオリンに、これまでにない運用があってほしい
・音楽にまつわるひみつ道具で思い付くのは『ムードもりあげ楽団』『メロディーお玉』『音楽イモ』あたりなので、それらの出番があれば嬉しい

あとは、映画オリジナルでありつつ、原作のてんとう虫コミックからの引用エピソードもあれば嬉しいな、と考えていました

で、鑑賞した結果としては、約2時間の映画として話の展開のテンポが早すぎるところと、もたついてるところが交互に入ってしまってるように感じました
特に今回の主な舞台である、宇宙のファーレ(音楽の喜び的な意味)の殿堂の冒険を、地球と行ったり来たりするシーンがもどかしく感じました 戻らずにビシッと冒険を続けて欲しい
ゲストキャラにしてヒロインにあたるミッカと地球の繋がりは、長大な地球の歴史を感じるものでもあり、冒頭でそれに繋がる美しい伏線もあったので、ネタはすごくいいです
そして音楽を演奏するシーンはどれも素晴らしいのです! この映画はあくまでも音楽を鑑賞するための作品として、シナリオにあまり難癖をつけるべきではないのかも知れない
メインキャラの5人組とゲストのセッションや、たくさん登場するキャラ立ちのいいロボットさんたちのそれぞれの得意楽器の演奏も見所がたくさんでしたし、
終盤でのロボットたちのオーケストラと、地球の何気ない日常の音がハーモニーになって宇宙に響く展開も、映画館の大きなスクリーンで観るからこその感動がありました
音楽をもって宇宙の驚異に立ち向かう“地球交響曲”というタイトルの回収もとってもよいです
メインキャラも楽器を演奏していたのですが、ジャイアンのチューバ、スネ夫のヴァイオリン、しずかちゃんのパーカッションが皆凄い超絶技巧で、楽器が助けてくれたんだとしても、小学生でその腕前はすごいなーと感じつつ、先だっての個人的タスクである、ジャイアンがほんとにやりたいはずの歌、しずかちゃんのバイオリン、にはフォローはあまり無かった(特にしずかちゃんの方はエンドロールのワンショットのみ)ので、物足りなく感じてます
また、ひみつ道具の正確な運用にこだわりすぎるあまり、駆け足で道具が飛び出してたのも気になります
特にテキオー灯が出てくるシーンに説明が割かれてなくてハラハラしました
テキオー灯分からない子もいるよ!
テキオー灯は見た目で効果が分からないよ…
(対真空熱冷水圧)の効果が付くから、宇宙服無しで宇宙に放り出されても大丈夫なんだよ! って分からないよ…
あ、でも一瞬だけど『音楽イモ』が出てきたのは嬉しかったです あれも説明を全くしてない、いわゆるカメオ出演ひみつ道具でした
『メロディーお玉』は出てこなかったけど、『ムードもりあげ楽団』はがっちり出てましたし、地味に『コエカタマリン』を失念していたので、登場シーンにはなるほどなるほど! となりました🎶

この作品における悪役は、人格や性格がない存在なので、それを倒すのには、あまりカタルシスは無くそこも物足りないのですが、彼らが最後に消える時には、微かに笑顔の表現があったように見えたので、ただファーレ(音楽の喜び)が好きで求めていただけの生き物だったのかも知れない
そして、銃や剣によらない音楽での戦いであったことも、これまでにない要素が開拓されててよいです

鑑賞をしていて全編通じて、ドラえもんたち頑張れ! という小学生の頃のような気持ちはそんなになく、
「なるほどなるほど、こういう展開か、こういう運用か」
と、終始そんな目線で観ていたので、つまりはうるさいファン目線なのですが、改めてnote記事に起こしてみると、ドラえもんの新作の映画を観てやいのやいのと感想を書くことそのものが、凄く楽しいと気づかされました
思えば『のび太の恐竜』以降、40年以上ずっと様々な映画が創られつづけてるって、めちゃくちゃすごいです そんなアニメ作品は他にありません
声優さんの世代交代後のドラえもんアニメに触れられて無かったけど、さかのぼって鑑賞もしてみようと思います

劇場鑑賞のおまけのグッズは、この作品内に登場したひみつ道具エピソードを集めた小冊子だったので、とても嬉しいです

猫に見せびらかす


ドラえもんのコミックは全巻持っていますが、こういうまとめ冊子は必ず、コミックの収録巻も明記してくれてるので「あのひみつ道具どこだっけ?」っていうことになりがちな、ドラえもんゆるマニアにとってありがたいんです
限定アプリが利用できるコードまで付いてて、未来…ッ! ってなりました

上映のラストでは、来年の映画のふんわりした予告も入っているので、それもすごくいいですね
絵を描くドラえもん、赤いマントの魔法使いの姿、巨大な湖のほとりの壮麗なお城…というイメージ画像でした
ドラえもんのてんとう虫コミック12巻に収録されている『ゆうれい城へひっこし』に出てきたドイツのミュンヒハウゼン城、もしくは大長編ドラえもんの『竜の騎士』作中に出てきた風雲ドラえもん城の西洋版でしょうか?
個人的にやってほしいのは、てんコミ38巻の『冒険ゲームブック』の大長編化映画なんですよね TRPGやゲームブック好きには熱い展開のあの話、色んなゲームブックをプレイしたり、ゲームブック会社の陰謀とかにシフトしてもいいし、中世の叙事詩をめぐる歴史ミステリの方向で掘り下げても面白そうです

ところで、自分は普段、放送されているドラえもんのアニメは鑑賞しておらず、声優さんが交代したあたりのタイミングから、ほとんどドラえもんのアニメには触れてませんでした
どうしてかと言うと、漫画の『ドラえもん』ってご存知の方もいらっしゃると思いますが、現在の社会規範やモラルに照らし合わせると、だいぶ問題のあるシーンや表現ってたくさんあったんですよね、特に巻数の若い方だとその傾向が顕著です
ジャイアンとスネ夫ののび太への酷い嫌がらせや暴力
しずかちゃんの風呂や着替えを覗くシーン
容貌や成績、貧富の差による差別のシーン
飼育する動物を虐待する人物が登場したり、『すて犬だんご』という遺棄した動物が家に帰って来ないようにするひみつ道具なんかもありました
それはもちろん、そうした悪事を肯定するストーリーだった訳ではありません 子どもたちのための漫画を描きつづけられていた藤子先生がそんな作品にするわけがない
でも、そういう表現がまだギャグ漫画の誇張として用いられても許される社会だったのです
でも現在はとうてい無理ですね
それはよく分かってるんですが、でも『ドラえもん』ってそういう表現も含まれていた、ある意味どぎつくて露悪的な側面がある、そこも魅力だと考えます
それが無くなっていった『ドラえもん』のアニメに、言い知れないモヤモヤを感じていたというか…
臭いものに蓋をされたようなドラえもんって納得がいかない、と反発しつつ、でも昔のドラえもんのネタには無理なものもあるから仕方ない、とモヤモヤしたまま観なくなっていったように思います

しかし、久しぶりにドラえもんをたっぷり観ていて、思い付いたのですが、
ドラえもんは、のび太の未来を良くするために、22世紀からやってきました
『ドラえもん』の連載が始まった当時のドラえもんたちの未来は、のび太の時代の影響を受けた未来なので、人への暴力や差別、嫌がらせなどへのモラルが低いし『すて犬だんご』などのひみつ道具も生まれていました
しかし、ドラえもんがのび太たちと暮らしたり、冒険したり、様々な体験を経たりし、のび太たちも変わっていって、それと共に未来も少しずつ少しずつ変化していって
かつて暴力を振るうことにためらいがなかったジャイアンは、言動こそ乱暴だけどむやみに人を殴ったりしなくなり
のび太はそれこそ、学校の授業でパーソナルスペースや性的同意などの授業を受けたのかもしれません
『ドラえもん』は藤子・F・不二雄さんの原作の漫画を機転として、さまざまな物語、さまざまな世界が時代と共に創られてきました
未来はちょっとしたことで変化していく、それはまさにドラえもんが言っていたことで、昔も今もこれからも、ドラえもんの物語が続いてゆくからこその変化であって、臭いものに蓋をした訳ではない
そういう時代を経て、より良い未来にドラえもんの世界が変化したんだ、より良いミライをドラえもんたちは選びとれてるんだと考えるようになったのです

以前、源氏物語を現代の視点から見直すことで、源氏物語が書かれた時代から見て遥かな、1000年後の未来に生きる我々が、作品に寄り添えるように読み解ける解説本
山崎ナオコーラさんの『ミライの源氏物語』という本を読んだのですが、その影響でこう考えられるようになったのだと思います
だから『ドラえもん』が1000年先にも、読まれていて欲しい、アニメ(1000年後にアニメってあるのか分かりませんが!)も作られてて欲しいなとも思うのです

ところで、昔のドラえもん映画って同時上映の短編もあったと思うんですが、そういうのもまたやって欲しい
今回の映画も、本編でボタ子さんとかムス子さんとかチラッと出てたから、ピックアップした回とか作って欲しいな
(ボタ子さんやムス子さん、分かりますか? 漫画だと一回ずつくらい出てきてた、印象的なゲストの女の子です 個人的な推しです)
この時期的に、ひなまつりネタとかどうでしょうか?

ドラミちゃんが未来の雛人形ロボットを持って来てくれて、それを愛でるひなまつりパーティを開催しようということになり、のび太のママの玉子さんが率先して、しずか、ジャイ子、ガン子(という子もいます)、ボタ子、ムス子と声をかけて回ってひなまつりパーティをすることになります
そこに女の子として混ざりたいなあと『もしもボックス』で、「もしものび子だったら」をやって混ざるのび太なんです
色々あってパーティを楽しみますが、片付けをしてる最中に服が汚れて「お風呂入っちゃいなさい」って言われて、しずかちゃんとお風呂にあわや入ることになるけど、「一緒にお風呂はダメだよ!」って、のび子(のび太)が自発的に踏みとどまる短編とか欲しいです
そう、しずかちゃんのお風呂を覗きたがるのび太じゃなくて、こういうのはダメだよ! って変化するのび太が観たいんです オチにもなるし 

あと余談ですが、三石琴乃さんの玉子ママの声が、以前の声優さんの声音を踏襲しつつ三石さんの個性が輝く名演なので出番もっと欲しいなーとか思ったりしてます

来年のドラえもんも、必ず観に行きます!

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