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ロマサガのクローディアの両親について

スーパーファミコンの傑作にして問題作RPG
『ロマンシング・サガ』通称ロマサガは
8人の個性的なメンバーからひとり、主人公を選ぶシステムになっています
主人公を選ぶとその両親の職業は何だったのかを決める事で能力や特性が決まるのですが
各キャラクターにはデフォルトの両親職業が決まっており、その職業を見ることで、ストーリー中に生い立ちを何となく感じることもできます
システムや世界観が雑だったり繊細だったりする、そんなロマサガが大好きです

こちらの記事で取り上げるのは、
主人公候補のひとり、森の番人のクローディアです
彼女は父親が詩人、母親が女戦士、となっています

画面は3DSを撮影してます

(ここから、本編中のクローディアのストーリーのネタを割る話をしています 『ロマンシング・サガ』『ロマンシングサガ・ミンストレルソング』のネタバレは受けたくない方は、閲覧をお控えください)

クローディアの父親は作中に登場しており、その身元も特定されていますが
母親については名前も姿も登場せず、既に故人であることだけが判明しています
母親についてのエピソードが聞けるのは、ゲーム中の特定のイベント【オウルの呼び声】の中の、長い回想シーンだけです
以下【オウルの呼び声】のイベント内テキストを書き起こしたものです

クローディア「オウル!」
オウル「やっとかえってきおったか クローディア
わしはもう死ぬ
おまえの やくにたつかどうかは しらんが
さいごに むかしばなしをしてやろう
ある国に ひとりのあかんぼうがうまれた
そのこは 国のあとつぎじゃった
それゆえに命をねらわれた……」

(回想シーン バファル帝国の王宮内の一室)

女官「ああ どうやって皇女さまをおまもりすればよいのか……こんばんにも あんさつしゃどもが このへやにしのびいってくるかも…おきさきさまが生きていらっしゃれば どんなにか こころづよかったことか
なにも知らずに ねむっていらっしゃる…
おきさきさまにたくされた この皇女さま
私がなんとしても まもりぬかねば!
やはり…あのほうほうしか……
森の魔女よ! 森の魔女よ!
私のところへ きておくれ
ネコのといきを きくみみで
私のこえが きこえたら
よるのカラスを みつけるまなこで
私のすがたが みえたなら
こずえをわたる 風よりはやく
私のところへ きておくれ
森の魔女よ 森の魔女よ!
私のところへ………」

(皇女のベッドのそばに老婆が現れる)

オウル「もうきとるよ!
なにを おどろいとる
じふんでよんどいて!
このこの命を
まもってやればいいんじゃな?」

女官「ど、どうしてそれを?」

オウル「あんたのうたは ひとつぬけとるのよ
みにくくまがったそのはなで
私のねがいをかぎとったらってね ヘッヘッヘッ!
じゃあ この子は あずかっていくよ」

女官「皇女さまをつれていくきですか!」

オウル「ねがいをいうのは あんたのかってじゃが
どうやってかなえてやるかは わしのかってじゃ!
だいいち 命をまもるにはそれしかないわ」

女官「そんな! それでは皇帝陛下が…」

オウル「やつらは まよなかにやってくるよ
みえるようじゃな この子のからだに
剣がつきささって……」

女官「わかりました! どうか、どうか、皇女さまをよろしくおねがいいたします
ああ まって!」

オウル「まだ なにかあるのかい?」

女官「この指輪を! 皇女のしるしです
それから このかたのおなまえは
クローディアさまです」

オウル「そんなもの ないほうが
この子のためじゃとおもうがの
では もういくぞ!」

女官「あぁ クローディアさま………」

暗殺者「おい! 皇女はどうした!」

女官「いってしまわれた…皇女さまはいってしまわれた……」

暗殺者「くそっ」

女官「ああ クローディアさま……」

(回想もどる)

オウル「このさきなにかあったら あの大きな木にきけ!
しゃべりすぎたわ…」

クローディア「………オウル………
シルベン! ブラウ!
………そう……私たち おわかれなのね……
もう私は この森にいては いけないのね…」

(シルベンとブラウと森のなかまが、クローディアにかけよる)

クローディア「シルベン! ブラウ!
…………みんな………ありがとう………
さようなら!」

このイベントは、クローディアを主人公に選択した際にしか見ることができない、なかなかのレアイベントなのですが、そんな限定的な条件があるにも関わらず、しっかりたっぷりとセリフテキストが練られていて、個人的に大好きな内容です
普段のロマサガは、そこら辺の町の人とか兵士のセリフがまあまあの雑さがあるのに【オウルの呼び声】だけどうしたんだよ、と凄くニヤニヤしてしまいます

かえれ!

話をクローディアに戻しますが
クローディアの父親は、現バファル皇帝
母親の(おきさきさま)は既に亡くなっており、

「おきさきさまが生きていらっしゃれば どんなにか こころづよかったことか」

と、たったひとりの侍女が話しており
職業は【女戦士】だった

これは個人的な想像なのですが、クローディアの母親は
貴族の出身だがそれほど身分は高くなく、皇帝の近衛兵であったところを、現バファル皇帝が見初めて身分の低さも省みずに帝妃とした
しかし現皇帝の世継ぎの座を狙う一派に妃は謀殺されてしまった…
というのが真相ではないかと考えています

『ロマンシング・サガ ミンストレルソング』のスピンオフ小説『皇帝の華』の作中などにも、バファル皇帝の身辺を警護する女性だけの部隊があると記述がありますので、現代のバファル帝国にも変わらずその伝統があるのだろうと推測できます
何より面白いのが、クローディアの父親の現バファル皇帝のフェル6世の職業が【詩人】だって事なんですよね!
皇帝なのに、詩人……

きっと自分の身近にいてくれて、何度となく命を救ってくれた近衛兵の女性をどうしようもなく好きになってしまって
妃は彼女しか考えられない! と結婚したけれど
元々彼は文人肌で、政治的な感覚に乏しくて、陰謀からも権力闘争からも、妻と娘を守ることが出来なかった…何故なら【詩人】だから…

そしてたったひとりの娘のクローディアは、迷いの森にさらわれるように匿われ、魔女に育てられた

バファル帝国の周辺地図

クローディアはずっと森の番人として暮らしてきたのに、ひょんなことから森の外、バファル皇帝首都のメルビルを訪れて様々な事件に遭遇するところから、彼女のロマサガの中の冒険は始まります
そして森の友たる動物たちとも、別れなければいけない…そう考えてみると、クローディアはまさに流転の皇女で、たくさんの悲しみを背負っているのだと、ゲームをしていて泣けてしまいます

 貴女が運命の軛から逃れ、その生をまっとうすることを祈ります

これは彼女が、ゲーム中でとある人物から告げられる言葉を抜粋したセリフです
ストーリーの果てに、クローディアは森に帰ってゆけたのか、それとも生まれた場所の皇女という立場に戻るのか…
それはエンディングでもはっきりとは書かれません
ここまで練り込まれた設定があるにも関わらず、その後どうしたのかは、プレイヤーひとりひとりが決めてよい、という作りにしてくれているのだと思います
ロマサガのそういう、設定が背景にこれでもかとあるのに、プレイヤーに見せる部分はごく一部で、その叙事詩をどう紡ぐのかはプレイヤー次第なのだ、という姿勢が実に大好きです

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