子育てエッセイ : 子育てをしていて自分は歳をとったと感じた瞬間 大学生になった長女

人間はいろんなところで歳をとったと感じるものだと思う。
それは体力的なことでもあり精神的なことでもあると思う。

僕は現在61歳だが、30代までは自分の歳などというものは気にしたこともなかった。
20代の気持ちのままでいた。
そんな30代の終わりに近づいた頃のことだ。

長女が東京の大学に合格し、東京のアパートで独り暮らしを始めた。
僕も奥さんも、独り暮らしに対して全然心配していなかったわけではない、多少心配はあった。
だがそれ以上に、高校を卒業したら1人で生活をしていく、自分の知らない街に住んでみる、ということの方が大切だと考えていた。
僕の奥さんは週に3回位、長女と電話で話しをしていた。

長女が大学に入学して初めての夏休み、長女は上京してから初めて帰省した。
奥さんの都合が合わなくて、僕が長女を駅まで迎えに行った。
特急列車が到着し改札口前の少し広いスペースで
長女を待っていた。
帰省客が何人も改札口から出て来て長女の姿を見つけられないでいた。
すると、お父さん、と言う長女の声が聞こえた。
振り返り長女を見て僕は驚いた。
そこにいたのは女の子ではなく、1人の女性だった
髪型を変え、メイクもして、流行りの服も着ていた
僕は戸惑いを隠せないでいた。
長女の、お土産に大学の近くのお店の美味しいチョコレート買って来たよ。お父さん、チョコ好きでしょ。と言う声で漸く僕は言葉が出た、ありがとうと

家に着くと、奥さんと次女が出て来て長女の荷物を持った。そして、3人で話しを始めた。
僕は洗面所に行き、自分の姿を鏡に映した。
自分も歳をとった、と思った。
僕は奥さんと娘たちが楽しそうに話しをしているのを聞きながら、長女がお土産に買って来てくれた
チョコレートを食べながら、奥さんが淹れてくれた
珈琲を飲んでいた。






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