子育てエッセイ : 長女の結婚披露宴で失恋したような気持ちになった

今年の9月、長女が結婚した。
次女も来春結婚する。

長女は彼と婚姻届を出した後、ふたりで記念撮影をした。
そして後日、結婚披露宴を東京の老舗のフランス料理のレストランで行なった。
両家の家族と親しい友人たちのみの披露宴だった。
レストランの前で全員で写真撮影した後、レストランの席についた。

レストランのテーブルにはふたりで作った思い出の
アルバムが置いてあった。
ふたりの子どもの頃からふたりが出逢った大学時代
そして、この結婚披露宴に至るまでが写真と一緒に綴られていた。
僕は奥さんとそのアルバムを見ながら、長女にも
こんな時代があったんだね、と懐かしい気持ちで話しをしていた。
長女の親友も遠くから駆けつけてくれていた。

結婚披露宴が始まった。写真撮影の時とは違うウエディングドレス姿の長女がパートナーと腕を組んで
入場した。全員で拍手をして迎えた。
新郎の挨拶の後、シャンパンで乾杯した。
どれも美味しいフランス料理だった。

ウエディングケーキ入刀は長女の手作りのケーキで
行われた。その後そのケーキをカットしシェフが皿にのせ、フルーツやアイスクリーム等を添えて素敵なデザートにしてくれた。

僕は感動していたが、大感動でもなければ感極まる
こともなかった。穏やかで静かな感動とともに少し悲しくて寂しい不思議な気持ちのままでいた。その感情を自分で何と表現したらいいか分からなかった

最後に新郎新婦から花束とプレゼントを受け取った。そして、最初に新婦の父親の挨拶になった。
僕はスピーチの途中で涙が出て来て言葉に詰まってしまった。
新郎の父親の挨拶が終わり、新郎からの挨拶で長女の結婚披露宴は終了した。

新郎のご両親とご家族の方々と挨拶した後、僕は奥さんと駅に向い、特急あずさに乗って家に向かった
あずさの車窓から過ぎ去って行く東京の街を見ていた。大学時代、帰省するたびに見ていた景色だった
あずさが八王子駅に到着するというアナウンスがあった時、僕は結婚披露宴で感じていた自分の気持ちが分かった。
それは学生時代にも経験し社会人になってからも経験した、失恋した時の気持ちに似ていた。

八王子駅を出発すると車内販売が来た。奥さんは
珈琲を買った。僕も珈琲にしようと思ったが生ビールにした。
飲みたい気分だった。
奥さんは少し悲しい気持ちで生ビールを飲んでいる僕を優しく見守ってくれていた。

今、食後の珈琲を飲みながら、その時のことを思い出した。






この記事が参加している募集

私のコーヒー時間

結婚式の思い出

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?