エッセイ : クリスマスイブの料理が七面鳥になった背景 フィンランドの雷鳥料理

フィンランドと言えば直ぐに思い浮かべるのが
サンタクロース村のサンタクロースとトーベヤンソン原作のムーミンだ。

1995年、僕は出張でフィンランドに行った。
北欧は寒いというイメージがあるがヘルシンキの様な南部の都市はメキシコ暖流の影響で冬でもマイナス10℃位行かない。
僕が住む長野県の冬よりも暖かい。
ところが北に向かうに従い寒くなりマイナス30℃以上になる。

ヘルシンキにある支社の仕事を終えるとディナーに連れて行ってもらった、そしてフィンランドの郷土料理をご馳走になった。
柔らかくて、あっさり味の美味しい肉だと思った。だが、牛肉ではなかった。豚肉でもないと思った。
何の肉か聞くと、ヒントはサンタクロースだと言われた。
トナカイの肉のステーキだった。

どうしてトナカイの肉を食べるようになったのか、
聞くと。
フィンランドは北部では極端に寒いため、南の地域でしか牛を飼うことが出来ない。冬になると牛が凍死してしまうからだ。
当然極寒の地でも生きている動物の肉を食べることになった。
また、トナカイは繁殖力が強く、定期的に間引かないと農作物等に被害が出てしまう。
だから、トナカイの肉を食べるようになったとのことだった。
日本にもジビエ料理があるが、トナカイは食べやすい肉だと思う。

翌日、お客様との打ち合わせの後、フィンランド支社の人が違う郷土料理をご馳走してくれた。
鳥肉をグリルしたものだが、鶏肉ではなかった。
ワイルドな味だが美味しいと思った。
何の鳥の肉か聞くと雷鳥だと言った。 
雷鳥と言えば、特別天然記念物で僕が住む長野県では県鳥だ。
僕はビックリして、こんな貴重な鳥を食べていいのか、と聞くと、こんな何処にでもいる鳥をなぜ食べてはいけないんだという答えが帰って来た。
フィンランドでは雷鳥は沢山いて、食べても問題がないとのことだった。

その時、面白いことを教えてもらった。
クリスマスイブの料理は最初は雷鳥料理だった。
ところが雷鳥の肉は値段が高く、家族の多い人には負担になってしまった。
そこで安価で沢山肉が食べられる七面鳥に変わったということだった。
僕は、クリスマスイブに七面鳥を食べるのは何か意味があるのだと思っていたが、意外な理由だった。

七面鳥は少しあっさりしすぎてる味だ。雷鳥の方が美味しいと思う。
僕たち日本人には、普通のローストチキンが1番合っているような気がする。


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