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網走番外地(1965)

網走番外地(1965、東映、93分)
●脚本・監督:石井輝男
●出演:高倉健、南原宏治、待田京介、嵐寛寿郎、安部徹、宗方奈美、田中邦衛、風見章子、沢彰謙、杉義一、潮健児、関山耕司、ジョージ吉村、菅沼正、志摩栄、丹波哲郎

季節感無視の投稿。石井輝男監督の『網走番外地』である。

少しずつこのシリーズの鑑賞も進めていきたい。

白と黒の鮮烈なコントラスト。

吹きすさぶ雪風と無間に続くかのような真っ白な荒野、そこに点在する家、岩、船、灯台といった黒い影は全て、「在る」ということを示すだけの同質のシンボルとして画面内に配置されている。

見返してみると始めの東映△マークもまるでオホーツク海の荒波だとでも言うかのように、今作のタイトルバックで描かれる最果ての網走の風景への導入として利用しているようで上手い。

物語は網走刑務所に連行された囚人たちの人間模様や厳しい服役の日々の中、高倉健演じる橘の回想を入れながら、権田の計画した脱走劇へと突入していく。

ちょっとした殴り合いでも深い雪の中でのシーンとなるとやはり絵力、映像そのものが持つ力は半端ない。

トロッコでの追跡劇、電車のレールで手錠を切るシーンなどの見所はあるが、ある意味雪の中という限定された舞台設定のため縦横無尽なアクションというものはない。

さらに刑務所ということでヒロインや色っぽいシーンどころか女性の出演者はほぼいない。

冷静に考えて本当によくこんな映画撮れたなというのが素直な感想。

「おっかさん…」

ギリギリの生死の境で権田の中にポツンと残ったのは母への追慕の思い。

それは橘にとっても自由を求める理由としては同じ思いであり、むしろ“瞼の母”は映画全編を通したテーマだ。

脱獄アクション映画の形をとった、最果ての地で母を思う映画である。

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