すべてが狂ってる(1960)
すべてが狂ってる(1960、日活、72分)
●監督:鈴木清順
●出演:川地民夫、祢津良子、吉永小百合、中川姿子、芦田伸介、奈良岡朋子、初井言栄、宮城千賀子、穂積隆信、上野山功一、柳瀬志郎、林茂朗、時照明、山本勝、沢井杏介、石丘伸吾、守屋徹、菊田一郎、坂下文夫、藤井昭雄、大須賀更生、古田祥、高田栄子、福田文子、水野祚子、仙頭哲、森原武範、大庭隆、秋山忠央、坂本九、ダニー飯田とパラダイスキング
戦争映画『最後の突撃』の映像をタイトルバックに、映画館の外の風景から本作は始まる。
主人公次郎や宮本、その他仲間の女の子たちがワラワラと集まっている街の風景をまさにストリート撮影って感じでカメラはウロウロと動き回る。
歩道で悦子が敏美に妊娠を告げるシーンもかなり遠くから撮影していてゲリラ撮影っぽいような雰囲気。
周りもエキストラじゃなく本当の通行人っぽいような感じがして、確かにこの辺りはヌーヴェルヴァーグっぽい。
戦争未亡人である次郎の母には南原という男がおり、10年もの間彼によって経済的援助を受けている。
そんな関係にいら立ちを隠さない次郎に「大人になればわかるわよ」と告げるが、まあ高校生の男なんて甘ったれのガキなんだから仕方ないよなと思う。
街を歩いてもあらゆるものにいら立っている次郎。
八つ当たりとヤケクソで車を盗んでぶっ飛ばしてもスクーターにぶつけてチンピラにボコられる。
100%自業自得、さらに代わりに許しを懇願してくれた敏美のおかげで許される。情けない。
そういえば途中で不貞腐れたのか何なのか一人で後楽園でブラついていて、友人の久保に出くわす。
久保も母子家庭だが進学ではなく自動車会社への就職の道を選び、そこの同僚であり会社重役(南原もそこに勤務)の息子・布目の妹(吉永小百合)とデートしていたのだったが、なぜ次郎は一人で後楽園にいたのだろうか?
次郎と芸者を母に持つ久保が語り合うシーンはいいと思うのだが、次郎が遊園地に行って歪んだ鏡見て喜んだり、回転ブランコみたいな乗り物に一人で乗ってはしゃいだりというのが奇妙というか謎。
次郎が車を盗むシーンが何度かあるが、最後のは南原が絶対追いつかないだろうという位置から「おーい次郎君!」と叫んだ次のカットで後部座席にいつの間にか南原が座っているという奇妙なシーンがある。
ちなみに清順映画で唯一吉永小百合が出演しているのが今作とのことだが、映るのはわずか2シーンで本筋には全く関係がなく、いなくても支障のない役どころで出演時間も数十秒ほど。だがやはりかわいい。
敏美役の祢津良子も現代的な溌剌とした感じの美女で、どことなくアナウンサーの赤江珠緒に似ている。
悦子役の中川姿子もあまり詳しい情報はわからなかったが、ぱっと見ルックスは現代的で、松下奈緒に見える時がある。
映画全体に言えるが当時の若者のファッションや流行をしっかり映している。
ラストはなんとも救いようのない終わり方だった。
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