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東京騎士隊(1961)

東京騎士隊(1961、日活、81分)
●監督:鈴木清順
●出演:和田浩治、禰津良子、清水まゆみ、小沢昭一、金子信雄、南田洋子、近藤宏、かまやつひろし、細川ちか子、ジョージ・ルイカー、嵯峨善兵、杉山元、亀山靖博、東恵美子

映画というのは虚構である。

虚構というのは作り話のことである。

だからどんな荒唐無稽なありえない話でもいいのだ。

しかし虚構にもそれなりのお約束があり無意識的に作り手はその不文律を守ることで作品は完成され、観客が安心して見られるラインを保てている。

それを文学の世界で逆手に取ったのが筒井康隆の『虚人たち』だった。

色々な実験が仕掛けられた作品だったが、絶対にありえない“妻と娘を同時に別々の犯人によって誘拐される”という事件設定がされていた。

この映画のキャラクター設定もそれに近い、作り物なんだから何でもいいんでしょってな感じの開き直りを感じる。


この映画の主人公、松原孝次は高校生。

アメリカのハイスクールに通っていたが父の事故死により急遽日本に戻り、土建会社松原組を継ぐことになった場面がアバン、タイトルバックにロールスロイスを運転する孝次の姿。

もうのっけから「そういう映画です」と言い放っているようなもんだ。その他の孝次のスペックを挙げてみよう。

・ラグビー、フェンシング、ボクシングの腕前は一流。
・ピアノの腕前も一流(ジャズメッセンジャーズに師事を仰いだ本格派)。
・酒が強い(全く酔いつぶれない)。
・ケンカがめちゃくちゃ強い(銃を持った大人5人相手にも余裕で勝つ)。
・ポーカーのスキルも一流(相手のイカサマを見破った上でロイヤルストレートフラッシュを決めるくらい強い)。
・盗聴器を作成することができる。
・日本舞踊(能?)も踊れる(悪役とのアクション場面ではマントに般若の面、フェンシングの剣で戦う)。

うん。007かな?

現実のようでいてまったくもって現実感というものがないという意味では、清順映画的と言えるかもしれない。

昔の日活映画は基本清順監督作品くらいしか見ていないので初めて知ったけど、今作のヒロイン百合子役の清水まゆみはめちゃくちゃかわいかった。

ただ声が昭和声というか…若干オバサン声なのが気にかかるところだが、ルックスは現代でも通じるくらい美人。

誰かに似ているような…国仲涼子的な雰囲気があるかな?

他にもべらんめえ口調のアメリカ人の音楽教師とか(校長先生相手に「なんだとババア!」)、変な声の女学生(浅田飴を渡される)とか、オカマ風の男子、などコメディリリーフが主人公とはあまり絡まず、ストーリーの隙間で遊んでる感じが面白い。

当のストーリーの方は、父親の死に事件性があると不審を持った孝次に「崖の上で拾った」とシャツのカフスを妹的ポジションの順子(禰津良子)が渡すところから動いていくが、なぜ順子がそんな崖に行ったのかは謎。

ラストは百合子に対してはあまりにかわいそうな終わり方だったが、画面の端でわちゃついていたギャグ担当の面々がここで生きてくるのがいい。

映像的にも疑惑の念を抱く孝次のショットをクエスチョンマークのワイプ処理とか、クラブの歌手の歌唱シーンの背後、赤いカーテンが炎のように揺れているところとかが面白い。

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