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ミロのビーナスと薬師寺の日光・月光像

     美しさは、東・西どこも変わらない

「ミロのビーナス」の横に、奈良の「薬師寺の日光・月光菩薩」を並べてみると、どんな感じを受けるだろうか?
ヘレニズムの「美の象徴」として高い評価を得ている「ミロのビーナス」は、ミロ島で発見されたものですが、今は、フランスの「ルーブル美術館」にあります。1964年4~6月に、日本の、国立西洋美術館などで紹介されたことがあるので、観た人も多いでしょう。

奈良の薬師寺にある「日光・月光菩薩像」は、信仰の対象ですから、美術品として観賞するのは不謹慎だと思います。が、
奈良時代の天平文化のレベルの高さを、今に伝えてくれています。
この像を、ルーブル美術館で「ビーナス像」と並べて展示したらどうだろうか・・・楽しくなりますね。

素晴らしい東・西の美術品として、大きな反響を得ると確信します。
薬師寺の日光・月光菩薩像のモデルは、たぶん女性だと思います。
本来、仏の像に性別がないのですが
腰のくねり・腹位は女性の肉体美の表現で、妖艶です。

ミロ島で発見されたビーナス像は、
ヘレニズム時代のものですが、ギリシャ美術のレベルの高さをしめしていますが、
こちらも、むかし「信仰の対象」にされた時代があったはずです。
神殿の中にあったのですから、美術品として造られたものではないです。

<チョット寄り道> スポンサーは「宗教的団体」「王侯・貴族」「企業」

芸術は、スポンサーがあって成立するものです。現代と違います。
古代ギリシャのパルティノンを造ったフェィディアスに、潤沢な資金を提供したのはペリクレスです。
ミケランジェロの強力スポンサーはロレンツオ・デ・メディチでした。
支援者は、国王・貴族・ブルジョワと変わりましたが
最近では「企業」が多いです。
現在の世界中の多くの美術館はブルジョワがつくりました。
絵画は資産です。が、管理が大変です。
そこで、公共に寄付するケースが多いです。
売れ筋の絵画や版画は「工房」で大量に製作・販売したのです。
画家より画商の活動分野です。

          日本彫刻の美しさは一流です
宇治川に沿って、土手を少し入ると平等院があります。
木陰のベンチに座ってみる風景は、まさに「極楽浄土」を模しているという表現にピッタリです。

この中に鎮座する「阿弥陀如来像」は、平安末期~鎌倉初期の仏師「朝」の作品です。モデルは平安貴族の一人でしょう。
繊細で、スマートで、表情仕草が優雅ですが、ディテールが力強いです。

中國・朝鮮の影響を受けた奈良の仏像から脱して、
平安時代の洗練された純日本式(和式)の伝統文化を象徴しています。
ふっくらとした頬、引き締まった腰の括れ、のびやかな足は現代のアスリートのようです。
この仏像の制作にかかわった仏師たちが、全国に散っていきましたから、
寄木作りの「定朝様式」という日本独自の彫刻の形ができたのです。  

運慶・快慶の作品は、古代ギリシャやロダンの彫刻に劣らない

運慶・快慶の仏像彫刻は「宗教性を省いて」みれば、
ヨーロッパの「彫刻」の中に飾っても、見劣りしないどころか、勝っていると確信します。
それまでの「定朝様式」の仏像のつくり方を根本から変えて、全く新しい像をつくる。その革新的な「発想」は、どこから来たのでしょうか?

仏師とは、仏像を専門に作る彫刻師のことを指します。
運慶と快慶は、国宝に指定されている「東大寺」(奈良県奈良市)南大門の「金剛力士像」(こんごうりきしぞう:仁王像[におうぞう]とも)など著名な仏像を手がけました。「工房」で造るのです。

興福寺にある「無着」像・「世親」像は、誰もが知っている傑作です。
運慶の指導の下で、仏師の運助が「無着」を運賀が「世親」を造ったと言われますが、このリアリティのある表現力は、ギリシャ彫刻に劣るものではありません。

大理石と木材の違いから、くるものは異なりますが、石から、木から像を「掘りだす」ということでは同じです。
完成した「作品」から受ける印象は、質感・量感共に強烈です。

ロダンの彫刻に見られる存在感は、こうした伝統的な技術の上に成立しているものですが、静岡県立美術館の「ロダン館」の作品は圧倒的ですね。
私には、彫像をアップする技術がないので、作品を比較して表示することができないのが残念です。このブログを機会に、画像を確認していただければ幸いです。比較文化は、どのような場面でも楽しいです。

 <チョット寄り道> 日本の古典文化への理解を深める

①歴史教育で楽しいのは「文化史」です。
素材を比較すると、地域の個性がわかりますし、地域間の交流を知ることができます。デジタル端末機の時代になって「比較」が簡単にできるようになったことが幸いですね

 ②日本の代表的な仏像彫刻です。次の6つは日本を代表するものです。
どこにあるか。誰の作か。考えるのも楽しいですね。 
(  )の中に、ヒントから適切なものを選択し、年代別に入れて下さい。

百済観音(    )  弥勒菩薩(    )  広隆寺(   )
運慶  (    )  飛鳥大仏(    )  阿修羅像(   )
<ヒント>
①興福寺   ②飛鳥寺   ③無著・世親像    ④中宮寺半跏思惟像  
⑤弥勒菩薩半跏思惟像  ⑥法隆寺

         何を美しいというのか?

人間の感性」は、ヒトそれぞれで異なるものだから
近世・現代において「絶対的な美」をさすものを探すのは、非常に難しいと思います。特に、現代美術・彫刻は「作り手の主観」が中心にあり、デザイナーの主張が優先されるから、普遍性・妥当性も評価の基準にならないことが多いですね。

といっても、「ミロのビーナス」の均整がとれた美しさや、「日光・月光菩薩像」の凛とした佇まいの美しさを否定する人はいないと思います。
私は「美に迷ったら、美しいと感じる原点の戻るといい」といっていますが、これは、いつでも変わらないだろうと思います。

近いうちに、奈良に行って、薬師寺を散策しようと思います。


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