【短編小説】長生きする方法

バーで働いている。
目の前の男から相談を受けた。
「長生きするためにはどうしたらいいかな…」と。
聞くと、親として息子には色々な選択肢を持たせてあげたいそうだ。
昔から不老不死の夢を見る人はいるし、長生きする方法も伝えてあげたいという。

「もちろん、運動、睡眠、食事が大切なことは知っている。だが、この社会ではそれを確保することはなかなか難しい…。私も手本を見せられない…。何か簡単で確実な方法はないのだろうか?」
男は手元のグラスを見つめながら続けた。

僕は最も確実な方法を伝えた。
「去勢するといいですよ。息子さんが少年と呼ばれる年頃にやると最も効果的です。中国の宦官は長生きでした」と。

男は僕を蔑んだ目で見ると、何も言わずにマスターの方へ行き、会話と支払いを済ませて出て行った。

僕はマスターから注意された。
「正しいことだけでなくて、人の気持ちを考えて伝えてくれないと…」

「あなたの悩みに最適な答えを出します」というコンセプトで作られたロボットの僕には、合理的に行動しない人間の心理はわからない。
これは難しい問題だ…。

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