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映画「夜明けのすべて」と私〜PMSとコロナ後遺症〜

※映画の話もしていますが、私自身の話が多めです。PMSとコロナ後遺症のことに触れています。


今、映画「夜明けのすべて」を映画館で観てきた。
5回目の鑑賞にしてやっと、頓服を服用せずに観ることができた。
ずっと自分自身のためにも書きたいなぁと思っていたことをこの勢いで書いてみる。

映画「夜明けのすべて」は、PMS(月経前症候群)による苛立ちやめまいなどに悩む藤沢さんと、パニック障害を患う山添くんのお話。2人は同僚なのだが、少しずつ相手を知り関わりを深めていくなかで友達でも恋人でもない特別な関係になっていく。

私はこの話が映画化されると聞き、まず原作を手に取った。内容としてもとても興味深かったし、私が大好きな上白石萌音さんが主演ということで、少しでも理解を深めたいと思った。

けれども購入してからしばらくはなかなか読むことができなかった。それは怖かったから。自分自身の過去を思い出してしまいそうで躊躇ってしまっていた。藤沢さんとも山添くんともリンクしてしまいそうで。

PMSの話

私には退職した経験がある。そのきっかけになったのがPMS。藤沢さんと一緒。PMSで退職した。まあ当時はPMSだとはわからなかったんだけれど。

私の場合は、生理前2週間ほど精神的に不安定になって、ひどい時は家から出られなくなる。私の存在なんて無意味だ、消えたいという感情が私を支配する。そして無気力になる。けれども生理が始まって数日後にはそんな感情は消え去り「あの時はなんであんなこと思っていたのだろう」と不思議で仕方なくなる。映画の中の藤沢さんの場合は苛立ちを抑えられなかったが、私はそれよりも鬱の症状に悩まされていた。バービーさんがいつかのあさイチで「自分の中にモンスターを飼っている感じ」って言ってたけどまさにそれ。

残念ながらそのころの私にはPMSの知識が乏しかった。仕事に行けないことが増え、自分を責め続け、心療内科にかかって鬱病と診断されて休職した。あまりに多忙な職業であったこと、責任の重い仕事だったことも自分にはかなりの負担だったから、「そうか、これでゆっくり休めるのか。毎朝職場に欠勤連絡をしなくて済むのか」ととてもホッとした。この頃は箸を持つのも重くて、歩くのもふわふわしていてしんどかった。

引っ越し等もあり結局3件の心療内科に通院したが、どこの病院でも鬱病として対応された。けれども私としては薬が効いている感覚もあまりなく、比較的元気な時もありそこまでは鬱症状もひどくはなかったため、私は演技をしているのではないか、嘘をついて誤魔化して生きている人間なのではないかという気持ちが拭えなかった。自分のことがよくわからなかった。闇の中に、迷路の中にいる感覚は今だって忘れていない。

その後仕事を辞めたことで環境が変わり、少しずつ生き生きと過ごせる時間が増えて行ったことで、減薬(離脱症状もなかなかきつかったな…)していき、通院は終了した。

もしあの時、「PMS」というものをちゃんと知っていたら、誰かが「PMSじゃない?」と声をかけてくれていたら、「夜明けのすべて」という作品に出会えていたら(まだこの時はこの世にこの作品が存在していなかったが…笑)、私の人生は違ったものになっていただろうなぁと思う。

退職してから数年して、PMSを詳しく調べる機会があり、ああこれだわと初めて納得した。生理前にイライラしたり、気分が落ち込んだりするなど、こころの不調が強く出るために日常生活に支障が出ている状態を特に「月経前不快気分障害(PMDD)」と呼ぶらしくおそらくこの症状だわ!とホッとした。もちろん環境の要因もかなりあったから、あくまでもPMSやPMDDの症状はきっかけにすぎなかったのだとは思うが。

婦人科で漢方を処方されたこともあったがイマイチ効かず、結局何年もかけて私の行き着いたところは2つ。

①自分のことをよく知り、自分の体の合図を丁寧に察知すること。
②サジーを飲むこと。

この2つによって今はPMDDの症状がかなり落ち着いている。


PMSや生理ってデリケートな話だからなかなか難しいなぁと思う。親からは、生理や生理前の症状に振り回されちゃういけないという話をされていたから私も気付かないふりをしていた気がするし、他の人とこんな話をすることも多くはなかった。だからこの「夜明けのすべて」という作品が社会にもたらすものはとても大きくて意義のあるものだと思う。萌音ちゃんがいくつかの情報番組や舞台挨拶で語ってくれた言葉もとても大きかった。自身の話をしてくれるだなんて本当に心をうたれた。

ここまでがPMSのお話。

コロナ後遺症の話

ここからはコロナ後遺症について。

昨年の夏、初めてコロナにかかった。39度の熱が数日続いたり、声が出なくなったり、体重が激減したりそれなりに大変だったが、これらの症状は予想の範囲内のことだったからそう慌てはしなかった。

困ったのは熱が下がり、自宅療養期間が終わったあとのことだ。舞台「千と千尋の神隠し」を観劇中、急に血の気がさーっとひいてきた。脈がどんどん早くなり、え、これ死んじゃう?どうしようどうしよう…抜け出すにも抜け出せなくて(ハクが死にそうなシーンだった…)とにかくじっとして、マスクをずらして息をたっぷり吸った。数分したら少し症状が落ち着いたのでなんとか最後まで観劇した。

その後も酷い倦怠感や息切れ、めまい、頻脈、吐き気など様々な症状が続いたことから、コロナ後遺症を見てくれる病院に通院するようになった。仕事も辞めるしかなかった。今は処方されている山盛りの漢方と、食事療法が中心。肉少なめ魚多め、生の野菜より火の通った野菜、乳製品・小麦粉極力やめる。こうなると外食はなかなかハードルが高い。時に妥協して食べることもあるけれど、その後体調が悪化することもしばしば…笑 でも食欲には勝てない。

ちなみに倦怠感というのは疲れてだるいとは違う。一日動くとその時はそれなりに動けるというのに、遅れて倦怠感がやってきて(次の日やさらにその次の日に)寝込んでしまう。自分の体が100キロの重さになって、布団に吸い込まれる感じ。階段を一段登るのも一苦労。風呂なんて重労働。今はそこまでの倦怠感はなくなった。血の気がひくのは何度体験しても本当に気持ち悪い感覚。慣れない。死ぬかも、無理かもって感覚になる。座っているだけ血の気がひくってどういうこっちゃ。許せん。


もう半年以上経つがなかなか厄介な病気で手強い。ありがたいことに私は寝たきりに近い状況だったのはわずかな期間で、今は無理さえしなければ寝込むこともないし、映画を観に行ったり、お買い物をしたりといったこともそれなりにはできる。ただ、よくなった!と思ってもちょっとしたこと(下に書き出してみた)ですぐ症状が出たり数ヶ月前の体調に戻ったりしてしまう。一回悪化すると戻るまでにかなり時間がかかる。今は日常生活は送れているが、以前のようには仕事も娯楽も難しい。それでもちょっとずつ、一進一退を繰り返しながら、自分を知り、どこまでならがんばれるか、どこからが体調悪化のラインなのかを見極めて、体調とうまく付き合えるようになりつつあるなぁと思う。とはいえども、早く寛解したい。やりたいことが山のようにあるんだよ〜体が資本なんだよ〜と常に思う。ちょっとの無理もできないのが難しくもどかしい。


参考までに
「ちょっとしたこと」というのは

・ちょっと寝不足(っていうかそもそも十分にとれることって少なくない?)
・ちょっと重い物もった(ドライヤーも休憩が必要)
・ピアノを弾いた(これはかなりの痛手。夢中になる前に終わらせないと次の日動けなくなる。筋肉を使わなければいいんだけどそれは無理すぎる)
・風邪ひいた
・ちょっと緊張した
・気圧の変動

みたいなこと。

映画館のような閉所もなんだか症状が出やすくて(いつでも出られるように通路側に座る)、頓服を飲んで挑んでいたが、今日はやっと頓服なしで乗り越えられた!快挙!!

今月は新幹線に乗る機会があるのが不安。以前乗った瞬間にさーっと血の気がひいて、動悸や冷や汗が止まらなくなって発車前に飛び降りたことがあった。山添くんが電車に乗れないのわかるんだよなぁ。一回乗っちゃうと逃げられないんだもの。各駅停車ならまだしも新幹線のハードルは高い。頑張りますけどね!!!

そんなこんなで、藤沢さんの気持ちも山添くんの気持ちもなんだか私にリンクしちゃって涙出ちゃいますね。何よりもプラネタリウムのシーンの言葉の数々にやられます。病気って急に良くはならない。ちょっとずつ前に進んだり戻ったりしながら、気がついた時に「あれ、最近症状あんまり出てないかも」ってふと気づくもの。「夜明けのすべて」はちっとも劇的でなくて安心する。同じ世界線で藤沢さんも山添くんも、栗田科学も存在すると思えるし、流れている空気感も静けさも暖かみもすべてが好きだった。

こうやって人はちょっとずつ進んでいくんだなぁ。変わらないものはないんだよな。自然もまわりの環境も体調も人も。そんな気持ちになれた。

今の私の状況がいつ回復するのか見通しが立たないにも関わらず、そこまで落ち込まずに嘆かずにいられるのは「夜明け」を知っているからかもしれないなぁと最近思う。かつて闇の中にいた私が少しずつ光の差す方へと歩んだ経験はこうやって未来の私に役立っているんだなぁと。人生ってこんなもんかもしれないなぁって、ちょっとだけ前よりもどんと構えられている私がいたり。

ちょっとだけ音楽のこと

余談ですが、「夜明けのすべて」の音楽が好きで、ちょっとずつ変化していくのがとても良い。前半は三拍子だったのが後半は同じメロディーで四拍子になるとか。だんだん音数を増やして動き出す感じとか。ちょっとした変化にこだわりを感じる。そもそもあの調をチョイスしたあたり。暗がりになだれ込まないで済む未来のある調。
予告では動きのある音楽を使っているのに、本編では静かな曲しか使ってないところ。見事だなぁと。
何曲か弾いてみたのでよろしければ…


ということで、いろいろ語ってスッキリしました。もしも最後まで読んでくださった方がいらっしゃったのならば心からの感謝を込めて拍手を贈りたい気持ちです。長いのに、本当に長いのに読んでくださってありがとうございました!

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