クリームパン

短歌が好きです。短歌の好きなところをたくさん話したいです。ほとんど妄想です。

クリームパン

短歌が好きです。短歌の好きなところをたくさん話したいです。ほとんど妄想です。

マガジン

  • 一首感想

    一首評というのもおこがましく、ただただ好きな短歌について話したいと思っています。

最近の記事

一首感想『サイダーの泡を残してこの夏は人魚のように消え去ってゆく』

読後の爽やかさと切なさの共存がとても印象的な歌だと思った。伊波真人さんの歌は独特の雰囲気がある。 サイダーの清涼感と、人魚から連想される海の涼しさに爽やかな夏を思い起こされる。海へ行きサイダーを飲む夏は夏の王道だと思う。泡を残してという言葉から砂浜に押し寄せた波の作った泡のようなイメージも連想される。消え去っていく様子が人魚のようだという文脈は理解した上で人魚、夏という言葉が並ぶことから夏に海を自由に泳ぎ回る人魚のイメージが思い浮かんで楽しかった夏の日々が伺える。 下の句

    • 一首感想『ライターのどこかに炎は隠されて君は何回でも見つけ出す』

      この本の前後の文脈からおそらく恋愛の歌なんだろうと思う。それも少し冷められているのか、都合良く扱われてしまっているのか。タバコを吸う彼がライターをつけるような情景が思い浮かぶ。彼がライターの火をつける仕草は手慣れていて、普段からライターを使っていることが伺える。 ライターが何の比喩なのかを考えつつ妄想する。 私の心であるならば、君は、君のどこが好きなんだろうと思うような私の冷めた心の奥に眠る君を好きな気持ちを呼び起こすのが上手なのかもしれない。君のことを少しだけ嫌になってい

      • 一首感想『星空がとてもきれいでぼくたちの残り少ない時間のボンベ』

        一目見た時、すごく青春の輝きを感じる歌だと思った。 夏に向かう季節の中で読んだからか、夏の夜の星空を想像した。この歌が含まれる連作の題が「夏へ旅立て」であることも鑑みて、ここからは夏の歌という妄想で書き連ねます。 上の句は夏の青春アニメみたいで懐かしいような切ないような気持ちになる。夏休みの旅行での最終日の夜、みんなでバーベキューしたり花火をしたりとひとしきり楽しんだあとに、地面に横並びに座って満天の星空を見上げているような感じ。 「とてもきれいで」や、ひらがな表記の「ぼ

        • 一首感想『滝と宴を同じテーブルに寄せ合ってきみが忘れてゆく夜にいる』

          夜の歌が好きだ。自分もよく夜を歌に読み込んでしまうし、人の歌に出てくる夜を想像するのが好きだ。自分の今の興味のあるテーマなのかもしれない。 滝と宴は全く異なるようで実はその特徴は綺麗に対比があることに気付かされる。 自然のもの/人工的なもの、流動的なもの/皆がその場にとどまることで成立するもの、恒久のもの/一時的なもの、と相反する要素を持っている。 同じテーブルにのせるということはその二項対立の構造から抜け出すという意味なのか、テーブルに載せたことで宴の勝利を表しているのか

        一首感想『サイダーの泡を残してこの夏は人魚のように消え去ってゆく』

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        • 一首感想
          11本

        記事

          一首感想『瓶の中でかかってて胸しめつけるシロップ漬けのカセットテープ』

          この歌を初めて読んだ時のきゅっと胸をしめつけられる感じがとても好きだと思った。 カセットテープなのでもちろん何かしらの音源を録音していて、シロップ漬けにされているということはきっとそれほど保存したいものだということだと思う。瓶の中でずっとかかっているその音源がシロップ漬けにされたことで、シロップにはその味が染み込んでいっているし、音源も甘く素敵な思い出に変化している。胸をしめつけるような思い出が溶け出したシロップを少しずつソーダで割って飲む日々も、甘く変化した音源自体を深く

          一首感想『瓶の中でかかってて胸しめつけるシロップ漬けのカセットテープ』

          短歌

          意味のない夜を灯りにする夜を正しく踊り狂おうよ 春

          本 感想

          夜明けの全てを読んだ。 PMSとパニック障害に悩み生き辛い世の中で居場所を作り懸命に生きている二人とその周りの優しい世界のお話だった。映画はまだ観ていないけれど、脳内では上白石萌音と松村北斗で映像化して読んでた。 自分はPMSではダウナーになり泣くが、キレるタイプではないし、パニック障害になったことがないので、こんな苦しいものなのか、と胸が苦しくなった。 パニック障害になってすぐ山添くんが病院で心因性の発作であると診断された時に、山添くんは今までの生活にストレスは全く感じて

          短歌

          街灯が水面に揺れる目黒川で波紋がワルツを踊ってみせる

          一首感想『ライナスの毛布になって包む夜のしんしん積もる二月のひかり』

          この歌は、冬にしか味わえない暖かさを感じることのできる素敵な歌だと思う。 まず、ライナスの毛布というと、スヌーピーに出てくるライナスから名付けられた心理学用語で、幼児期におこる特定の物に執着を見せる行動、いわゆる安心毛布のことかと思われる。ライナスの毛布になる、ということは主体は毛布になったのであり、主体がないと不安になってしまう誰かが存在する。思わずライナスの言葉に引っ張られて幼児で想像してしまったが、その行動は成人も起こし得るし、ライナスの毛布が愛情の比喩であれば恋の歌

          一首感想『ライナスの毛布になって包む夜のしんしん積もる二月のひかり』

          一首感想『ブランコの鎖に春の体温が残されていて、繋いでもいい?』

          ブランコが好きなこともあり、なんとなく雰囲気が好きだと思った。 鈴木晴香さんの短歌は、なんとなく肌感覚で好きで、そこから意味考え始めて、理解すると共感がすごいなと思うことが多い。芸術は肌馴染みが大事だと思っていて、歌は解釈ができればできるほど好きになるタイプなので、鈴木晴香の短歌がすごく好き。 『繋いでもいい?』は「」で括られた会話文じゃなくて地の文で書かれているので、おそらく主体の言葉だろうと推測できる。何を、が書かれていないので、ここからは妄想を膨らませていきます。

          一首感想『ブランコの鎖に春の体温が残されていて、繋いでもいい?』

          一首感想『あさがおが朝を選んで咲くほどの出会いと思う肩並べつつ』

          一目見て、素敵な出会いについて詠んだ歌だな、今隣にいる人に対してその絆の尊さを思えるなんて素敵だな、と思った。 「あさがおが朝を選んで咲くほどの」出会いってどのような出会いなんだろうか。「ような」ではなく「ほどの」であるということは「あさがおが朝を選んで咲く」ことは程度の比喩らしい。 主体は、肩を並べている恋人友人家族その他誰かとの縁をそれくらいの出会いだと思っている。その人との絆を大事にしている様子が伝わってくる。一体どれほどのなんだろうか?2通りの可能性を思いついたので

          一首感想『あさがおが朝を選んで咲くほどの出会いと思う肩並べつつ』

          一首感想『拾ったら手紙のようで開いたらあなたのようでもう見れません』

          この短歌を一目見た時、言葉がすっと入ってくる感覚がありつつ内容の理解が及ばなくて、なんだか混乱した。 早とちりで「手紙=あなた」とはどういうこと?と思っていたけれど、「〇〇=手紙のよう=あなたのよう」となるはず。 検索すると手紙とあなたという異質なものが同化しているという解釈や、あなたが眩しすぎて見れないという趣旨の解釈をしている人がいたりしたけれど前者は難しくてよくわからないし両者ともあんまりしっくりこなかった。 そこにはあなたのようであなたではないものがある。 恋愛の

          一首感想『拾ったら手紙のようで開いたらあなたのようでもう見れません』

          一首感想『簡単に想像していた 来年もこの番組に出ている我を』

          俵万智は素直な言葉を素直に短歌に詠むところが好き。口語でストレートな言葉を使って表現するから共感できていつも素敵だと思う。 短歌を習い始めたら、すごいこねくり回して何を言いたかったか伝わらなかったり、感情があまり乗ってないのに走り出して面白みのない短歌ばかり作ってしまって、素直な気持ちをわかりやすく伝えることの難しさを感じた。 やっぱり素直な人って1番可愛いよね。 俵万智は恋愛の歌がすごく好き。私もサラダ記念日制定したいしチョコレート革命を起こしていきたい。水蜜桃のようにも愛

          一首感想『簡単に想像していた 来年もこの番組に出ている我を』

          一首感想『病室は豆腐のような静けさで割れない窓が一つだけある』

          キリンの子の1番初めの短歌。本を開いて1つ目がこれでびっくりした。まっすぐ意味をなぞると1つだけ窓のある静かな病室のことを詠んでいるのだろうか? 豆腐のような静けさってなんだろう。絹豆腐ってパックから出すと白くてつやんと型取られているから、なんだか人工的な感じがするということ?言われてみると豆腐って病室みたいな色している。それとも無機物ということ?数ある無機物の中から豆腐を取り合わせるところが面白いなと思う。 てか豆腐ってなんか吸音材みたいな見た目してるよね。木綿豆腐とか特

          一首感想『病室は豆腐のような静けさで割れない窓が一つだけある』

          『レディは影の実力者』感想

          悪役令嬢転生モノが好きだ。 現代社会に生きる主人公が物語冒頭になんらかの形で死を迎え、現代社会ではなく異世界に生を受ける話は、異世界転生モノいうジャンルに括られる。 その異世界転生モノのなかでも、中世ヨーロッパのような世界における貴族社会を舞台とした乙女ゲームの主人公の恋のライバルに転生するのが悪役令嬢転生モノと呼ばれている。 その現実味のない世界で絶対に敗れなければならない圧倒的ライバルとなった主人公達が、自分の状況を打破し定められた運命を変えようと懸命にもがく姿がたまら

          『レディは影の実力者』感想

          『ガールクラッシュ』感想

          pixivコミックで期間限定で1巻分無料で読めるから、と『ガールクラッシュ』を読んだ。 K-popアイドルに憧れる女の子と、その子を好きな男の子のことを好きな女の子が、K-popアイドルを目指す話。1巻は2人でオーディションを受けに行き、他の受験者の圧倒的な実力に驚愕するところで終わる。 これは、女子だけに許された青春の話だ。 カッコいい女の子に憧れる気持ちや、好きな男の子に釣り合いたくて頑張る気持ちや、努力して魅力的な女の子になったのに自分が努力した部分を何も磨いていな

          『ガールクラッシュ』感想