見出し画像

もうすぐ40歳。持つべきものは、小綺麗にしている女友達?

パートをはじめて一ヶ月たった。
新しい職種は ”ちょっとお堅い小売業” といったところで、前職の美容外科とは、仕事内容もメンツの雰囲気も男女比の割合も180度ちがう。
幸い、パート先の皆々様に置かれましては、こちらが申し訳なくなるほど優しい。『何度でも同じ質問をしてくれて構いませんからね(にっこり)』というスタンスでいてくれる。ただその優しさは、美容外科出身のわたしに対して『美容外科?なんやけったいなとこから怪しいおばさんきたやんけ。』という警戒心を、必死に隠そうとしているようにも見える。
ふふふ。みんなは知らない。わたしが、毎朝この上ない緊張をほぐすために、”安住紳一郎の日曜天国” をむしゃぶりつくように聞き散らかし、一発口角をあげてから出勤していることを。すました顔でニコニコしていても、毎朝家族を押しのけて何度もトイレにかけこみ、心をザワザワさせていることを。

そんなこんなで2週間ほどたったころ。
あることに気付いた。それは、

ここは化粧を施している人がいない。 

ということ。そりゃ軽くはしているんだろうけど、ほんっとにナチュラルである。わたし自身もガチでたいした化粧はしていないはずなのに、なんだか自分が『社交ダンス大会の決勝トーナメントに出場する人』みたいに見えてしまう。エスポアの化粧下地がおりなす独特のツヤ感がそう見せるのか?
おまけに、ふと窓ガラスに写った自分の横顔をみて思ったことがある。いつも軽く38ミリのコテでざっくり髪を巻くのだが、後ろに束ねられた毛先の感じが、『新しい職場で男漁りに気合いをいれている人』に見えてきてしまった。完全にばっちり決めている人に見える。途端に自分が恥ずかしくなった。

”郷に入れば郷に従え” ということわざがある。
とりあえず、まつ毛パーマをやめようか?アイラインをひくのをやめてみようか?髪を巻くのをやめてみようか?
そもそも、小綺麗に身なりを整えようというアラフォーの気持ちは悪なのだろうか?

考えれば考えるほど、美容外科勤務のときの手間のかけっぷりが嘘のように思えてきた。当初『美意識が低い』で有名だったわたしだが、お昼にはサラダを持っていき、水を2リットルのみ、適当にボトックスをうっていた。それでも低いって、どんな概念の場所に身をおいていたのだろうか。今となっては、自分がとてつもなくケバい女に感じてきた。

このまま老けていくのだろうか。』

−−−それでもいいか。と思った。

そんなある日のこと。美容外科時代の同僚と近所で酒を飲みに行くことになった。
彼女とあうのは半年ぶり。42歳になるのに26歳くらいの見た目に見える、バツイチ美容大好き女である。喫煙者である彼女の肌は、”タバコは肌に害を及ぼす” という研究結果が一瞬で覆ってしまいそうなほど、美しい。

そんな自分より5つも年上の彼女を見て、わたしは衝撃を受けた。

己に意識を向けることにより高まっているであろう
『ゴキゲンな感じ』がわたしとは明らかに違っていた。自分のために化粧品を選び、たまに失敗をし、自分のために洋服を選び、たまに失敗をし、自分のために健康的な飯をたべ、たまに失敗をする。
それでも自分と向き合っている感じが愛らしかった。まわりなんて見えていない。だって、興味は自分と自分に関わるちょこっとのことだけ。その彼女の軸が、なんとも可愛らしかった。JUDY AND MARYのYUKIが放つ、奔放な可愛さに近いと思った。

そうね。このままじゃわたし、あんまり良くない。
肩の湿布が丸見えのまま、おビール飲んでちゃダメよね。
郷にはいればなんちゃらも、とりあえずやめた。
買ったまま放置していたハトムギのサブリも再開する。化粧もちゃんと落として寝る。子どものお菓子奪って食べるのもやめる。

あぁ、このタイミングで彼女に会えてよかった。
友の美よ、永遠に。わたしたちの友情、永遠に。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?