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ホラーゲーム気分で楽しむ『Another』

……ミサキって、知ってるか。三年三組のミサキ。それにまつわる話。
ミサキ……人の名前?
ああ、どんな字を書くのかは不明。苗字かもしれないから、女とは限らない。何々ミサキだかミサキ何々だか、そういう名前の生徒がいたんだってさ、今から二十六年前に。

「Another【上下合本版】」冒頭 綾辻行人

学校の七不思議として伝わる、奇妙な噂話をする2人の生徒。
親しみのあるこの感じ。既視感。

え、ホラーゲーム始まりました?

これが私の「Another」第一印象。
校門前で喋る生徒2人のシルエットが私の脳裏に浮かんだ。
こういう場面から入るホラゲーありますよね??
ホラーミステリ小説というジャンルに疎い私だが、この冒頭で俄然興味をそそられた。
まさか、初っ端こんな形で引き込まれることになるは!

ということで、今回は人気ホラーミステリ『Another』の感想を綴っていく。
いや、感想というよりは、"もし『Another』がホラーゲームだったら"という視点で語る。
つまりネタバレと、私の妄言を多分に含む。
(ネタバレどころか読んでない人は置いてきぼりになる。)

※現在『Another』は続編やアニメ化などのメディアミックスが展開されているが、私が履修したのは2021年kindleでリリースされた小説の【上下合本版】のみ。

なぜ"ゲーム"である必要があるのか?

なんか意識高そうな見出しだ。
まあ小説の冒頭がホラゲーっぽいという話はしたし、ミサキ・メイとの初遭遇シーン(病院のエレヴェーターで地下の霊安室に向かうところ)などめちゃくちゃドット調のゲームで脳内再生された。

それだけならこの記事はこれで終わり!となったのだが、真にゲームっぽさ(というかゲームでも映えそうだな)と感じたのは下巻の、クライマックス付近を読んでいるときだ。
一連の事件の収束のため、夜見山で行われる合宿。

これ、ルート分岐したら面白そうじゃない?

この思いつきが、本記事の発端となったのだ。

ゲームのシナリオ面でのメリット

(恐縮ながら素人が思う、)ゲームという媒体がシナリオ面で他メディアより優れているのは、ルート分岐が実現できる所だ。
プレイヤーの選択次第でルートが分岐し、物語の結末が変化する。
この"自分が選んだ物語を辿ってる感"や、"あったかもしれない結末"を味わうのが、ゲームをする楽しみの一つだと思う。

で、先程の「これ、ルート分岐したら面白そうじゃない?」発言に繋がる。
『Another』の"あったかもしれない結末"への想像が止まらなくなってしまったのだ。

ホラーゲーム『Another』の構想

私はゲームの企画書やシナリオを制作したことはないので、作法に則ったものではないことをご容赦願いたい。

ルート分岐フローチャート

適当に眺めてください。
大分端折ったが、青のチャートが小説通りの物語。
管理人奥さんの凶行から逃げた後、三神先生が<もう一人>であることをメイが榊原に伝えトドメをさすTRUE END。
その他が私が勝手に追加したルート。
大きな分岐は2つ。

  • <もう一人>が三神先生ではなく風見智彦だったif →Bルート

  • <もう一人>を榊原が自身の推理で指名する →CDEルート

Bルート 風見が<もう一人>

夜中に話をしていた榊原とメイの元に、青ざめた様子の勅使河原が入ってくる。
「なあ、風見ってやつ、知ってるか?」と彼は問う。
「は?」ぼくと鳴は顔を見合わせる。
「誰だそいつ」

これ、小説読んでるとき「もし榊原がこの返答したらゾッとするな」って思ったシーンを1ルートとして採用した。
勅使河原が風見を殺してしまって、それが正解で事態が収束するパターン。
まあ風見が<もう一人>であることに整合性が取れるようにしなければいけないが。
それまでの選択肢や自由行動で"風見が<もう一人>?"っぽい情報を収集できていたら進むルート。
ゲームなら一つのオチとして許されると思う。
あまり謎は解明されないけれど、管理人の奥さんによる凶行も発生しないので、犠牲者は少ないまま終わる。

C/D/Eルート 榊原が<もう一人>を指名

この、選ぶシーンめっちゃやりたい。
ゲームならここがハイライトになるだろう。
それには、メイの瞳の秘密を知っているとまずい。
メイには<もう一人>が誰か分かる、それを榊原が知っていたらこの状況にはならないだろう。
だから合宿に入ってすぐメイと喧嘩するなりして、情報共有できなかったパターンで発生するエンディング。
ここまでの選択肢でメイの好感度が低いと進むルート。
というより、TRUE ENDに行くのにメイの好感度をちゃんと上げなきゃいけない感じか。

ここでプレイヤーに正解を選ばせるのは結構厳しいかもしれない。
ゲーム版では三神先生に対するヒントをもうちょっと入れても良いかも。
あと赤沢さんの登場少ないから、そこら辺も追加したい。

<もう一人>の選択肢を間違えると当然BAD END。(Eルート)

Cルート 三神先生を殺す

選択肢に正解し、かつ三神先生を殺す。
ただし先生のフルネームが「三神怜子」であることはプレイヤーには明かされない。
まあGOODだけどTRUEではない感じ。

Dルート 三神先生を殺さない

<もう一人>の正体が分かっても、見過ごす。
三神先生の好感度を上げておくと選べるようになるルート。
ある種の共犯。
まあ三神先生本人は自分が<もう一人>であることを自覚していないから、厳密には共犯にならないか。
榊原は母に似た怜子さんを殺せない。
卒業まで毎月犠牲者が出るから勿論BAD ENDだし、結局怜子さんは消えちゃうんだよね。悲しい。

このルートではフルネーム最後にサラッと出そう。

よもやま話 〜Note前日譚〜

このNoteを書く前、私はとある実地調査のため本屋へと繰り出していた。
だって、この「噂話から始まるオープニング、ホラゲーっぽい!」という主張に、ホラー小説勢から「いやそれ小説でもあるあるだよ」とかツッコミされたら恥ずかしいじゃないか!
それで、確認してきた。
題して、「冒頭で噂話してるホラー小説あるのか調査」である。
目についたホラー小説の1行目だけ確認する作業。
あわよくば面白そうな小説を見つけて買おうと思い、意気揚々と出かけた。

が、一見簡単そうな調査は混迷を極めた。
ホラー小説コーナーがない。いや、それだけならまだいい。
出版社ごとに並んだ本棚から、タイトルだけでホラー小説を判別することの困難さたるや!しかも帯にもホラーとか書いてないし!
途方に暮れながら本屋で彷徨う私の姿は、さぞかし滑稽だったことだろう。

ホラー小説を探すのが、こんなに大変な作業だと思わなかった。
なぜなら普段読むミステリなら、とりあえず『〇〇の殺人』というタイトルを見つければいいだけだから!親切ぅ〜〜!
え、ホラー好きはどうやって本屋歩いてるの…?
もう、ホラー小説は全て『〇〇の呪い』とかっていうタイトルで統一した方が良いと思う。

実地調査は中断し、すごすご帰宅した。
でもまだ諦めてはいない。そう、現代にはkindleがあるのだから!
Amazonで出てきたホラー小説の試し読みをダウンロードし約20冊を確認してみたことろ、噂話オープニングは1冊だけだった。
ふむ、まあこれくらいなら「あるある」とまではいかないか…。
ということで、今回のNoteに踏み出したのだ。

めでたしめでたし。

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