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嵯峨野小倉山荘色紙和歌異聞~弐の歌~

《からり》 原作:持統天皇
あの娘のオウチは緑区天ヶ丘1丁目
夏色の空、真っ白い洗濯物がまぶしい。
「・・・エエ感じやなぁ。」とおもてると
庭先であの娘が手を止めワテをみてにっこり。
わぁ~かなわんな、嬉しぃな!缶ビール1本飲んだろ!!
(注)あの娘=あのこ。オウチ=家。ワテ=わたし。

定家 「明るい歌やねェ~、からりとしてる。ほんまエエ感じやん」

蓮生 「青春物語やね。夏の青い空、お陽さんが眩しい。真っ白い洗濯物が気持ちのいい風にヒラヒラ舞ってる。芝の緑が濃いがな。お庭の中、きれいなこいさんが立ってはる。そこに若い衆が通りがかるんやな。この若い衆はこいさんに岡惚れしてる。そないなもんやから、こいさんが自分見てニコリと笑うと、そらぁもう、大喜びで天まで舞い上がってもうた」

定家 「おやっさんの天智の帝のお歌とはえらい違いや。あっちは土砂降り、こっちはピーカン」

蓮生 「ところで、缶ビールって何なん?」

定家 「南宋から来はった胡人から聞いたんやけど、ビールってなな、なんでも麦からできたお酒で、泡が立つんやて。それをお腹のとこが膨らんだ蓋のついた素焼きの器にいれたもんらしい」

蓮生 「旨いんか?」

定家 「知らへん。けど、旦那さんの天武の帝も持統はんもハイカラやさかい缶ビールも飲んではったんやないか。お二人で並んで眺めてたんやろな。春すぎて夏来にけらし白妙の 衣ほすてふ天の香具山」

蓮生 「持統はん、天武の帝に惚れてんなぁ。そういや、天武の帝はえらい色男やったらしい。こんな歌があるで。むらさきのにほえる妹を憎くあらば人妻ゆゑに吾恋ひめやも」

定家 「その歌で若き天武の帝は額田大君を射止めたんやな。けど、彼の姫御子は後で天武の帝と別れて、天智の帝の奥方にならはった。そこへ天智の帝のこいさんこと、鸕野讚良姫皇女、後の持統はんの登場や」

蓮生 「ほんなら、この歌に出てくるこいさんて、持統はんのことか……。そいでもって、岡惚れしてる若い衆って天武の帝やったんやね。天武の帝はモテモテや」

定家 「天智の帝、天武の帝、持統はん、額田大君、ややこしいけど不思議にまぁるい四角関係やと思はへん?」

(注)こいさん=末のお嬢さん

                                                                                                 To be continued



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