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魔斬の制作秘話

アルファポリスでおなじみであります連作シリーズ。
2000年当初に「安政奇譚」を創作したもので、妙に、山田浅右衛門のキャラクターと作品設定がしっくりときて、連作になった。しかし、一向に見向き去れずお蔵入りとなったもの。
おかげさまで2023年、第103回オール讀物新人賞の中間発表44名に「安政奇譚」のパートが残ったので、ひょっとしたら今の時代にこそリンクするものかと思い、耐えうる作品をチョイスして公開しているところである。

山田浅右衛門

これは実在の人物である。実際に刑場や伝馬町などで仕置きを行なっている人物だが、魔を払う部分は創作です。アタリマエデスガ。
この「魔を斬る」という設定の原点は、魔を祓うというところを刀に置き換えたもの。刀はなんでもいいのか。必要なアイテムにならないのか。色々と考えて、このスタイルになった。
金を貰って、相応の仕事をする。金がなければ憑き殺されようが知ったことのないドライな部分は、紛れもなく池波文学の仕掛人のような流儀。もしくは初期必殺。情でなんとかする安っぽさだけは、控えるよう徹した。
この線引きが、ハードボイルドの重要な部分。ブレたらホームドラマになってしまうので、救わない、助けないという選択肢もキャラ設定に盛り込んだ。
小説はビジュアルが十人十色であるが、書いているうえでのイメージにしているのは、俳優の滝田栄(2000年当時!)だった。お昼に包丁持っている番組のイメージじゃなく、実際に居合の有段者である側のイメージで描いたものである。このイメージを作ったおかげで、嘘のように筆が進んだのはありがたかった。
2010年までに1期10話を作成し、2期数話を書いたところで中断しているのは、有難い事に、そこに余興する暇もないほど、お仕事に恵まれたおかげさまである。

浅草弾左衛門

これも実在の人物で、差別だ何だというツッコミに怯えなければいけないほどの取り扱いが難しい人物。関東長吏頭という堅苦しい名称で受け流しているが、物語の展開上、どうしても身分に触れる描写から避けられない。
闇公方という畏れ名でも実際呼ばれていたことを逆手に、史実にないスパイスを加えた設定で、この作品の大事な人物にしている。
そもそも、魔斬は弾左衛門の配下の、忌み嫌われる仕事。そういうものは高額である。闇の稼業を統べるからには、香具師などにも睨みの利く大物でなければいけないし、ちょっとやそっとのヤクザも目をそらす程の威厳と威圧が求められる。その反面、表の顔は穏やかであるべきなのだ。
実在の人物ゆえの縛りは、むしろ山田浅右衛門より窮屈だと思っている。

千葉佐那

実在人物準レギュラーになっています。坂本龍馬の自称許嫁気分の設定にしていますが、史実では千葉道場の二度目の転がり込みは物語進行の年よりちょいあと。龍馬は名前だけ登場にしたいので、本編には登場しません。この部分で女子アピールを残し、あとは「千葉の鬼小町」である部分を前面に押し出しています。ひょんなことから魔斬と浅右衛門に深く関わってしまった佐那は、ときにはバディのようにいい助っ人であるポジションにしています。

そのあとのレギュラー人物で、実在しているのは浅右衛門の奥さんと弾左衛門配下の車善七。あとは架空の人物です。助六も、ぬたや佐治助も、いない人。

ああそうか。
ようするに、妖魔退治と必殺のブレンドなんだな。
そう思って頂けたら、結構です。

アルファポリスで第7回キャラ文芸なるものがあり、山田浅右衛門がいいキャラクターであるから、ポチッとエントリーしてみた。
マイペースで皆様に楽しんで頂いていれば、ありがたい。
キャラクターとして、夢酔作品で稀なる個性の山田浅右衛門。漫画原作に誰か使ってくれると嬉しいです。

第1期設定は、次の話でおわりです。山田浅右衛門に、これまで見たことのない最大の危機が、これでもかと、押し寄せる長編です。
第2期は公開するかどうか、皆さんの反応をみて、検討中。