70年代、若者はウエストコーストを目指した
たぶん、戦後の反動なんだろうね。
アメリカ、しかも西海岸に憧れるのが若者の衝動だった。
自由があると、錯覚しやすかったし、実際そうだったのだと思う。
コカ・コーラのCMとかだって、山下達郎とかトランザムとか柳ジョージが歌ったりして、絶対意識していたと思う。
どことなく西海岸に憧れる風潮はどこから来たのだろう。コンプレックスなのは間違いないと思うんだ。それで、身近なところで、福生や横須賀で間に合わせていたのが70年代の青春だったのだろうと拝察する。
音楽もそういう意識はあった。センチメンタルシティ・ロマンスの曲調とか、FMステーションの表紙を飾った鈴木英人のイラストもそんな感じでしたね。当時はAMが主流だったけど、FMはそういう選曲も多かったように記憶する。
たがみよしひさの「軽井沢シンドローム」という作品も、信州テイスト散りばめつつも、滲みでる西海岸のエッセンス。そういう漫画は、当時、たしかに多かったよ。
近所の駄菓子屋へきた名人も、どことなくエセ外人ぽかったし、だいたいアメリカーナな雰囲気を装っていた。
この滲み出るような不思議な空気は、なんとなくアメリカに隷属していた大人から来ていたのかもしれない。反発というものもひっくるめて、みんなが意識していたんだよ。たぶん。
それで、80年代になり、日本人はハワイにお手軽に出かけて、バブルがきた。
西海岸に憧れる空気は、ここいらで終わったような気がします。
いま、日本の若者はどこに向いているのだろう。
異世界だけはやめてもらいたい。