第74回紅白歌合戦!“ボーダレス”を背負った苦闘

明けましておめでとうございます。今年は穏やかに過ごせるといいですね〜。

さて、みなさん大晦日は何を観ましたか?我が家はNHK一家なので、もちろん紅白歌合戦でした。NHK好きとしては、紅白と大河ドラマは普段からろくにNHK見てないような人に毎年毎年過剰に叩かれてるのが納得いかないんですが(笑)、まぁそれは置いといて、今年の紅白の雑感をばぁーっと書き出そうかなと思います。

“ボーダレス”は荷が重かった紅白

紅白は最近スローガンを打ち出すのが流行りなんですが、今年のテーマは「ボーダレス ー超えてつながる大みそかー」。個人的にはちょっとイタいかなーというのが正直な感想。

紅白といえばずーっと物議を呼んできたのが「男女対抗の是非」。今の時代、ボーダレスを叫ぶならここは克服すべきでしたね。個人的な考えとしては、さっさとランダム振り分け制にすればいいのに…。って思っちゃいます。

制作サイドもそこは突かれると痛い所のようで、毎年少しづつ「合戦」要素を薄めてきているように感じられます。現に今年は番組中に視聴者投票を促したり、ゲストに紅組白組を応援させたり、なんて場面がほとんどありませんでした。これは大きな一歩だと思います。まぁ制作側にも視聴者の中にも古い考えの人がいてすぐには切り替えられないのかもしれませんね。それでもなるべく早く新しい紅白を見せてほしいものです。

そんな感じで、かなり背伸びして“ボーダレス”を掲げてしまった今回の紅白はどのようなステージとなったのか、照らし合わせて振り返りたいと思います。

出演者と観客のボーダー

グランドオープニングは客席通路を使ったアーティスト紹介。まずここで出演者と観客のボーダーを取っ払うメッセージ性があったかもしれません。ただ、これはトリが重要視される紅白の特性上仕方ないかもしれませんが、だんだん客席に絡んでいくパフォーマンスが少なくなっていくんですよね。そこがちょっと惜しいなーとは思います。

その中でも異彩を放っていたのが101スタジオ。今回はNHKホールだけでなく101スタジオでも有観客のパフォーマンスを行うという試みがなされていました。101スタジオは特にアーティストと観客の距離が近く、パフォーマンス中にも大きな声援が聞こえてきました。ちょっと仕込みとか録音素材の合成を疑うレベル。ここまでの声援が入ることは今までの紅白でほぼ無かった気がするんです。合いの手ってファンとアーティストが一体となってステージを作る行為なので、これを大音量で電波に乗っけることはまさにアーティストと観客のボーダーを薄めたと思います。

世代のボーダー

トップを飾ったのは新しい学校のリーダーズ。JO1、鈴木雅之と3組まとめて“ボーダレスメドレー”を披露しました。この組み合わせのどの辺がボーダレス?と悩みに悩みましたが、MCで言われていた通り「世代」のボーダーだと思います。「昭和っぽい令和」「ガッチガチの令和」「ガッチガチの昭和」の3曲が並んで、お互いの世代がお互いに根付く音楽の良さを噛み締められるプログラムだと思いました。

テレビ70周年という企画の中ではあったものの、「平成も忘れんなよ!」という気概を感じたのはポケビとブラビですね。コテコテの90年代ノリにコテコテの90年代サウンド。我々平成後期世代の救済があまり無かったのは残念ですが、平成後期を彩った音楽ってどうしても嵐になってしまうので………致し方ないか。という感じ。

バーチャルとリアルのボーダー

一時期に比べて注目度は頭打ちになった感はありますが、バーチャルタレントの視覚的なボーダレス度はやっぱりインパクトがあります。前回もウタが実質的な“VTuber”スタイルで歌いましたが、すとぷりは正真正銘のVTuber。もはや画面を用意しなくとも3DCGモデルをリアルタイムで現実に召喚できるようになり、バーチャルYouTuberブームがもう1年遅かったらこんなオタク寄りな文化にはなってなかったのかも?………なんてことも考えてしまいますね。

国のボーダー

今回特にインパクトが強かったのはK-POP系アイドルの多さでしょう。日本の番組なんだから日本のアーティストもっと出してよ。ジャニーズがいなくなったから埋めただけでしょ。そんな声もネット上にはチラホラ。でも、あのグループたちの立ち位置を全部ちゃんと知ってる人って少ないと思うんですよね。

JO1のメンバーが日本人だと思ってない人も少なからずいるだろうし、BE:FIRSTに至ってはAVEXが立ち上げた純日本製グループだけど、韓国アイドルだと思った人も多かったはず。「K-POP」という文化を曲とアイドルの雰囲気で定義づけて、それがいつしか逆転して、そういうアーティストを「韓国人」のステレオタイプとして当てはめてしまっている。日韓で音楽シーンを切り分けるのはもうナンセンスだぜ、と突きつけられた気がしました。そういう意味ではMISAMOがTWICEではなくMISAMOとして出場したことにも意義があったと思います。

また、「津軽海峡・冬景色」とウクライナの民族楽器のコラボは、ギリギリのバランスで調整したなと思いました。紛争とか災害で大変な海外のことを全く取り上げなかったら無視するなと言われ、取り上げすぎると薄っぺらくなってしまう。非常に繊細なバランス感覚で演出を考えなければいけないと思うんですよね。北海道=北の大地へ帰る人々を描いた「津軽海峡・冬景色」と重ねたことにも静かな寄り添いがみられるように感じます。

紅白のボーダー

紅白歌合戦において最も注目されてきたのはやっぱり紅白=男女のボーダー。男女対抗というスタイルが行き詰まりを見せてから既に何年も経っていますが、いまだに崩れてはいません。ただ、面白かったのはマンウィズとmiletですね。同じ『鬼滅の刃』の主題歌を2曲、どちらがメインを張るかによって紅白両方の立場から1曲ずつ披露するのは斬新でした。

ただ、やっぱりボーダレスを前面に押し出しながら例年通り男女のボーダーをバッチリ引いてしまっていたのはいただけないところ。女王蜂を呼べなかったところに、今回の限界を見た気がします。

それはそれとして

なんやかんや言ってきましたが、結構楽しいセトリでした。「ジャニーズがいない」ことで会場の雰囲気が異様なものになってしまうか懸念していましたが、ジャニーズファン以外では特段大きな盛り下がりは無かったですね。どちらが良い悪いとかではなく、今回はよりグローバルな空気感の大会になったと思います。

ちなみに、個人的にお気に入りのステージベストテンはJO1、SEVENTEEN、ミセス、10-FEET、椎名林檎、ポケビ&ブラビ、エレカシ、あいみょん、YOASOBI、MISIAでしたね。今年はどんな音楽が世に出て流行るのか、ワクワク。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?