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こんな北朝鮮に注目! テレビはデジタルなんです

2017年12月、朝鮮中央テレビの映像の画質が鮮明になった。画面は16:9の比率になり、HDで受信できるようになったのだ。テレビ局側のシステムのデジタル化と新型テレビの普及など、複数の要因が重なったものだ。 朝鮮中央テレビのそれまでの画面は、4:3の比率だった。ところが、平壌時間12月4日午後3時から放送された画面を見ると、16:9の比率である上、画質もはるかにきれいになった。放送開始前や終了後に流れるカラーバーの画面は、以前は千里馬銅像の絵に「平壌」という文字が書かれていたが、デジタル化後は白頭山の絵に「朝鮮中央テレビ」という文字が書かれている。

以前、北朝鮮ではHD方式で映像を撮影しても、新型テレビの普及の問題で4:3の画面に変えて送信したこともあった。2017年の画面の比率の変化は、北朝鮮内部で新型テレビが普及された結果なのか。この他にも、朝鮮中央テレビのシステム変換や高品質の映像を対外的にアピールするという宣伝の意味もあったかもしれない。北朝鮮大学院大学のイ・ウヨン教授は、「朝鮮中央テレビの送出技術の方式は、デジタルに転換された。北朝鮮は海外への宣伝方法として、YouTubeとか、インスタグラムなどを積極的に活用している。そうした場所に、画像をアップするためには、この比率がより適切だと判断したのではないか」と述べた。

中国中央テレビは2012年、朝鮮中央テレビに対して80万ドル(約9000万円)相当の放送設備を支援した。撮影・伝送機材面でHD対応を進めてきた模様だ。2015年には送信用の回線をHD対応したタイの衛星のものに切り替えた。だが、この回線を通じて送られてくる番組はSDのもので、16対9のHD画面の中に4対3のSD画面が映し出され、画面の左右に黒い帯が入っている状態が続いていた。2017年3月には、SDとHDの映像を交互に送出する試験放送が行われており、試験放送の結果を踏まえて本放送に移行したのだ。

朝鮮中央テレビは、アラスカを除く南北アメリカと西ヨーロッパの全てをカバーする電波を使い、2015年5月11日から衛星テレビ放送を開始した。なぜ当時、北朝鮮がアメリカと西ヨーロッパ向けの放送を開始したのかは不明だが、リアルタイムで視聴できなかったアメリカにとっては、これが北朝鮮からの、何らかのメッセージだったのかもしれない。

宣伝・扇動を重視する北朝鮮はテレビ放送に格別に力を注ぐ。韓国より6年も早い1974年にカラーテレビ放送を始めたほどだ。統治のためのイデオロギー伝播や、指導者の偶像化にテレビが役立つことを十分認識しているからだろう。ソウルで北朝鮮のテレビを視聴する上でいかなる制約もない。北朝鮮が1999年10月、タイのタイコム衛星を通じて朝鮮中央テレビを世界に送出すると、韓国の金大中(キム・デジュン)政権は受信を認めた。

中央日報によると、金正恩(キム・ジョンウン)体制以降、北朝鮮当局は労働新聞を徹底的に管理しているという。金正恩出席行事を扱ういわゆる「1号記事」は無条件に1面トップを飾り、2、3面にわたり多くの写真とともに掲載される。写真1枚ごとに指導者としてのイメージを浮き彫りにするための緻密な戦略が込められているのが感じられる。印刷前に金正恩に報告され、チェックを受けるという。

金正恩関連記事は枠で囲まれ、多くの文章は「敬愛なる金正恩同志」で始まる。署名記事ではなく「本社政治報道班」が書いた記事になっているのも特徴だ。訪朝取材で会った労働新聞の記者は「あまりにも偉大な方をたたえる記事であるため、個人では作成できず、組織でする」と語る。そのため新聞をむやみに折り曲げることや、敷いて座ることは想像できないというのだ。1997年9月、咸鏡南道・琴湖(クモ)地区では、金正日(キム・ジョンイル)総書記の写真が掲載された労働新聞がごみ箱で発見されたため、発電所工事がしばらく中断するというハプニングがあった。

労働新聞には誤字脱字がないことで有名だ。首領や指導者の名前を間違えるのは死を意味するため、神経を張り巡らして作業は行われる。1995年7月の金日成(キム・イルソン)逝去1周忌追悼報道の際、ラジオの朝鮮中央放送の女性アナウンサーは、「金正日(キム・ジョンイル)逝去」と誤って読む失敗を犯した。その後、二度とこのアナウンサーの声を聞くことはなかった。平壌のコンピューターのハングル入力プログラムが「金正日」という文字で登録し、ショートカットキー(ctrl+J)で、一度に入力するようになったのも、こうしたミスを防ぐためではないか。

以前、労働新聞は半月ほど過ぎてからしかソウルで見ることはできなかった。当局の承認を受けた国内専門業者が香港などで購入し、国内北朝鮮研究機関や報道機関に供給していた。金正恩の登場とともに労働新聞は中国にサーバーを置いたホームページを通じてPDF形態で紙面を見れるサービスを始めた。年中無休の労働新聞のファイルを午前9時ごろソウルでも当日に読める状況になったのだ。最近は労働新聞にスポーツ・国際ニュースが増え、テレビでは新世代アナウンサーへの世代交代も進んでいる。

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