小説 フィリピン“日本兵探し” (26)
暗い空間の中に、OAまでの時間を告げる時計が白く浮かび上がっていた。進む秒針。その場にいるスタッフの視線は、その正面の白い明かりに集まっていた。
「本番1分前です。各所よろしくお願いします」、テレビ関東のニューススタジオも、映像を送出する副調整室も、いつも以上の緊張感が漂っていた。もちろんトップニュースはフィリピンの無人島に、旧日本兵が54年前に戦争が終わったことを知らずに、きょうまで洞窟にとどまっていたというニュースだ。番組はお天気コーナーを除いて、1時間、ほぼ1本のニュー