タカシ

元民放ソウル支局長 家などで一人では飲まないという断酒をしています。誘われた飲み会には…

タカシ

元民放ソウル支局長 家などで一人では飲まないという断酒をしています。誘われた飲み会にはしっかり参加。爆弾酒も、緑のビンのソジュも、マッコリも、ポップンジャも好きです。こんな断酒ありでしょうか?

マガジン

  • 小説 フィリピン“日本兵探し”

    フィリピンに日本兵が生存しているという情報を追った、テレビ記者や戦没者遺族の一行の冒険ストーリー。

  • こんな北朝鮮に注目!

    北朝鮮の豆知識メモです。

最近の記事

小説 フィリピン“日本兵探し” (26)

暗い空間の中に、OAまでの時間を告げる時計が白く浮かび上がっていた。進む秒針。その場にいるスタッフの視線は、その正面の白い明かりに集まっていた。 「本番1分前です。各所よろしくお願いします」、テレビ関東のニューススタジオも、映像を送出する副調整室も、いつも以上の緊張感が漂っていた。もちろんトップニュースはフィリピンの無人島に、旧日本兵が54年前に戦争が終わったことを知らずに、きょうまで洞窟にとどまっていたというニュースだ。番組はお天気コーナーを除いて、1時間、ほぼ1本のニュー

    • こんな北朝鮮に注目! エッチで危険な浴場の秘密

      咸鏡北(ハムキョンプク)道・清津(チョンジン)。新興資本家である金主(トンジュ)が運営する個人浴場は、客のニーズに合わせたサービスを提供することで、住民の人気を得ている。そのうちの一つが、人民武力部傘下のガンソン貿易会社に所属している「清津商店」である。ここには金主が運営する個人浴場および飲料などの売店などが入っているが、国営浴場に比べて、お湯もよく出るほか、サウナの設備も備えていて、利用客が多いという。 一方、咸鏡北道の当局が運営する大型の国営浴場「水南・恩徳園(スナム・

      • 小説 フィリピン“日本兵探し” (25)

        アキラが洞窟に戻ると、タカシと宮田が言い争いをしていた。宮田の携帯電話がつながらない状態で、大使館や本省への連絡のため、衛星携帯電話をタカシに貸してほしいというのだが、タカシは、1時間後、夕方4時のテレビのOAが終わるまで貸せないと断っていたのだった。 「タカシさん、旧日本兵発見の知らせを大使館と政府に入れて、谷口四郎少尉の帰国準備に入りたいんです。持っている衛星携帯電話を貸してくださいよ!」と宮田。 「宮田さんは、他人の仕事を何だと思っているんですか?それなりに命を張ってこ

        • 小説 フィリピン“日本兵探し” (24)

          ミンダナオ島ダバオの日本式カラオケ店に、拉致されているはずのハルミがいた。テーブルで向かい合い、この店の主人、ケイコと今後の動きを確認し、同行したNPAの兵士に指示を出していた。 「実行部隊を空路でマニラに送るよう、本隊に伝えて」 ハルミは、マサがレイテ島で行う遺骨収集や現地の人々への奉仕活動、日本人戦没者の慰霊碑の維持・管理などを行っていたが、それは表の顔で、裏の顔はフィリピン政府に抵抗するゲリラのスポンサーだった。ハルミはケイコを通じて、ミンダナオ島の共産系のNPAと

        小説 フィリピン“日本兵探し” (26)

        マガジン

        • 小説 フィリピン“日本兵探し”
          26本
        • こんな北朝鮮に注目!
          19本

        記事

          こんな北朝鮮に注目! 強い女子サッカーの秘密

          2017年12月15日、女子サッカーの東アジアE-1選手権の最終戦で、北朝鮮代表が日本代表に2-0で完封勝利し、大会3連覇を達成した。北朝鮮の女子サッカー代表がなでしこジャパンに完勝したのだ。試合は終始、北朝鮮ペースで進んだ。後半20分にFWキム・ユンミの大会4得点目となるゴールで先制すると、同37分にもMFリ・ヒャンシムが追加点を決めた。大会では日本戦だけでなく、中国と韓国を相手にしても、パワー、スピード、スタミナ、フィジカルなど総合的な力は北朝鮮が一枚上手だった。北朝鮮代

          こんな北朝鮮に注目! 強い女子サッカーの秘密

          こんな北朝鮮に注目! 金政権と資本主義の共存!?

          チャンマダンで富を蓄えた北朝鮮の新興資本家は「金主(トンジュ)」と呼ばれる。その背後には、お金と商品の流通を操る華僑商人がいる。北朝鮮経済の実状を金正恩氏よりも、よく知っているのが華僑商人といわれている。華僑商人は中国から原料を持ち込んで北朝鮮の工場で自分たちが必要な物を生産するケースもある。 金主の種類をいくつかにまとめた。 1.国営レストランの名義を借りて運営する金主 2.交通手段が劣悪な北朝鮮で、物流や人を輸送するバスやトラックであるサービス車業をする金主 3.

          こんな北朝鮮に注目! 金政権と資本主義の共存!?

          小説 フィリピン“日本兵探し” (23)

          フィリピンの首都マニラの北西に米空軍の使用が見込まれる施設がある。かつて在比米軍基地だったその場所は、1991年に米軍からフィリピン政府に返還され、フィリピン空軍が管理していた。 フィリピンでは、領有を主張する南沙諸島の環礁が1995 年に中国に占領される事件が起きたのを契機に、米軍の再配備を求める動きが強まっている。国家主権を重視する上院は、「外国の軍事基地、軍隊、施設はフィリピン国内では認められない」としながらも、米国との間では相互防衛条約および軍事援助条約のほか、1

          小説 フィリピン“日本兵探し” (23)

          小説 フィリピン“日本兵探し” (22)

          ミンダナオ島の空港毒ガステロ事件について、タカシは、欧米が日本やフィリピン以外の第三国の関与を推察していて、谷口少尉が実在していようがしてしまいが、NPAとその第三国の関係者が、フィリピン政府軍による「制圧」の対象になるだろうという仮説を述べた。第三国の関係者とは、当然、北朝鮮の工作員、マリアを指していた。 「逆もあるのではないか。お前は実在していようがしていまいがと言ったが、それは生きていようが死んでいようがと言い換えることもできるだろう。死せるタニグチによる蜂起。作戦

          小説 フィリピン“日本兵探し” (22)

          こんな北朝鮮に注目! ドルが一番

          金正恩氏は、核やミサイルの科学者に特別に優遇した待遇を施している。賛辞だけでなく、彼らのための科学者通りを造成し、広い間取りの高層マンションや家電製品も贈呈している。そして、そのたびにマンションの空き地に家庭菜園を作って引き渡すよう指示を出しているという。金正恩氏は2015年10月に、衛星科学者住宅地区を訪問した時も、住宅地区に科学者たちのために家庭菜園を造成し、彼らが白菜や大根をはじめ、野菜を栽培しているのを見て喜んでいた。 普通30〜50坪程度の規模である家庭菜園は個人

          こんな北朝鮮に注目! ドルが一番

          小説 フィリピン“日本兵探し” (21)

          宮田から共産ゲリラとの仲介を依頼され、どのように話を進めるのがよいかを考えあぐねていたマサにタカシが声を掛けてきた。 「マサさんと電話で話していた日本人のマリアという女。公安調査庁のルートで聞いてみたら、どうやら北朝鮮の工作員の可能性がありますよ。キム・ソラ、北九州の折尾の朝鮮学校に通っていたそうです。その後、帰国事業で万景峰(マンギョンボン)号に乗って北朝鮮に渡り、消息を絶っていましたが、現在は日本国籍の山本マリアということで、フィリピンに滞在しているようです」 マリアは工

          小説 フィリピン“日本兵探し” (21)

          小説 フィリピン“日本兵探し” (20)

          フィリピンの7月は雨季にあたる。1~2時間ざっと降る感じだ。この日は、ざっと降ってすぐにやむスコールだった。 ミンダナオ島のダバオにある国際空港、フランシスコ・バンゴイ国際空港。政治家、フランシスコ・バンゴイを記念して命名された空港だ。ダバオ国際空港とも呼ばれている。ここで、午後の雨上がりに傘を持つ男の姿は特に目立つものではなかった。空港警備員の足元に置かれていた琥珀色の液体が入ったビニール袋を男は傘の先端で刺し、足早にその場を離れた。 雨がやみ、路面は日に照らされ、その

          小説 フィリピン“日本兵探し” (20)

          小説 フィリピン“日本兵探し” (19)

          マサからの電話を終えた後、受話器を置いた宮田は、東京の本省の援護局事業課長である本郷にすぐ電話を入れた。 「本郷課長、旧日本兵が生きているという情報が、フィリピン・サマール島で流れているようです。日本の慰霊団からの情報です。指示を仰ぎたく」 厚生労働省は、戦没者の遺骨について、発見現場の周辺に遺留品などがあって遺族が推定できる場合は、遺族からの申請に基づいてDNA鑑定を行って、関係が明らかになった場合、遺骨を遺族に返還するという作業を行っている。ただ、過去を掘り起こすこの作業

          小説 フィリピン“日本兵探し” (19)

          こんな北朝鮮に注目! テレビはデジタルなんです

          2017年12月、朝鮮中央テレビの映像の画質が鮮明になった。画面は16:9の比率になり、HDで受信できるようになったのだ。テレビ局側のシステムのデジタル化と新型テレビの普及など、複数の要因が重なったものだ。 朝鮮中央テレビのそれまでの画面は、4:3の比率だった。ところが、平壌時間12月4日午後3時から放送された画面を見ると、16:9の比率である上、画質もはるかにきれいになった。放送開始前や終了後に流れるカラーバーの画面は、以前は千里馬銅像の絵に「平壌」という文字が書かれていた

          こんな北朝鮮に注目! テレビはデジタルなんです

          小説 フィリピン“日本兵探し” (18)

          フィリピン・サマール島のカルバヨグにあるレストラン。そこに、共産ゲリラのジュンは、客であるマリアを招き入れた。 「ここに、その若者はいるのか?」 「アウアウのことですね。すぐに連れてきますよ」 別の男が、奥から小柄な若者を連れてきた。 黄色いヨレヨレのシャツを羽織って、濃いグレーの短パンをはいている。顔には、殴られたような複数の傷があり、左のまぶたは腫れて黒ずんでいた。 最初は、マリアが分からないワライワライ語で、話をしようとしていたが、ジュンにタガログ語で話すよう命じられ覚

          小説 フィリピン“日本兵探し” (18)

          小説 フィリピン“日本兵探し” (17)

          クレアがタカシのところへ走ってきた。見てほしいものがあるらしい。クレアはサミエルとクワトロがいるサトウキビ畑にタカシを連れていった。 「見せたいものって?」 「これよ。アナタはどう思う?」 視線の先に鍬を持ったクワトロがいた。 「ひどいな。水牛の下に1人、2人…7人くらいいる」 作業を進めるサマール島出身のクワトロが現地語のワライワライ語で言った。サトウキビ畑で金属探知機に反応した場所を数十センチ掘ると、水牛の骨の下から何体もの兵士の遺骨が現れた。おそらく54年前にこの世

          小説 フィリピン“日本兵探し” (17)

          小説 フィリピン“日本兵探し” (16)

          今回の日本兵探しの前々年、1997年4月に化学兵器禁止条約が発効され、化学兵器については、使用のみならず、製造・保有も禁じられた。ただ北朝鮮はこれに調印していない。 VXガス。マリアの狙いは、共産ゲリラがこの化学兵器を保有しているとの情報が国内外に拡散されれば、資金不足で弱体化する彼らの組織を強化させ、フィリピン政府に対しての交渉力を引き上げられるというものだった。加えて、日本政府が放っておかないであろう日本兵の身柄も確保できれば、その「安全」も交渉材料だ。出てきた山下財

          小説 フィリピン“日本兵探し” (16)