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許しを請う男 #一夜記録

集合したのは22時。1人で家飲みしていた私は、酔った勢いで彼とマッチング。私の家から徒歩20分ちょっと、彼の家から5分のJR駅で待ち合わせた。「今からだとお店開いてないよね、うち来る?」…集合時間的に、そうなるしかない。2人でコンビニへ寄り、缶チューハイと適当につまみを買って、彼の家へ向かった。

彼は私の1つ年上。だけど、浪人していたとのことで同学年だった。同じ新卒のはずなのに、彼の部屋は立派なマンションの一室。高そうなブランドのスニーカーと、KAWSのフィギュアがショーケースに飾られていた。広告代理店の営業だという彼。給料格差をこんなところで思い知るとは思わなかった。

2人でソファに横並びで座り、乾杯。「呪術廻戦観ていい?」と、彼は大画面のテレビでアマプラを操作し始めた。正直、ここで結構グロいチョイスするな…と思ったけど、普通に作品は好きだったのでそのまま一緒に観た。

ちょいちょい観つつ、最低限のチャットしかしていなかったので、お互いのことを色々話した。仕事の話、学生時代の話、恋愛の話。彼女はしばらくいない。今は遊びたい。今はまだ若いから、遊ばないと損だよ。…彼は私を説得するかのように、そんな話を繰り返しするのだった。

いつの間にかアニメも終わり、2缶目に。アニメの代わりに、チル系日本語ラップの㎹が流れ始めた。2缶目を持ってくるときに、なぜか上半身裸になって登場した彼。「(急にムード作ってくるな…)」なんて無言で思ったのは内緒だ。2缶目をテーブルに置いて座ると同時に、彼の腕が私の背後に。

「ジムで鍛えてるんだよね」と、あからさまにボディタッチの流れを作られた。そのまま腹筋とか腕とか触らせてもらって、なんとなくそろそろ始まりそうな雰囲気。再度、「若いうちは楽しみたいよね」との念押し。

「サルだからさ、すぐ癒されたくなっちゃうの。ダメかな?いいよね?許して」…そう言って、胸に顔をうずめてくる。そのまましばらくハグしていると、顔を上げて「…許して」と、キス。そのままベッドへ向かった。


これが私の初体験。初めてということもあり、結構緊張していた。だからか、妙に冷めた自分がどこかにいた気がする。「え、呪術廻戦流すの?」「流してるわりには全然観てなくない?」「急に上半身裸で来たな」…とか。私、そこまでガチガチではなかった気がするんだけど。許してって言われるほど、ムード作りが難しい状況に思われていたのかしら。そうだったのなら申し訳ないな。

ちょっと危ない奴だな、と思ったのは、最初ゴム無しで挿入しようとしてきたこと。後に出会った方はみんな自分からつけてくれたのだけれど、どうしてか肝心の初っ端で危ない方に出会ってしまいました。ちゃんと「つけて」って言ったらつけてくれたからいいものの。自己防衛、大事ですね。

初体験が終わった後の感想は、「こんなものか」でした。大好きな彼氏としていたら、違ったのかな。帰路、呆気なさに呆然としながら、深夜で1人誰もいない商店街を歩きました。

…とはいえ、異性として見てもらえたことに、どこかほっとしている自分もいて。「私って、ちゃんと女性として見てもらえるんだな」と。性的に興奮してもらえたことに、安心していました。ただ性的にしか見られていないってわかっていても、それでも誰かに求めてもらえたことが嬉しかった。

その感覚に心地よさを覚えてしまった私は、またマッチングアプリを開いてしまうのでした。


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