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罰則・引き締め・監視強化【学校編】(5)

長男のような子がいたら学校は特に注意して監視するだろうと思う。なるべくしてなっている部分もあって、言い訳のしようもない。

図書室には朝鍵が掛けられるようになって、もう長男は詰んだと思っていた。しかし長男がぽろっと言った一言に面食らってしまった。良く言えば創造力、悪く言えばハッカーのような発想力に、もうやめてくれと懇願した。強調するが悪質性はない。でももうやめておけと言った。

これは10年後には、笑い話になるだろう。でも今はとてもじゃないけど無理なのだ。

私 :あんたこのまま行くとハッカーにでもなってしまうよ?
長男:ハッカーが悪いって事じゃないんだよ。ハッカーにも2種類いるしね。

2種類とはこういうことらしい。

ハッカーは2種類に分かれます。サイバー犯罪への対処など、知識や技術を善良な目的のために利用する人をホワイトハッカー、反対にIT関連の技術を駆使し不正にネットワークへアクセスしたりプログラムを破壊したりする人をブラックハッカーと言います(© Hitachi Solutions, Ltd.サイトより)。

長男の言うことにはいつもどこか一理ある気がする。今回の件と照らし合わせて、私はこんな考えを持つ長男にお説教をして、彼の足を引っ張っているのだろうか、それとも単に手のひらで転がされているのだろか、と考えてしまった。

正気に戻って長男に言った。本が読みたければいくらでも別の方法で読めば良い。誰も読書は禁止していない。本を読みたいという気持ち自体はとても素晴らしいことである。しかし、それを一度約束したことを破ったり、相手が良くは思わない形でやるのはもうやめようと伝えた。もっと良い方法があるのだから、と。

担任の先生は、今回の件に限らず、本当に長男のことを思って、将来も苦労するであろう長男が少しでも困らないように必要な所作を身につけられるよう考えて下さっていることも多い。そのことも長男には話して聞かせた。

その上で、今回どうしても述べておきたいことがある。それは司書さんへの感謝の気持ちである。長男の本を読みたい気持ちを受け止め、ルールは少々逸脱するかもしれないが、柔軟なご対応を検討くださったことに、私自身は感謝してもしきれない気持ちでいる。こんな風に受け入れてくれる人に出会えて、長男は幸せだと思う。

学校ではなかなか満たされない知的好奇心

時と共に、長男は学校の楽しさは「3」で、苦しさは「6」と言うようになった。担任の先生や友達を持ってしても、学校の魅力を見いだすことが難しくなってきているようなのだ。

長男は、学校が楽しくないと感じることが増えたのは、一つはコロナのせいもあるかもしれないと言う。以前のように外遊びができないのだと言う。密を避けるため、外遊びができる曜日が学年によって決められたのだそうだ。何かと制限が増えている状況に、理解はするが気持ちがついていかないようだ。

長男にとって学校は勉強という意味ではもともとあまり機能していなかったが、息抜きの場としてはある程度機能していたと思われる。それが今、両方難しくなってきている。

じっくり話を聞けば、鬱屈とした表情で、「もうずっと学校が暇で退屈な状態が続いてる。学年が変わっても、ここだけは変わらないんだよ。学校の本を読むったって、すぐ読めるし、それにもう全部読んだ。本当は学校に行くなら、時間を自由に使いたい。実験したり、ずっと図書館にいたり。自由に使える時間が欲しい。」と言った。

学校には全く行きたくないということでもないらしい。担任の先生が長男が授業で発言したくなるように工夫してくれていることは嬉しいようだし、生徒が主体的に活動できる授業やイベントがある日は引き続き楽しみなようだ。

知的好奇心の面だけで言えば、長男は動物園の檻の中にいる動物と同じ気持ちなのかもしれないと思う。大好きな飼育員さんと離れたいわけでも無ければ、仲間もそこにいて一緒にいたいけれど、やはり野生に戻りたいという本能は抑えきれないということが起きているのではないかと思う。

学校を檻に例えてしまっては申し訳なく、一般的にそうだと言いたいわけでもない。ただ、長男のように学びに対して極めて強い欲求を持っていたり、ルールに囚われない性格の場合、今の学校は窮屈に感じられるのだと思う。

飼育する側からしたら、他の動物よりも手をかけてやっていて、より頻繁に檻からだしてやって(授業中の読書の許可など)、退屈しない工夫も色々やっているのだから、最後はちゃんと納得して檻に戻ってきてねと思うと思うのだ。でも、一度檻から出された動物が、自ら進んで檻に戻りたいと考えることはないのではないかと思う。

長男のために動こう

長男はよく叱られはするが、人として許されないほどの極悪なことをするわけではない。何かと周りが困るとか、ルールなんだから守ってよと言いたくなること、長男のためを思って言っているのに改善が見られないと感じて、周囲が業を煮やすことが多いのだと思う。

夫には、私は甘すぎる、すぐに長男に丸め込まれると言われることもある。お母さんなら騙せると思われてるかもよ、図書室が閉められたってゲームしていれば本人は平気と思っていたかもしれないしと言われて、私も長男に厳しくしたかと思ったら、相談役になったりして、ダブルバインド状態かもしれないと思っている。

それでも今回の図書室の利用制限をきっかけに、今の学校と家を行き来するだけの生活では長男が知的に満たされることはないだろうと思った。その場所は学校の外で見つけなくてはいけない。

思えば長男がギフテッドと分かってようやく1年が過ぎたという所だ。これまで学校との関係をどうしようかという所に親も注力しすぎていて、外の世界を広げてやることは後回しになっていた。

私が夫に、「学校を時には休んででも、何か良いイベントがあれば連れて行きたいし、専門家や本物にもっと触れる機会を探してやりたい」と言うと、夫は「これ以上手をかけるのかぁ。疲れたよー。」と言いながらも、大学の公開講座をいくつか見つけてきてくれた。長男の好きそうな理系のプログラムもあって、長男も行くと言ったので、早速申し込んだ。

夫 :探せば意外とこういうのが近くにもあるんだね。
私 :ドラ(長男)の肩持ちすぎって言うけど、これ私が探そうって言ったから見つけられたよね。
夫 :見つけたのはこっちだけどね。
私 :それは感謝してる。

親の方も、長男をある意味では見習って、この手がダメならあの手でと、探しに行くことが必要かもしれないと思った。探している人には見つかると信じて。