見出し画像

生徒のための学校?学校のための生徒?

長男の中学受験本番が始まると、ある違和感を感じるようになった。学校とは生徒のためにあるはずなのに、学校のために生徒があるように感じられることが出てきたのだ。

そのように感じるケースというのは、学校が生徒以上に進学実績に力を入れているように感じられた場合、または管理型の学校で生徒が学校の定めに従わなければ厳しい罰則があるような場合だった。学校側に求める生徒像があり、それに沿うことを求める場合と言っても良いかも知れない。

中学入学と同時に大学を意識

当時は難易度の指標くらいにしか考えていなかったのだが、中学校の受験でありながら、受験コース名に「T大コース」と大学名の入ったコースもあったりと、今思えば「目指せT大」というのは一般的に多いのだろうと思う。学校もそれを目指すし、家庭も望むし、世の中が望むならなおさらそこに向かって、という感じだろうか。

また別の学校では、子供たちが試験を受けている間、待機している親向けに学校説明会を開き、以下のようなお話をされていた。T大をはじめ難関大学を見据えて必要なこととして、である。

  • 寮生は毎日19:〇〇ー23:00まで義務学習

  • 毎朝小テスト

  • 娯楽は卓球台1つとホールのテレビ1台

  • その代わり予備校に通う子がいない

  • 塾のお世話なしで自立学習できるかが大事

  • 勉強が好きな子を伸ばすために惜しみなく機会を提供する

  • 親に勉強させられてきた子は寮に入って羽を伸ばして勉強しなくなる

以上は一部でしかないが、学校としてT大を目指す意識が非常に強い印象を受けた。

我が家はここまで聞いた時点で、目の前を大きな深海魚(*)が泳いだ。最後の4つは問題ないとして、最初の3つがある限り、いずれ長男は脱走を試み、そして制裁を食らうだろう。親も呼び出しがひっきりなしとならば、しんどくて持たない。

深海魚とは、中学受験で合格を勝ち取って中学に入学したものの、学校の勉強についていけず成績が低迷して浮上できない状態のことを表します。

深海魚問題は、志望校と子どもの実力のミスマッチが原因と思われがちです。しかし、合格のために過剰に勉強をさせるような「悪い伴走」をした親への反抗心から、深海魚につながるケースも少なくないと西村先生はいいます。

「中学受験のために、親から勉強を強要されるばかりで自発的に取り組まなかった子は、上位の成績で入学しても、あえて自ら深海魚になることがあります

中学受験で合格を勝ち取ったのに入学後に「深海魚」に プロ家庭教師がみた親の“悪い伴走”の弊害


ただ特筆すべきこととして、1つだけなるほどと思ったこともあった。学校がT大を意識するようになった背景の一つに、生徒側からの要望があったそうなのだ。

生徒がT大を目指したいから、そのための環境を整えてほしいと学校に要望を出したそうで、それを受けて学校が動いたという話があった。それを聞くと、また印象も変わったように思う。

しかしいずれにせよ、中学入学と同時に大学受験を非常に強く意識した環境になることは間違いなさそうで、我が家には少々合わないと思ったのだった。

誰のための学校か

進学実績を重視していたり、中学入学と同時に大学入学を意識したカリキュラムを組んでいること自体、何ら問題なく、これが生徒のため、ということはあると思う。むしろ家庭の意向ともマッチしてウィンウィンということもあるだろう。

我が家はしかし、この辺には敏感に反応した。世の中的には学校がしっかり面倒を見てくれ、塾のような役割も果たし、大学入学まで導いてくれるというのは、理想なのかもしれないし、親としても安心感はあるに違いない。今年の志望者の傾向を見ても、親の意向なのか子供の意向なのかはわからないが、そういった学校の方が人気なのかもしれないと思うこともあった。

一方で学校にも思惑はあるだろう。これから知名度や偏差値を上げていきたい段階にある場合は特に。

疑問もあった中、夫にそれとなく話してみたことがあった。「生徒のための学校なのか、学校のための生徒なのか分らなくなる時があるんだけど。」と。

すると夫も同じ事を思ったことがあったようで、夫は入試特待生制度がある学校を1つの例として挙げていた。

特待を取る生徒は恐らく他に第一志望校があって、そっちに合格すればそっちに行ってしまう可能性が高い。これを特待を出している学校側もわかっている。しかしそっちでうっかり不合格になることもある。その際には、その実力を持って「ぜひうちに来て下さい」というのが特待に込められたメッセージであると。

特待を受ける側も、一般的には特別待遇なのだから誇るべきであり、出来るなら狙いたいものであるはずだ。我が家も最初は授業料が免除であることを素直に喜んだ。しかし、その学校が特待生に求める生徒像を見て「割高」であると感じるに至った。

長男自身、「もしあそこ行ってたら、俺、地雷踏み抜くところだったね。」と自覚していたが、校則に加えて、特待生にはさらにロールモデルとなるべく条件が追加されている。特待生としての責任が重すぎて、もし入学するなら特待は辞退でという話を半分冗談だが家庭内ではしたほどだ。

特待制度は学校にとってもメリットがなければならない。学校と生徒の双方にメリットとなる場合は良いが、特待と引き換えに学校から求められるものが増えるようであれば(そして厳しい目で見られる確率が上がるようであれば)、そしてお子さんのタイプによっては、地雷かもしれないと我が家は少なくとも思ったのだった。

逆に、それが地雷にならないお子さんの場合は気にすることはないだろうと思う。